池田伸太郎氏が2026年に注目するセクターと3つの銘柄…投資戦略のポイントは「稼ぐ質」を見極めること「売上よりも利益率(マージン)を見るべし」

本稿で紹介している個別銘柄:アズビル(6845)、スカパーJSATホールディングス(9412)、santec Holdings(6777)、精工技研(6834)、住友電気工業(5802)
私たちを取り巻く経済環境は、かつてないほどの転換点にある。「円安はいつまで続くのか」「インフレで生活はどうなるのか」「今、投資すべきはどのセクターなのか」。多くの投資家、そして生活者が抱えるこれらの問いに対し、東大特任准教授・池田伸太郎氏がマクロ経済の視点と、企業の「稼ぐ力」に着目したファンダメンタルズ分析の両面から掘り下げるーー。
短期連載全3回の第3回。
目次
投資戦略のポイントは「稼ぐ質」を見極めること
いま、具体的にどのような企業に投資妙味があるか。私はキャッシュフローと資本効率を重視した「ファンダメンタルズ分析」を個別株投資の判断軸に据えて中長期の視座で投資をしています。その上で、特にいま注目しているのは企業の「値上げ力」と「利益率の改善」です。
個別株投資において、「ボトルネックを握る力」と「値上げ」の組合せはかなり強いカタリストです。というのも、設備投資は効果が出るまで数年かかりますが、値上げは比較的短期で業績(今期・来期)に反映されるからです。NVIDIAのように、技術力(ボトルネック)を持つ企業は、強気の値上げを含む製品ミックスの最適化で高い利益率を維持しています。ボトルネックを握る日本企業も「値上げは怖い」というマインドを捨て、強気の価格設定ができる企業が評価される時代に入っています。
決算書を見る際、単に「売上が何%増えたか」だけを見ていませんか? より重要なのは、「粗利率」と「売上高営業利益率」の推移です。
売上の増加と利益率の改善が同時に進行している企業が投資対象として望ましいことは言うまでもありませんが、例えば売上が横ばいや微増でも、利益を出しやすい構造への変化によって利益率が劇的に改善している企業もあります。好例がアズビル(6845)やスカパーJSATホールディングス(9412)です。どちらも売上高の増加は控えめですが、アズビルは「計装」というニッチ分野において国内で圧倒的なシェアを誇り、その価格交渉力から過去何年間も利益率が改善傾向にあります。スカパーはメディア事業の売上こそここ数年漸減していますが、コスト最適化により利益率は改善。さらに元来収益性の高い宇宙事業との両輪で全社利益率の改善も著しいです。これによりEPS(一株当たり利益)が上昇し、バリュエーションが改善され、株価が押し上げられやすい構図になります。
また、上記の例に加えて言えることは、「売上が増えればいい」という単純な拡大路線ではなく、「オペレーショナル・レバレッジ」(売上増に対してコストがあまり増えず、利益が加速度的に増える構造)が効いている企業を探すこと。これらが私が考える個別株投資の鉄則です。
2026年最大の注目テーマは「光(Photonics)」
最後に、私が今、最も注目しているセクターについてお話しします。それは、AI・データセンターブームに支えられた「光(Photonics)」という巨大な波です。
AIの進化により、計算量は爆発的に増えています。これまではGPU(計算処理装置)の性能向上がその解決策の主役でしたが、現在のボトルネックは「計算」から、GPU同士をつなぐデータセンター内ネットワーク(スイッチ)へ移りつつあります。従来の構成では、スイッチASIC(特定用途向けの専用IC。ここではスイッチの中核チップ)と外付け光トランシーバを結ぶ電気配線が高速化と省電力の壁になっていました。そこで、ASIC近傍に光エンジンを置いて電気区間を最短化するCPO(Co-Packaged Optics)が有効な解決策として注目されています。NVIDIAは2026年後半から市場に投入するRubin世代でCPOを前面に押し出しています。これはNVIDIA自身が単なる「GPUメーカー」からラック/データセンター全体のプラットフォームを提供する企業へ進化しようとしている狙いがあるからです。
「電気から光へ」。これは一過性のブームではなく不可逆的な流れであり、2026年はその実用フェーズにして最大の注目年になると見ています。