ガーシー帰国でNHK党の最終局面「日ハム新庄監督、衆院比例1位で国政へ」”実権は比例2位の稀哲に
暴露系YouTuberであるガーシー(東谷義和)参議院議員をめぐる騒動が、最終局面を迎えつつある。ガーシー氏は、FNNのインタビュー(2月23日)に対して、「もちろん帰国する意思はあります。30万人近くの票を入れてくれた人たちがいる。その人たちに対しての陳謝です」と滞在先のドバイから帰国して、国会で陳謝する考えを明かした。
憲政史上初の無登院議員、全国紙はおおむねガーシー氏の行動を批判
NHK党の立花孝志党首は会見(2月22日)で、「ガーシー参院議員が帰国して国会に登院する可能性について「これからガーシーと話し合うが、1日だけでもピンポイントで来て突然、国会に現れるシナリオを考えている」「ガーシーが除名されるまでに、むしろ来る確率の方が高いと思っている」「本人としては、今の状況を合理的に考えると、『帰ってくる』の一択だ。帰国の可能性は高まっている。帰ってくる見込みは、現時点で五分五分」としている。
憲政史上初となる、現役国会議員が当選から登院をしてこない事態は、大きな物議を醸している。大手新聞の社説を比べてみよう。
まずは、読売新聞だ。読売(2月12日社説)は、ガーシー氏に対して、激しく怒っている。「正当な理由なく国会を欠席し続ける事態を軽んじていたら、立法府の権威は失墜しよう。参院は手順にのっとり、厳正に対処する必要がある」「ガーシー氏の主張は、身勝手すぎると言わざるを得ない」と断言。「ガーシー氏に当選後支払われた歳費や期末手当などは、計2000万円近くに上る。捜査を逃れるために国外滞在を続けながら、多額の公金を受け取ることに、国民の理解が得られるはずがない」としている。ただし、どの処分(除名、登院停止、議場での陳謝、議場での戒告)が適切かについては言及していない。
次に、産経新聞だ。産経(2月23日)は、やはり「国会法では、議員は召集が指定された期日に登院しなければならないと定めている。ガーシー氏の主張は身勝手にすぎる」と読売と歩調を合わせた主張だ。ただし、読売はどの処分が適当かを明らかにしていないが、産経は「女性支援事業などに関する質問主意書は出しているが、国会審議や採決に加わらないのは職責の放棄だ。最低限の義務すら果たさず、給与に当たる歳費などを受け取ることにも、国民の理解は得られまい。懲罰は当然である」「ガーシー氏が最終的に陳謝に応じなければ、与野党はさらなる懲罰を検討する方向だ。『除名』が視野に入るのもやむを得まい」として、かなり踏み込んだ主張をしているのが特徴だ。立花党首のシナリオである「1日だけ登院」という方法にも「たった1日の登院で済まされるとみているなら考え違いも甚だしい」と容赦無く切り捨てている。
待たれる朝日新聞の態度表明‥有権者に選ばれた議員が多数決で排除されることは妥当なのか
朝日新聞(1月22日社説)は、ここまで騒動が大きくなる前とあって、今日、読み返してみると、踏み込みが甘い。「名誉毀損(きそん)などで告訴されており、『帰国すれば逮捕される』というが、こんな身勝手な理由で、議員の責務を放棄するなど、許されることではない。3月上旬に帰国して、警察の事情聴取も受けるとしているが、あすから始まる通常国会の冒頭から登院するのが筋である」「今日の事態を招いたのは、国会欠席を公言していたにもかかわらず、その集票力をあてこんでガーシー氏を擁立したNHK党の選挙戦術に根本がある」としている。処分については触れられずじまいだ。すごい剣幕で怒っていた読売と違って、少々、冷静な部分がある。少数派の意見を尊重しなくてはいけない、として、多数派の横暴を戒めてきた朝日新聞が、多数決によって民意で選ばれた国民の代表を除名することに、どのような意見を持っているのか。一刻も早い社説での態度表明が待たれるところだ。
