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「日本不動産はバーゲンセール」の終焉。18.3兆円の補正予算、30年ぶりの金利水準、国による三方規制…“2026年市場激変”の全貌

 「東京都区部では、もはや一般層にマンションは手が届かない」――。異常なまでの高騰を続けてきた不動産マーケットが、今、大きな転換点を迎えている。地価と建設費の上昇、そして円安を背景とした外資による「日本買い」。誰もが「いつまで上がるのか」と固唾を呑んで見守る中、市場にはこれまでのルールを塗り替える新たな予兆が現れ始めている。果たして、2026年の不動産マーケットは、さらなる高みを目指すのか、それともついに調整局面へと舵を切るのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏が、混沌とする市場の行方を読み解く。

   みんかぶプレミアム連載「牧野知弘 不動産を斬る!」

目次

2026年不動産市場の岐路。高騰する都心マンションと外資による「日本買い」の行方

 昨年の不動産マーケットは地価および建設費の上昇を背景に都心を中心とした新築マンションの高騰が止まらず、この影響が中古マンションマーケットにも波及しました。もはや東京都区部では新築はおろか中古マンションすら手に入らない状況であるといわれました。さらに外資系資本による日本企業所有不動産の買収や外国人によるマンション爆買いなどが話題となる年でした。

 さて、今年の不動産マーケットはどんな展開になるのでしょうか。3つの観点から考えてみましょう。

18.3兆円の補正予算が誘発する「資産インフレ」の再来

1. インフレの進展

 長期のデフレに苦しめられてきた日本ですが、コロナ禍以降の激しい円安は物価高騰を招き、今や先進7か国で最もインフレ率の高い国となっています。生活物価は食料品を中心として値上がりが続いていて、一部の大企業社員を除いて賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金が目減りする状況が続いています。

 進行するインフレに備えて、現金資産を持たずに株式や債券に振り向ける、金や不動産などの実物資産の保有を増やす動きが強まっています。

 さらに高市政権はアベノミクスの承継を唱え、総額18.3兆円もの補正予算を決議しました。マーケットへのマネーの戦略分野への集中的な供給による日本経済活性化を狙ったものです。この額はコロナ関連対策予算の10.5兆円をはるかに上回る規模です。

 日本の不動産価格の高騰に拍車がかかったのが、実はこのコロナ関連予算でした。コロナ対策として緊急に供給されたマネーでしたがその一部が株式や不動産投資に向かったことはよく知られた話です。

 今回の補正予算は国民に広くばらまかれるものではなく、成長が期待される分野に集中的に供給されるものなのですが、不動産マーケットにも一定の恩恵があることが予測されます。

 ただ、新築マンション価格は建設費高騰でインフレを先取り、東京カンテイの調べでは、東京都民の平均年収(592万円)で都内新築マンション(ファミリータイプ70㎡台、1億526万円)を購入するには年収の17.78倍も必要であるとされます。またパワーカップルと呼ばれる夫婦共働きで世帯年収が1500万円から2000万円程度の世帯でさえも、湾岸エリアの中古タワマンが1億円後半から2億円台になるとさすがに手が出ない水準になっているのが現状です。

 相場が継続するにはマンションの買い手は更なるインフレ進行を確信する投資家や富裕層の動向次第ということになります。

30年ぶりの金利水準。住宅ローン「月3.6万円増」が家計を直撃

2.金利と為替

 日銀は2025年の1月と12月、2度にわたって政策金利の引き上げを行いました。この結果、政策金利は0.75%の水準になりました。実に30年ぶりの水準です。2024年7月の利上げ以降、変動金利型住宅ローンを採用している人にとっては、度重なるローン金利の引き上げがインフレによる生活物価の上昇やマンション管理費、修繕積立金の引上げに加えて生活を脅かすものとなっているのではないでしょうか。

 今年1月の政策金利決定会合では見送られたものの、日銀は年内において更なる利上げの意向を表明しています。日銀はインフレにもデフレにもならない金利である中立金利の水準を1%から2.5%程度のレンジの中にあるとしています。今年もこの水準に近づけるべく利上げが行われるとすれば、利上げは複数回に及び、上げ幅で0.5%から1%程度の利上げが行われる公算が強いということになります。

 仮に今年、さらに0.75%の利上げが行われると、変動金利型住宅ローンの利用者にとっては、24年7月以来、計1.5%も金利が上がることになります。5000万円のローン(35年、元利均等返済)を当初0.8%で調達している場合、1.5%の上昇で2.3%になり、月額返済は13万6530円から17万3432円と3万6902円もの大幅な負担増となってしまいます。もちろん返済額の調整措置はあるものの返済総額は大幅に増加し、ローン返済に窮する人が出てきても不思議ではありません。これは由々しい問題ですよね。

 金利は住宅ローンの問題と考える人が多いのですが、不動産投資マーケットに対して大きな影響をもたらします。10年物の日本国債利回りは1月23日現在で2.239%。1年前に比べてちょうど1%程度の上昇です。不動産投資における期待利回りは、リスクがフリーとされる国債利回り(リスクフリーレート)に、投資する不動産のリスク分(リスクプレミアム)を乗せて計算されます。リスクフリーレートである国債が1%上がると上昇分を上乗せした利回りを得られないと、リスクプレミアム分が縮小して投資リスクが増大することになります。加えて投資を行う場合の資金調達コストがローン金利の上昇を受けて高くなることからリスクプレミアムについても余裕をみる必要が出てきます。したがって期待投資利回りを1%以上引き上げて投資することが必要になるのです。

 例えばこれまで期待利回り3.0%で都心不動産(リスクフリーレート1%+リスクプレミアム2%)に投資していた投資家も国債利回りの上昇分を見越した4.0%に目線を上げざるを得ません。期待賃料がインフレによって30%以上、上がれば相場は保たれることになりますが、そうしたエリアは少ないし、賃借人が豊かになって賃料上昇を受忍できないかぎり投資は厳しい結果を招くことになってしまいます。このことから今年の不動産価格が調整局面に入るとの予測が成り立つのです。

 為替については、日銀による利上げと米国FRBの3度に及ぶ利下げで日米の金利差は縮小しています。結果として円高に振れることが期待されたにもかかわらず、ドル円レートは155円から158円と円安水準を保ったままになっています。日銀などの介入を期待する向きもありますが、高市政権の積極財政による国債大量発行を見通した日本の財政に対する不信の表れともいえます。このことは相対的に安価な日本不動産が相変わらずのバーゲンセール状態にあることとなり、利上げで動きが制約される日本勢を後目に外資による不動産買収が加速する可能性があります。

国が本腰を入れる“不動産バブル封じ込め”

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)など多数。

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