医療業界で「世界シェア30%」を誇る、“日本人が知らない”ニッチトップ2社を紹介!

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 経済ジャーナリストの田宮寛之氏は、世界の人口増加や環境悪化など「今後、世界的に医療関連ビジネスが拡大していくのは明らか」だとした上で、その中で日本には医療分野で輝く「グローバル・ニッチ・トップ(GNT)企業」があると話す。そのうちの2社について紹介する。全3回中の2回目。

※本稿は田宮寛之著『日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)から抜粋、再構成したものです。

第1回:日本には光り輝く企業がある!世界経済を支える「グローバル・ニッチ・トップ企業」とは

第3回:「半導体製造装置」は日本が圧倒的なシェア!TBS子会社だった半導体企業が世界首位を取るまで

目次

世界一にこだわる医療機器のニッチトップ・マニー

 栃木県にある医療機器メーカーのマニーは、手術用メスや手術用縫合針、歯科治療機器を手がけている。なかでも白内障手術に用いられる眼科ナイフの世界シェアは30%でトップクラスを誇る。  

 同社のナイフの特徴はその「切れ味」にある。切るときの抵抗値が競合製品の半分程度で、ほとんど抵抗感がない。同時にコントロールのしやすさも兼ね備えている。  

 このため、極めて硬い角膜を2〜3ミリ切開する白内障手術において「歪みのない切り口」が可能だ。切れ味が悪いとナイフを眼球に強く押しつけなくてはならず、眼球に余計な圧力を加えて切り口が歪み、視力に悪影響が出ることがある。  

 眼科用以外では心筋梗塞などの血管バイパス手術に使用するナイフや内視鏡下鼻副鼻腔手術に使用する耳鼻咽喉科用ナイフも製造している。 

 創業者の松谷正雄は戦前に戦闘機部品を製造しており、部品にはステンレスを用いていた。その当時の技術が現在のマニーのコア技術になっている。  

 松谷は第二次世界大戦中に栃木県に疎開し、戦後は医療機器の製造に乗り出した。創業当時の医療現場では手術用縫合針がすぐにさびてしまうことが懸案事項だったため、同社はさびにくい特性を持つステンレスを使って針をつくることにした。  

 縫合針が硬くなくてはならないのは当たり前だが、折れにくさも重要だ。縫合中に折れると破片が体内に取り残されて大変なことになる。折れにくくするにはステンレスに柔軟性を持たせなくてはならないが、それでは硬度が不足する。  

 通常は、硬さと折れにくさ(柔らかさ)は両立しない。しかし、同社は繊維状組織を持つ独自ステンレスを開発し、硬さと折れにくさを両立した針をつくることに成功。手術針にステンレスを使用するのは世界初のことだった。  

針だけで1万アイテムを用意

 マニーは針を使う医師の声を積極的に取り入れており、体のあらゆる部分のさまざまな手術に対応できる針をそろえている。その結果、針のアイテム数は1万を超えている。  

 今後、ロボットが手術することが増加していくと思われるが、同社は2024年にロボット手術用の縫合針を開発したと発表。ロボットの動きに合わせて針先のカーブを変えるなどの工夫がなされている。 

 歯の根っこを治療する根管治療では、虫歯部分をきれいに削っても、そのまま被せ物を取り付けてしまうと神経が通っている管(根管)の中で細菌が繁殖し、虫歯が再発してしまう。そのため根管治療では、腐敗した神経を取り除き、根管内を洗浄・消毒し、最後に薬剤を詰める。こうすることで、被せ物を取り付けたあとの根管内での細菌の繁殖や虫歯の再発を予防することができる。  

 マニーは、腐敗した神経を取り除いて、神経が通っている管(根管)の中を清潔な状態にする機器であるリーマ・ファイルを製造しており、この世界シェアは30%。あらゆる根管治療に対応したリーマ・ファイルの開発を重ねた結果、アイテム数は2000を超える。

「世界一か否か会議」で品質を追求

「品質世界一にこだわる。社内では年に2回『世界一か否か会議』を開催し、世界市場において当社製品の品質が世界一であるかどうか確認している」  

 2020年にマニーが経済産業省のグローバル・ニッチ・トップ(GNT)企業に選定されたときの髙井壽秀社長(当時)のコメントだ。  

 マニーは以下のようなルールを定めて研究開発に臨んでいる。

①医療機器以外は扱わない 
②世界一の品質以外は目指さない 
③製品寿命の短い製品は扱わない 
④ニッチ市場(年間世界市場5000億円程度以下)以外は参入しない 

「世界一か否か会議」では、競合他社製品を入手し、性能比較テストを実施することによって、マニーの品質が世界一であるかどうかを確認する。もし他社より劣った場合は、次の会議までにその原因を分析し、対抗策を講じなければならない。世界一を取り戻せなければ生産撤退となる。  

