年収が上がる街、年収が下がる街、堕落する街
年収を上げたい、自分を変えたいのならば、引っ越しをしたほうがよい。これは、冗談ではない。筆者は本気でそうアドバイスする。以下、その理由を紹介する。
年収が住む街によって決まることは実証済み
年収はその人が身を置く会社や役職によって決まると言われている。だが、それ以外にもある要素が影響を与えていることが近年明らかになっている。ずばり、住む場所だ。
総務省発表の「課税標準額段階別令和元年度分所得割額等に関する調査」によると、住民の平均所得1位は東京都港区で約1217万円。2位に千代田区、3位に渋谷区と都心エリアが続く。
所得と年収は厳密に言えば定義が異なるが、年収イコールほぼ所得と見た場合、平均家賃が高い場所には高年収の人が集まっている。 当然といえば当然だ。だが、人々は 「高年収だからその街に住んでいる」のではない。むしろ「その街に住んでいるから高年収を維持できている」のである。
この考えが主流になったのは、7年前に刊行された一冊の本がきっかけだ。エンリコ・モレッティの著作『年収は「住むところ」で決まる―雇用とイノベーションの都市経済学』(プレジデント社刊)がそれだ。
同書において、モレッティはアメリカの都市では、なんと学歴や職歴よりも住所(住んでいる場所)が年収の多寡を決めると記述している。シアトルなどのイノベーション都市に住む高卒のほうが、デトロイトなどの工業都市に住む大卒よりも収入が高いというのだ。これは、都市の産業の生産性や景気の影響で、その街の時給がブルーワーカーでも上昇しやすいからだ。
実は、日本国内においても同様の事例は存在する。たとえば、全国の所得ランキング上位の軽井沢町は高所得者が多く住むため、長野や群馬の周辺エリアよりもアルバイト時給が高い飲食店が多く、まさにモレッティの主張を根拠付けている。
さらに、 東京都港区の飲食チェーン店の中には、時給1500円台でアルバイトを募集しているケースもある。一方で、東京23区内でランキング最下位の足立区の所得は、トップの港区の約3分の1。足立区のホワイトカラーの時給は、 港区の飲食店アルバイトより低いことも珍しくないのだ。
住む場所の選択によって、質の高い高所得者と出会える、いわばセレンディピティと単純接触効果を得られる可能性も高い。近所のバーで知り合った人がきっかけで高年収の外資系企業に就職できる人がいたとしよう。そんな幸運に巡り会える可能性は足立区よりも港区のほうが高い。
年収が下がる街はカレー、牛丼、つけ麺屋が多い
一方、年収が下がる街、下がったままの街はどんな街か。東京23区内で所得額ランキング下位の個人所得が低い街は、昼から営業している激安居酒屋や、油や糖質にまみれたカレーやラーメンなどの即物的に欲望を満たせる飲食店が駅前に立ち並んでいることが多い。この事実が意味するのは、ランキング下位の街は、短期的な欲望を満たしたくなる誘惑が多い街ということだ。
ここで一つ問題を出そう。今すぐ1万円が確実に手に入るのと、1年後に1万1000円が手に入るとして、あなたはどちらを選ぶだろうか。前者のほうが得られる金額は低いにもかかわらず、前者を選んでしまったあなたは要注意だ。
前者を選んでしまうことを行動経済学で「双曲割引」が働いているという。長期的な効用よりも割安な短期的な効用を得たいという人間の性向を示したものだが、この双曲割引率は低年収な人ほど高いといわれる。
双曲割引率が高い人は、貯金もできず、仕事帰りにちょっと飲んでしまう、小腹が減るとついラーメンを食べてしまう、駅前で鯛焼きを買ってしまうなど、短期的な欲望に流されがちだ。そのため資産も貯めにくく、投資もうまくいかない可能性が高いと言えるだろう。
より具体的に言えば、カレー、牛丼、つけ麺など、すぐにお腹を満たしてくれる味の濃い食べ物を出す店が並んでいる街は、欲望に弱い者たち(=年収の低い人たち)を引きつける。
さらに昼から飲める店が多い街も赤信号だ。すぐに酒が飲めるという環境によって、 次第に平日も明るいうちから酒をあおるようになり、やがて無職、高齢者の常連酔客と仲良くなり、仕事へのモチベーションは低下。 健康管理ができず、不眠が続いたことで酔客にすすめられた睡眠薬を飲むうちに薬物依存になり精神的に不安定に。結果、会社を辞めアルコール中毒となる……。こんな「堕落ルート」が整備されている街は年収を上げたければ避けるべきだろう。
住むと年収が上がる駅はここだ!
ここまでの情報をもとに、引越し先を検討しているあなたに具体的に都内でおすすめの街を提案しよう。「住むと年収が上がる街」は”煩悩マーケティング”の店舗がない街だ。