日本経済「終わりの始まり」 インフレ爆進、給料上がらず、国債格下げ…個人レベルでできる備え
世界中で高インフレが続く中、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は8月のジャクソンホール会議にてインフレ抑制に向けた姿勢を強調し、ヨーロッパの中央銀行も同様の方針を示した。一方で、経営コンサルタントの小宮一慶さんは「世界中の中央銀行が利上げに踏み切っても日本にはできない。非常に厳しい状況にある」と話す。世界と日本のインフレの現状と見通しとは――。
景気対策からインフレ抑制に舵を切った世界の中央銀行
世界の大きな流れは変化しています。1989年のベルリンの壁崩壊、91年のソビエト連邦崩壊以後、自由主義陣営が世界を席巻し、一気に経済のグローバル化が進展しました。ですがその後、一時はG8の一員として自由主義陣営に組み入れられたかに見えたロシアは、クリミア併合によって主要国首脳会議から排除されました。中国についても結局、西側陣営とは一線を引いた歩みを続けています。
そして近年ではロシアと中国が結びつきを深め、国際経済での存在感を高めています。ロシアのウクライナ侵攻後も、中国が大量に原油を輸入してくれるので、「ドルやユーロを稼がなくてもやっていける」と確信していることが、ロシアを後押ししていると思われます。
ロシアのウクライナ侵攻の結果、世界中のエネルギー価格が高騰しました。脱コロナの需要増に加え、世界秩序が激変したために、今のようなインフレが引き起こされたというわけです。そんな中、8月にアメリカ・ワイオミング州で行われたジャクソンホール会議で、パウエル議長はインフレの抑制を「やり遂げるまでやり続けなければならない」と発言しました。FRBとしては景気が悪化したとしても利上げを継続し、これ以上のインフレを阻止する姿勢を明確に示した形です。
アメリカのCPI(消費者物価指数)の直近の数字を見てみると、5月が8.6%、6月が9.1%、7月が8.5%とピークを打ったとみることもできます。このことから市場ではFRBが利上げペースを緩めるのではないかとの予測もありましたが、パウエル議長は「インフレ低下を確信する内容にはほど遠い」と述べ、利下げ期待をけん制しました。
そもそも、本来のFRBのインフレ率目標は2%ですから、現状とは大きく乖離しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)は6、7月と0.75%ずつ政策金利を上げましたが、今回の発言から、9月も同程度の利上げを継続し、インフレ抑制を目指すという意見が現状では多くなっています。