明治外苑に懺悔してほしい…桑田佳祐の歌詞が生む「誤解と偏見」これでは緑の破壊者だ”GHQ接収前の姿は神宮の悲願”

元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「サザンオールスターズ新曲の歌詞は明治神宮再開発批判のようにも読めるが、しかしその批判は的外れだ」と主張するーー。
桑田佳祐の新曲「Relay〜杜の詩」には神宮再開発批判のメッセージが込められているようだ
歌手の桑田佳祐氏の『すべての歌に懺悔しな!!』という歌詞に「歌が得意な猿なのに、高級外車がお出迎え」「大学出たって馬鹿だから常識なんかは通じねェ」という、ある歌手を批判したとされる部分があるが、なにか自分の気に食わないものを捕まえて、批判をした歌をつくるのは今回が初めてではないようだ。日本でトップクラスの人気を誇るミュージシャンに、一方的に批判された側はたまったものではない。知識人でもないので、反論が来たところで無視されるのがオチだ。相手次第では、ただの弱い者いじめにもなりうる。
9月3日、桑田佳祐氏が所属するサザンオールスターズの公式サイトに、以下のようなプレスリリースが掲載された。
<桑田佳祐のレギュラーラジオ「桑田佳祐のやさしい夜遊び」(TOKYO FM/JFN系列 毎週土曜23:00〜)にて初オンエアされた、三ヶ月連続新曲配信リリース“サザン2023三部作”の完結編、サザンオールスターズの新曲「Relay〜杜の詩」の歌詞を特設サイトにて公開中です。ぜひご覧ください!▼サザンオールスターズ45周年特設サイト https://special-sas45.southernallstars.jp/>
このサザンオールスターズの新曲「Relay〜杜の詩」の歌詞を書いたのが、ボーカルでもある桑田佳祐氏であり、この歌詞には、明治外苑の再開発について、かなり批判的なメッセージが込められているように見える。明治外苑の再開発について触れている部分を抜き出してみる。歌詞全文については、先のプレスリリースのURLから観ることができるので、興味のある人はチェックしてほしい。
「麗しいオアシスがジャングルに変わる」
「誰かが悲嘆(なげ)いてた 美しい杜が消滅(き)えるのを Ah…
自分が居ない世の中 思い遣るような人間(ひと)であれと
ーー
麗しいオアシスが
アスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?
ーー
未来の都市が空を塞いで良いの?
ーー
意思を継ないで
この杜(ここ)が好きだよ」
まず、これらの歌詞について、1つずつ、事実と反することを指摘していく。「歌詞を勝手に引用してJASRACに怒られないか」という人もいるかも知れないが、そもそも商用目的ではない歌詞の引用は著作権上、認められている。そして、今回は政治的な意見を多く含んだメッセージであることから、必要最小限の引用をしている。
美しい杜(もり)は消えません
「誰かが悲嘆(なげ)いてた 美しい杜が消滅(き)えるのを」
イチョウ並木は消えることはない。むしろしっかりと守られる。本来であれば、伐採しても良い木であっても一本につき数百万円もの費用をかけて移植されることになる。
神宮外苑のイチョウ並木が美しいのは、人間の手によって守られ、不必要であったり、危なかったりするものは伐採されてきた歴史があるためだ。
美しい杜は消えることはない。なにより、緑は増えることになる。地球温暖化の観点から、伐採に反対する人もいるだろうが、再開発後に、緑地面積は増え、木の本数も増える。
開発が終わった瞬間には、まだ植えたばかりのこれから成長するイチョウが多くあるため、緑地体積は減るのだが、時間が経てば、緑地体積も開発前よりも増えることになる。
明治外苑はアスファルト・ジャングルに変わりません
「麗しいオアシスがアスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?」
これも、何を指しているのかがわからないが、ひどい印象操作だ。
ネットで調べるとでてくるサザンオールスターズの桑田佳祐氏の自宅や実家とされる土地建物よりも緑地面積の割合は多い。明治外苑がアスファルト・ジャングルになるというが、これは難クセでしかない。現状のバッティングセンターやゴルフの打ちっぱなし、軟式野球場を、麗しいオアシスというのもムリがある。現在のイチョウ並木のどこかの部分をとって、麗しいと表現できるなら、再開発後も麗しいものである。
桑田氏が森林や砂浜でしかライブツアーをやっていないならまだしも、アスファルトジャングルとしか形容しようがない「ドームツアー」などをずっとやってきた人物のことばとは到底思えない。
自分のことは棚に上げて私有地の建設計画に文句をいうのは、「小粋な仮面でどこかでパクった小言を連呼する」(『すべての歌に懺悔しな!!』歌詞)で茶化してきた人物そのものではないのだろうか。新しい神宮球場までには引退するから、批判し放題ということなのだろうか。とても残念だ。
ドームが空を塞いでも、絵画館前広場ではむしろ夜空を見上げられるようになる
「未来の都市が空を塞いで良いの?」
というのも悪質な印象操作に感じる。たしかに、ラグビー場、テニス場の一部はドーム式になる予定だが、ほかの場所で空を観ることができる。
むしろ、軟式野球場を潰してできる「絵画館前広場」は、オープンスペースとして、開放的な夜空を見上げることになりそうだ。
「塞いで良いの?」という質問には、法律上、塞いでも良いとしてかいいようがないが、人々が空を見上げることができるスペースは増えることになる。
GHQに接収された以前の姿を再現したい明治神宮の悲願が、再開発で叶うことに
「意思を継(つ)ないで この杜(ここ)が好きだよ」
これは保守オピニオンの間でも混乱が見受けられるところだ。
明治神宮外苑は、明治天皇と昭憲皇太后のご遺徳を永く後世に伝えるために造成され、開かれた「外苑」として聖徳記念絵画館や西洋庭園、スポーツ施設等が整備されたものだ。
しかし、それが戦後、アメリカのGHQによって接収され、もともとあった西洋庭園がスポーツ・レジャー施設へと改修され、現在の軟式野球場の姿となっている。
今回の工事によって、GHQ接収以前の姿が少し取り戻されることになった。つまり、イチョウ並木の奥にある現在「軟式野球場」となっているスペースが、「絵画館前広場」となる。この昔の姿に戻そうという計画については、明治神宮が特にこだわっていたことが取材で判明している。
明治神宮外苑の稼ぎは、明治神宮内苑を守るためにある
最後に、儲けに走ったのではないかと批判が起きたことが、この再開発問題の背景にあるようなので、簡単に触れておく。
明治外苑の再開発は、明治神宮の赤字を埋めるためにはじまった計画だ。明治神宮に行った人なら理解できると思うが、あの莫大な敷地には莫大な維持費がかかるのである。明治外苑の再開発の息の根を止めれば、困るのは、明治神宮そのものなのである。
日本の文化をしっかり守るためにも、地球環境にも優しく、車イスの人、ベビーカーを押す家庭などには確実に歓迎されるであろう明治外苑の再開発を、推進しなくてはいけない。きっと周りの人に流されて変なものが見えてしまったのだろうと思うが、以上のことがわからない桑田氏ではないと信じたい。できることなら、オアシスを結果的にぶっ壊してしまう妨害活動をやめてほしいと切に願う次第だ。