 GNT企業はどこも世界トップシェアを意識するが、その中でもマニーは特に意識が強い企業だ。そして、その意識の強さが、同社の成長を支えている。

競合の追随を許さない世界一の超高速回転技術・ナカニシ

 栃木県に本社を置くナカニシは医療や工業分野の超高速回転機器を製造しており、歯科用ハンドピースの世界シェアは約30%で首位。海外現地法人は15カ国にあり、135カ国以上に販売ルートを持っている。  

 歯科用ハンドピースとは、歯科医が歯を削るときに手で握って使用する器具のこと。細長い円筒形で、先端部に取り付けたダイヤモンド製ドリルバーを高速回転させて歯を削る。キーンという音を出しながら歯を削る、歯科医院でよく見かける治療器具である。  

 ナカニシのハンドピースは1分間に40万回転する。この回転数は他社の追随を許さない。自動車のエンジン回転数が1分間に3000〜5000回転であることと比べると、40万回転がいかに高速か想像できるだろう。  

 ナカニシの強みは、開発・部品生産・組み立て・販売をすべて自社で行っていること。これによりグローバルな市場のニーズを素早くキャッチすることができる。  

 ハンドピースは歯科医にとってなくてはならない医療器具であり、さまざまな要望が寄せられるが、ナカニシはミクロン単位の精度で歯科医の要望に応えてきた。今後のハンドピース事業について中西英一社長は、「世界シェア40%を取りたい」と言う。  

 ナカニシはドリルに関連する超高速回転技術に加えて、1秒間に2万回以上の超音波振動を起こすことができる超音波技術も持っている。この技術が活かされているのが、歯石を除去する機器の「超音波スケーラー」で、多くの歯科衛生士に使われている。 

米国企業を子会社化

 ナカニシの売上高の約80%を歯科事業が占めるが、超高速回転技術を活用して外科事業にも注力している。  

 人口の高齢化によって脳神経外科や脊椎脊髄外科、整形外科などの分野で切削切削器具のニーズが高まっているため、骨手術用ドリルの開発・製造も行っているのだ。インプラント治療で人工歯根を埋め込むために顎の骨に穴を開けるドリルを改良し、頭骨や股関節を削れるようにした。大学病院の医師と提携するなどして開発を推進している。  

 そのほか、一般産業向けの切削器具も手がける。同社の超高速・超精密スピンドル(回転軸)は、自動車や精密機械、航空機などの生産ラインの専用機やロボットに装着され、さまざまな部品の超精密加工に活用されている。  

 また、同社が製造するマイクログラインダーは、精密で正確な作業が要求される微細バリ取りや金型製作だけでなく、工芸・宝飾業界でも重宝されている。 

 ハンドピースなどの歯科医療事業、骨手術ドリルなどの外科医療事業、一般産業向け器具の機工事業の主要3事業は、同社の「超高速回転技術」と「超音波技術」をベースにしている。  

 そして近年、そこに歯科診療用のイス事業が加わった。ナカニシは2020年10月に米国のデンタルチェアメーカー・DCIインターナショナルへ資本参加し、2023年8月に完全子会社化したのだ。  

 DCIは2005年の設立で、オレゴン州に本社を置く。歯科治療で患者が座るイスや照明、歯科治療用のドリルなどが一体となった歯科治療台を製造販売している。これまで北米においてナカニシのハンドピースとDCIの製品をパッケージ販売するなど提携関係にあったが、完全子会社化でナカニシの北米でのハンドピース売上高はさらに増加するだろう。

田宮寛之著『日本人が知らない‼ 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)

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この記事の著者
田宮寛之

経済ジャーナリスト、東洋経済新報社編集局編集委員、昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授、拓殖大学商学部非常勤講師、明治大学学部間総合講座講師。 明治大学経営学部卒業後、日本経済新聞グループのラジオたんぱ(現・日経ラジオ社)を経て1993年に東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクとなる。2007年、株式雑誌の『オール投資』編集長に就任。2009年、就職・採用・人事などの情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げて編集長となる。2014年に「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。これまでに自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など4000社以上の企業を取材。

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