毎日新聞(2月2日社説)は、冒頭で「国会の場で議論し、議案などの採決に加わることは、議員の職責の根幹である。それを怠り続けているようでは、国民の代表として失格だと言わざるを得ない」と断じるなど、読売にも似た激しい怒りをぶちまける。「招状が出されて7日以内に出席しない場合、戒告、陳謝、登院停止、除名のうち、いずれかの処分が科される可能性がある。本人がかたくなな態度を変えなければ、やむを得ない対応だろう」と指摘するところをみても、処分をすることに賛成の模様だ。この書き方だと、「除名」でもOKとしているようにも読める。
国会議員を除名とした例は、過去にも存在している。当時、共産党の議員が虚偽を含む共産主義的主張をしていたことが、その除名の原因のようだが、除名処分には、非常に危うさをはらんでいるように筆者は感じる。私は、NHK党の候補者にも、れいわ新選組の候補者にも昨年夏の参院選挙で投票していない。ガーシー氏が登院しないことにも賛成していない。登院すべきだと思う。しかし、民主主義にとって一番大事な選挙で、当選した人物を多数決で排除することにもっと慎重にならなくてはダメだと思う。
戸籍謄本と委任状があれば、著名人なら誰でもNHK党が当選させることができる
その意味で、先日参議院で行われたガーシー氏への議場での陳謝という懲罰の採決に加わらなかったれいわ新撰組の行動を賞賛したいと思っている。それにしても、NHK党の立花孝志党首は、この大混乱をどう収集し、NHK党をどう発展させていくつもりなのだろうか。みんかぶ(2022年11月22日)のインタビューで立花党首は、以下のことを明らかにしている。
「ガーシー議員を辞めさせようとする動きが出てくれば、党として全面的に戦っていくつもりですが、国会がもしガーシー議員の除名手続きを取るなどしたら、(病院で1年休んでいる議員もいることを念頭に)天に唾するようなものでしょう」
「ガーシー議員が、戸籍謄本だけNHK党にくれたら、立候補の手続きはこちらでぜんぶできてしまいます。もっと言うと、戸籍謄本の委任状さえ送ってもらったら、戸籍謄本すらこちらで手に入れることが可能です。ガーシー議員が当選したことによって、すごく、YouTuberたちが理解しやすくなったと思います」
つまり、立花党首は、他の国会議員たちも病欠を理由に長期で休んでいたりしているのはいいのかと、問題提起をした上で、ガーシー議員の選挙活動を通じて、立候補者が有名人であれば、戸籍謄本取得の委任状だけでも送ってくれたら、立候補の手続きから選挙活動までのすべてNHK党がやり、本人は何もせずに、YouTubeの出演だけで当選できるということがわかったというのだ。
さらに、立花党首は、来たるべく衆議院選挙では、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督に対して出馬を打診しているという。
「衆院選挙は、参院選挙と違って、全国を11ブロックに分けた比例選挙が行われます。つまり、それぞれのブロックにリーダーが必要になってくるのです。例えばですが。東京ブロックはホリエモン(堀江貴文氏)に任せます。南関東ブロックは、ヒカルチームに任せます…(中略)。実は、北海道ブロックは新庄剛志さんに任せたいと考えていて、本人と話をしているところです。どっかで回答くれるという話で「立花さん、いいよね」というようなことも言ってもらっています。新庄さんについては、北海道日本ハムファイターズの監督をしながら、立候補し、議員もできるのですよ。新庄さんの監督業が忙しいとなれば、比例リストの2番目に森本稀哲(ひちょり)さんを入れておけば、新庄さんが1カ月で議員を辞めても、稀哲さんが当選して議員活動ができますよね」。
ガーシー議員の登院拒否問題は、これまで議論されることすらなかった日本の民主主義の在り方が問われている。パンドラの箱が開いてしまったのかもしれない。