これだけ読めばOK! 1Q決算総ざらい「国内市場の限界」と「希望の3業種」
3月期決算企業の第1四半期(4~6月)決算発表が出そろった。経常利益が前年同期を上回った企業が数多く見られるなど堅調な決算となる中、経営コンサルタントの小宮一慶さんは、「日経平均株価が3万円台に突入することは十分に考えられる」と話す。今後の株価を見通す上で、抑えておくべきポイントとは――。
コロナ禍のダメージから回復しつつある鉄道、外食…伸び悩む自動車、半導体
第1四半期決算を見ると、全体的には業績を伸ばした企業が目立ちますね。新型コロナウイルスの影響による落ち込みから、ある程度回復してきた形です。業種ごとにざっと状況を見てみましょう。
回復が一番分かりやすいのは、電鉄会社や航空会社といった交通関係です。JR東海では売上げが前年同期比71%増となり、前年同期には赤字だった営業利益が黒字転換しました。ANAホールディングス(HD)は最終損益10億円と実に10四半期ぶりの黒字に。日本航空(JAL)も売上げが前年同期比で102%増加し、赤字幅が縮小しました。このままいけば第2四半期、第3四半期と、さらに改善していくとみられます。
外食産業も上がり調子ですね。ロイヤルホストなどを運営するロイヤルホールディングス(HD)は12月決算ですから半期の数字ですが、売上げは前年同期比22.5%増。営業利益の赤字幅も53億円弱から7億円ほどにまで縮小しました。水面下でもがいていた企業がようやく浮かび上がりつつあります。
百貨店も厳しいと言われてきましたよね。特に地方においては、いまや地域経済が百貨店を支えきれなくなっているのは事実です。今後も撤退の波は止まらないでしょう。都心では回復しつつありますが、長期的には百貨店ビジネスだけでは厳しい。そこでいま、百貨店もどんどん新しいビジネスを始めています。一つは富裕層向けのビジネスの強化。たとえば高島屋では、金融商品の販売サービスを拡大しています。
もう一つが不動産事業への進出です。私は大阪を訪れるという人たちによく勧めるんです。「梅田駅前の歩道橋を歩いて、空を見上げてみてください」と。見上げてみると、阪急百貨店も、阪神百貨店も、高層のオフィスビルがそびえ立っているわけですよ。百貨店は一等地にありますから、店舗だけでなくオフィスビルとしても活用しているのです。一等地にある百貨店では、それをオフィスビルや商業施設に変える動きも進んでいます。例えば、松坂屋銀座店はGINZA SIXに変わりましたが、商業施設のほかに多数のオフィスを入居させています。ただ、百貨店はなくなりました。
厳しいのが世界的な原材料高のあおりを受けた自動車関連の企業です。前年同期比で見ると、トヨタ自動車は売り上げこそ7%増ですが、営業利益は42%減。デンソーも売り上げは4%増の一方、営業利益は40%減です。それでもトヨタで5700億円、デンソーで600億円ほどの営業利益を出していますから、自動車業界の収益力は、やはり凄い。凄いのですが、業界として、伸び悩んでいると言えるでしょう。
今後しばらくは、自動車の分野では、ティア1(一次請け)の部品メーカーにはまだ余力がありますが、ティア2(二次請け)、ティア3(三次請け)の部品メーカーは厳しい時期を過ごすことになるでしょう。
半導体も厳しい状況です。製造装置最大手の東京エレクトロンは売上げこそ前年同期比5%と微増でしたが、営業利益は17%減。上海ロックダウンの物流混乱が影響したようです。
「政治が経済に影響を及ぼす時代」に突入したことを認識すべき
今回の四半期決算を見て、特に好調なのは商社や海運ですね。この流れは昨年からきていますが、今期の大手総合商社7社の決算を見ると過去最高益が相次いでいます。三菱商事で言えば、第1四半期の経常利益は前年同期比で3倍増になっています。