ビッグモーター炎上騒動…中古車屋が実名告発「不正は氷山の一角だ」中古車業界の悪徳手口全部バラします

 ビッグモーターを巡る記事が話題になっている。

 週刊誌FRIDAYの記事(5月5日号)によれば、ビッグモーターの社員が顧客のタイヤにネジを突き立ててパンクさせ、その修理工賃を請求していたり、「高級タイヤに取り替えた」とウソをついて安価なタイヤを取り付け、その差額を利益にしていたことが報じられている。また、本来自動車検査員の資格保有者しか行えない車検も、無資格のスタッフが行っていたという。

 この記事を巡って、ネットでは ”炎上” 騒ぎが起きたが、驚くべきことに、事件の当事者であるビッグモーターはFRYDAYの報道後、「完全黙殺」という異例の対応を取っている。同社は事件に対する否定コメントや謝罪文を公表せず、一切の反応を示していないのが現状だ。

 今回の件は、中古車業界全体にも衝撃を与えている。

「いわゆる ”悪徳中古車店” は古くから存在していますが、タイヤに穴を開けるなどの行為はさすがに聞いたことがないです。事実であれば極めて悪質と言えます」

 そう語るのは、YouTubeチャンネル「 【カーチューバー】カンちゃんの K’s channel」「かんちゃんの中古車売買チャンネル」を運営する高級輸入車専門店K’s JAPAN店長の都野田和義氏だ。では、業界にはどのような不当な請求や不正・不正まがいの行為があるのか。

なぜ…諸費用30万円のはずが、100万円に

「たとえば、複数の店舗から下取りの相見積もりを取ったとして、500万円でもっとも高価で買取をした中古車店があったとします。ところが、その後『故障が見つかったので下取り価格を450万円に下げます』と言い張る店舗は存在します。ほかには、顧客のトラブルではないですが、故障車を預かった際、保険会社に多めに保険料を請求することも耳にしたことがあります」

「もっとも中古車店が利益を上乗せする行為で多いのは、車両を購入したときです。中古車店のホームページや中古車情報サイトは、車両本体価格と支払総額という2つの価格が存在します。車両そのものの価格が車両本体価格なのに対し、車両整備費や納車準備費、車庫証明の手続きを代理で行う費用を合わせたのが支払総額です。一般的には、車両本体価格に30万円ほどのコストがかかります。つまり車両本体価格200万円のプリウスを買ったならば、支払総額は230万円になるイメージです」

「ところが、中古車情報サイトには支払総額230万円と記載されているにもかかわらず、実際にそのプリウスを購入すると、諸費用込みの支払いで300万円近くを請求するケースがあるのです」

 もともと、諸費用として30万円を請求していたのが100万円に。一体これはどういうカラクリか。

オプションとは…?「オプションを申し込まないと買えません」の矛盾

「納車時の整備を ”安心パック” などと謳(うた)い、顧客にとって不要なオプションをつけて、業界相場の倍以上の整備費用や車庫証明手続き費用を請求するのです。これらの諸費用はどれも利益率が高いため、利益を上乗せしたくなるのでしょう」

 中古車情報サイトに記載された支払総額と異なる場合でも、実際にはオプションを申し込まなければ購入できないこともあるのだという。

「顧客にとっては不要なコーティング、希望ナンバーなどを強制したり、週末に納車する場合『土日祝日納車費用』という理解し難い請求項目を追加する店舗も存在します。納車の日が変わると、なぜ値段が変わるのか、その理屈がまったくわかりません(笑)」

「ほかにも、遠方での購入時に請求を上乗せすることもあります。東京に住んでいる人が、大阪の中古車店の車両を購入したとして、大阪店から東京店への陸送費を5万円請求するのです。こうした諸費用が積み重なり、結果として元の支払総額よりも数十万円上乗せされるのです」

