定年後は「第2の家選び」も!大手不動産会社が55歳以上の顧客を「ごみ」扱いする理由

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 不動産プロデュース事業を展開する牧野知弘氏は、「55歳から迎える人生は新たな第2のステージ。そこでは自分を主人公とした家選びをしよう」と語る。一方で、55歳からの家選びには注意点もあるという。家選びの前に知っておくべき情報を、牧野氏が伝える。全3回中の3回目。

※本稿は牧野知弘著『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)から抜粋、再構成したものです。

第1回:空き家問題は戸建てだけじゃない!空き家マンションが“負動産”になる

第2回:「憧れの田舎暮らし」の実態とは?その選択、実はかなりリスクが高いかも

目次

55歳以上の顧客は「ごみ」

 あなたが新たに家選びをする際に、まずは不動産屋の扉を叩きます。またローンを組む場合には金融機関を利用します。55歳になっても、これまでの人生で不動産屋に足を運ぶ機会はそんなに多くなかったはずですし、銀行からローンでおカネを借りる機会も少なかったはずです。  

 にこにこと愛想のよい不動産屋や銀行員であっても腹の中で考えていることは違っていたりします。

 まず家選びをする場合、多くの人は不動産屋のブランドを気にします。大手であれば大丈夫だろう、よもや騙したりはしないだろう、という感覚でしょうか。たしかに大手ブランドにはそこはかとない安心感があるように思う気持ちは理解できます。

 私自身、三井不動産という大手ブランドデベロッパーに在籍していましたから、会社の金看板でずいぶん大きな仕事に携わることができましたし、多くのお客様が「三井だから」といって安心して依頼してくることを知っています。  

 でも大手だから良い情報をもっているかといえば必ずしもそんなことはありません。また大手だから丁寧にお客さんを扱ってくれるのではないかと勝手に想像するかもしれませんが、場合によってそれは妄想となります。  

 なぜなら、往々にして大手からみてあなたのような顧客は「ごみ」だからです。大手ほど優良顧客を多数抱えていますのでそちらの仕事が最優先。特に地域に出店しているお店は、必ず地元の大地主さんとの取引が多く、大口の案件を扱うことで成績を維持しています。

 そのため、一見の客に対してはあまり真剣にやってくれないし、まだあまり経験のない若手社員などにまかせっきりにする場合もあります。  

高齢者の不動産選びは「街の不動産屋」へ

 いっぽうで街の不動産屋さんは、聞いたこともない不動産屋で、扉を開けるにも勇気がいりそうな店構えだったりします。でも地場で長く根を張ってきた不動産屋さんは、地元に精通しているケースが多いのです。

 また小さなお店で長年にわたってその地域で商売を続けていられるのは、地道に良い商売を続けているが故ともいえます。彼らは一度でも地域内で悪評がたてば、商売を続けることができなくなってしまいます。

 大手であれば、何らかまずい出来事が起こっても、事実を隠蔽する、担当者を転勤させて有耶無耶にすることだってできるかもしれませんが、地場の不動産屋に逃げ道はないのです。  

 ちなみに業歴のある不動産屋かどうかを調べる簡単な方法があります。物件チラシや渡された名刺などに記載されている宅地建物取引業者の免許番号です。

 その中でカッコ内にある数字が実は役所が免許を与えた回数を表しています。宅建免許の期間は5年ですので、3回目であればすでに10年は経過し、15年目に向かっていることになります。ご参考にしてみてください。

「二度と出ない物件」はうそ

 さて大手であれ、地場であれ、共通するのが不動産屋得意の囁きです。

「お客さん、この物件はよいでっせ。二度と出ない案件です」  

 このセリフは多くの場合「うそ」です。

 不動産屋にとっては買ってくれる客が一番の客。そして相手が素人だとみると、巧みな言葉遣いで誘導します。素人相手には、特に売りにくい案件からセールスするのが業界内では常道です。よい物件など二度も三度も出てくるから商売が成り立っているのです。

「もうすでにほかのお客さんが検討中です。今なら間に合いますので少なくとも夕方までにはご決断ください」  

 この場合もほとんど実際のライバルは「不在」です。その証拠に数か月後に同じ不動産屋の店先を覗くと当該物件のチラシが堂々と、しかも値段を下げて貼られていたりするものです。

「今だけ特別」「こんな良い物件みたことない」「お客さんは筋が良いので優先」はほぼ毎日囁くセリフなのであまり鵜吞みにしない方が良いです。  

インスピレーションを大事にしよう

 話題になったNHKドラマ「正直不動産」は、大谷アキラ原作、こうした不動産屋の手口を晒した漫画をドラマ化したもので大変話題になりました。しかしプロの私からみると「え?そんなことあたりまえじゃん」と思える内容ばかりで笑えないものが、正直ありました。  

 不動産業界は他業界に比べて恐るべきアナログ業界です。物件を実際に見ることが大切だと言いましたが、現場で後ろから耳元に囁かれると、何となく良い気分になり、とどめは「早くしないとなくなります」とせかされ、つい決断をしてしまいます。なんてアナログなんでしょう。  

 一度だけ見て、不動産屋の囁きや急かし、ときには脅しで購入を決断する必要もありませんし、よしんば他者に買われてしまったのならば、もともとその物件とは縁がなかったのだとあきらめることです。  

 ただ、不動産の面白いところは、第六感が意外に正解なところです。ひと目みてすごく気に入ってしまった物件は、実は「買い」だと私は常々思っています。

 一つ一つ家は立地も形も違います。マンションだって一戸一戸、階数も方角も異なります。インスピレーションで人と家が繫がっているのであれば、それ以上の細かな分析はある程度、後回しでもよいのです。買うのは自分。くれぐれも「二度と出ない物件ですよ」に騙されないことです。

牧野知弘著『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)など多数。

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