中小企業に歓迎されると思った…大企業部長が早期退職後、転職市場で秒殺される3つのワケ「失業期間2年、年収1500万→500万」
近年、中高年の転職希望者が増加している。年金支給開始年齢も徐々に引き上げられる中、産業構造の転換やコロナ禍での早期退職、役職定年などによって、新天地を求めたいと希望する人々が増えているからだ。だが、安易な気持ちで臨むと大変な目に遭う。人事ジャーナリスト・溝上憲文氏が、中高年転職の現実を伝える。
中高年転職希望者の3割が50歳以上に
近年、中高年の転職希望者が増加していると言われている。実際にエン・ジャパンの調査(『ミドルの転職』)による50~54歳の新規登録者数は、2020年は35歳以上の登録者のうち8.4%だったが、21年は12.5%、22年は19.8%と大きく増加している。55~59歳も21年の6.4%から8.5%と微増。50歳以上が全体の3割近くを占めている。
50歳過ぎといえば、定年までの逃げ切り世代と言われるが、なぜその年齢で転職を希望するのか。エン・ジャパンの広報担当者によると「これまで培った経験やスキルを活かしたい人、将来のキャリアを考えて専門性を磨きたいという人もいる。あるいは役職定年を契機に転職を希望する人もいる」と語る。
今後のキャリア構築に積極的な人もいれば、役職定年を迎えた大企業の社員で、将来を見切って中小企業への転職を希望するという人もいる。一方、希望退職者募集に応募し、早期退職した人が近年増えていると語るのは人材コンサルティング会社の社長だ。
「この5~10年で多いのは、重厚長大系の製造業や金融機関などを早期退職した人たちだ。あるいは倒産やM&Aによる事業再編のあおりを受けて人員削減の対象になった人。工業化社会からサービス化、インターネット化と、産業構造の変化の中で、培った経験やスキルの需要がどんどん減り、リストラという形で外部に排出される人が増えている」
確かにリーマン・ショック以降、早期退職者募集は増加し、コロナ禍の2020~21年に3万4000人がリストラされている。それ以外にも会社が常備している「早期退職者優遇制度」に応募して退職する人も多い。また、人手不足の影響で中高年の求人が増加しているのも確かだ。
年齢問わず年収アップは、ほんのひと握りの特殊技能を持った人材だけ
しかし、早期退職し、再就職できても年収が下がるのが一般的だ。エン・ジャパンが転職コンサルタントに聞いた「転職後の年収」調査(2023年1月30日)によると、転職後の年収は40代後半(45~49歳)では、上がる人が44%、下がる人は25%。50代前半(50~54歳)になると逆転し、下がる人が54%、上がる人は12%にすぎない。50代後半(55歳~)になると、上がる人はわずか2%と極端に少なくなる。