点検時は「儲けたくなるタイミング」

 次に不当な請求をされやすいのが、車両の点検時だという。話題のビッグモーターの記事でも、点検中の不正行為が指摘されていた。

「点検時に『すべてのパーツが劣化しているので、タイヤを含めてすべて交換した方がよいです』と、本来は交換不要なものまで業界相場よりも高い工賃費をのせて請求するのです。悪徳中古車店にとって、点検時は “儲けたくなるタイミング” なのでしょう」

「また、ナビを取り付ける際にナビ代は0円にしても、工賃や取り付けパーツ代を業界相場の2倍以上にして、実質的にナビ代以上に請求する店舗があると聞いたことがあります。ナビのほかにはETC取り付けにおいても、同様の方法が取られることがあります」

 ここでひとつ疑問が生まれる。

 悪徳中古車店の存在は、古くから知られているにもかかわらず、なぜ今さらネットで話題になったのだろうか。そこには業界の非対称性があるという。

クルマの知識が乏しそうな客をターゲットにしていた

「おそらく、こうした不正行為は、クルマの知識が乏しい人がターゲットとして狙われていたのでしょう。私を含め、ある程度クルマに関する知識がある人は、不当に高い請求はすぐにバレます。『高価なタイヤに交換し』たと言って安価なタイヤを取り付けても、クルマ好きにはすぐにバレますから」

「また大手のチェーン店の場合、販売ノルマ、板金ノルマ、整備ノルマのように、それぞれの部門で数値目標を追いかけていたことも、一部が不正に走る理由だと考えられます。販売ノルマは車両の販売台数のノルマ、板金ノルマは壊れた車両の修理を請け負う数のノルマ、整備ノルマは車検などの工賃費用のノルマです」

 過剰な数値目標は、不正行為を生み出す温床となってしまったという。

車両価格の安さが落とし穴に

「もともと大手チェーン店は、中古車業界では、車両価格がかなり安いことで知られていました。我々のような小さな販売店は、車両の仕入れ価格に1割程度の利益をのせて販売価格として設定しています。オークションなどで500万円で仕入れた場合、その1割の50万円をのせて550万円で販売するイメージです」

「ところが一部の大手販売店は、同様の車両を510万円で販売するのです。完全に薄利に思えますが、その先にカラクリがあります。これに諸費用として80万円ほどの見積もりをとり、請求するのです。前述したように、我々のような店舗は30万円ほどです」

「さらにローンも、彼らにとっては大きな儲け口となっています。我々の店舗を含め、中小規模の中古車販売店は、ローン金利は3%台であるのが一般的です。これに対し、一部の大手は6〜9%に設定しています」

 これが、どれだけのインパクトをもたらすのか。なんと、支払総額が100万円以上変わることも珍しくないのだ。

ローンでさらに100万円を儲ける

「たとえば車両価格400万円の中古レクサスを、金利2.9%、7年ローンで購入した場合、月々支払いは5万2637円になります。それに対し大手販売店は、金利を9.8%に設定します。すると、月々の支払額は6万5992円となり、両者の支払額の差は7年間で111万8795円、つまり100万円以上支払額が変わります」

 では、なぜここまで大手販売店は高額な金利に設定するのか。一見、消費者にとって高金利の店は選ばれないように思えるが……。

「これだけ高金利を設定する理由は、顧客が中古車ローンの金利相場を知らないからでしょう。あまり詳しくない人は車両価格が安いとすぐに飛びついてしまうのかもしれません。店舗によっては、ローン会社からマージンが入るので、高金利でローンを設定すればするほど、儲かる。つまり、車両価格以外で儲けたほうが顧客の知識不足を考えると合理的なのです」

 当然、多くの大手や中小規模の店舗ではそうした不正じみた行為をしていないだろう。一方で会社によっては他社を出し抜くため、車両では儲けず、整備費やローンで利益を出すビジネスモデルになってしまっているのが実情だという。

「もし、自分の購入する車両が、業界相場に合った整備費用かどうか知りたい場合は、相見積もりを取るか、別の中古車に電話で確認することをおすすめします」

鈴木俊之

フリーライター。 法政大学文学部地理学科卒業。 2012年出版社入社。 月刊誌編集部に所属。 15年よりフリー。専門は地理学、 不動産、金融など。

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