“差別秘書官”更迭しても”ドラ息子秘書官”は守る…パリだけじゃない!岸田Jrが今、官邸でやっていることが「観光旅行」だ
岸田文雄首相は、LGBTQに対する差別的発言をした荒井勝喜首相秘書官を更迭した。そして、官邸の私物化と大きな批判を呼んだ岸田首相の長男、翔太郎氏の首相秘書官就任だが、今度は岸田首相の欧米訪問という、極めて大きな政治舞台での「観光旅行」疑惑が世間を騒がせていたが、こちらはとくにお咎めはない。そもそもこの首相秘書官という仕事、翔太郎氏のような政治の素人に務まるようなものだろうか。ジャーナリストの小倉健一が解説する。
公私混同、欧米訪問で「観光旅行」疑惑の翔太郎首相秘書官
岸田文雄首相の欧米訪問に同行した長男の翔太郎首相秘書官が公用車で土産品などを購入したことは約半数の大臣が認めたが、大臣たちは「プライベートなことだ」として具体的な内容は明らかにしなかった。時事通信によれば、「関係者によると、ある男性閣僚はネクタイを贈られた」(2023年1月31日)という。
今月、岸田首相が欧米を訪問した際、同行した長男の翔太郎氏が公用車で買い物に出かけたと週刊新潮に報じられた。パリでは観光名所を周り、夕食はビストロで堪能。ロンドンではビッグベンやバッキンガム宮殿を車で訪れ、写真を撮影、超高級百貨店ハロッズで土産物を買い込む「物見遊山」ぶりだったという。
松野官房長官は1月31日、閣議後の記者会見で、次のように述べた。「土産をいただいたが、具体的な内容は個人的なことでもあり、一方的に答えるのは差し控えたい」。他の大臣もまるで示し合わせたかのように、「プライベートなこと」なのでの一点張りだ。
1月31日の衆院予算委員会で、立憲民主党の後藤祐一氏が、岸田首相の欧米歴訪に同行した長男の翔太郎首相秘書官が公用車で土産を買ったことについて、「各大臣は記者会見で『総理からお土産をもらった』と答え、中身について『プライベートなことなので控える』と答えた。プライベートのお土産を買うことは公務なのか。公私混同ではないか」と問いただすと、岸田首相は「私自身のポケットマネーで買ったということは間違いない。お土産を買うということについても、誰がやるかということを考えた場合に、政務秘書官が対応するというのは現実ある。これも政務秘書官の本来業務に含まれうると考えており、すなわち公務だ」と述べている。
飯島勲、今井尚哉‥実力者揃いの歴代首相秘書官たち
この翔太郎氏の「観光旅行」と批判が起きている行動について、木原誠二官房副長官は、「個人の観光動機による行動は一切なく、政務秘書官としての公務以外の不適切な行動はなかった」として、国際機関やシンクタンクなど関係者との意見交換、外遊を発信するための風景の撮影、政治家としての首相の土産購入を行うために、観光地で写真を撮り、高級百貨店でお土産を買っていたのであり、「観光施設には一切入っておらず、自身や私用目的での買い物はない」と弁明をしている。
岸田内閣では、総理大臣秘書官が8人いて、2人が政務秘書官、6人が霞ヶ関出身の事務秘書官だ。事務秘書官は、中央省庁からエース級の人材が派遣され、岸田内閣では、財務(2人)、外務、経産、防衛、警察の各省庁から出ていて、今後、事務方トップの「事務次官」に登りつめる人も多い。岸田翔太郎氏は、政務担当秘書官でだ。歴代の長期政権にあっては、飯島勲氏(小泉純一郎政権)、今井尚哉氏(第2次安倍政権)という実力派の政務秘書官の存在があった。彼らは、隠然と官邸を差配し、閣僚人事にも強い影響を与えていたことが知られている。
主人である内閣総理大臣ただ一人のために、汚れ役となって、時には脅し、時にはあの手この手で懐柔をしながら、政権運営を進めていく。
『組閣や内閣改造時に小泉氏は、人事案が事前に漏れた場合は差し替えることをちらつかせて情報を管理。閣僚候補にスキャンダルがないかの「身体検査」を徹底して行った。これら二つを取り仕切ったのも飯島氏。政権内の「知恵袋」的存在でもあり、郵政解散で大勝した小泉氏は、総裁任期の延長を求めず、5年5カ月で首相を降りたが、安定した政権運営が続いたのは、「飯島氏の力も大きい」との見方がもっぱらだ』(時事通信・10月7日)という。今井氏も、安倍政権終盤にあって、これまで官邸の要であった菅義偉氏を追い落としにかかり、実際に、菅氏を重要な政策決定の場から遠ざけた。
何もやらない秘書官という選択も‥翔太郎氏がやっているのは税金を使った社会科見学
全国紙政治部記者は、「政務秘書官」の役割についてこう解説する。
「岸田首相は、後継者として、帝王学を学ばせる意図で、翔太郎氏を政務秘書官に任命しました。翔太郎氏は、1991年生まれで、三井物産に6年間勤務した後、2020年3月に岸田首相の秘書となりました。つまり、まだ数年しか政治の経験はなく、官邸において、経験がものをいう調整役や汚れ役を担うのは不可能です。ただ、こういう何もしない秘書官が過去にいなかったかというといました。有名なのは福田康夫内閣時の福田達夫氏です。達夫氏は、議員となって自民党の総務会長まで経験しています。小泉政権から引き継いだ第1次安倍政権では、首相秘書官が仕事ができもしないのに、前任の飯島秘書官を真似をしようとして大顰蹙を買っていました。その第1次安倍政権が短命に終わった後に誕生した福田政権で首相秘書官になったのが達夫氏です。自ら前にでるような危ないことは一切せずに、安全運転に徹しました。結果、福田政権は短命に終わりましたが、達夫秘書官への不満は出なかった。何かするたびに炎上する翔太郎氏も同じ路線で、これから先、何かするようなことはないでしょう。国益になりませんが、本人の将来にとってはそれが一番です」
今回、完全なるコネで政務秘書官に抜擢された翔太郎氏だが、要するに、いまやっていることは税金を使った社会科見学であり、観光旅行ということだ。歴代の政権では、1人だった政務秘書官を2人にしているところをみても翔太郎氏への期待の薄さが見て取れる。外国でアルマーニのネクタイを買うことが仕事とは実に羨ましい。今頃は、三越へ行って会食のお土産でも選んでいることだろう。
岸田首相は、これから行う大増税について、国民負担が増えるのではないかと、指摘を受けると、「経済全体の中で、負担感を払拭できるように政府として努力をしていく」としている。国民が今、求めているのは、「国民負担の軽減」であり、「負担感の軽減」ではないのである。本稿では詳細を割愛するが、どれだけ負担感を除いても、国民負担が増えれば家計に打撃を与え、経済成長を止めるのである(日銀や第一生命研究所の研究結果)。言葉遊びをやめろと怒っていたところに、今回の翔太郎氏の「観光旅行感」が高いという問題が噴出したのである。
今回の政府の一連の弁明は、簡単にいえば、「観光地を巡り、観光旅行感はあるかもしれないが、観光旅行ではない」ということだろう。であるならば、岸田政権の増税とは、「税金を上げ、国民負担感は少なくできるかもしれないが、増税である」ということだ。もし、岸田首相は、「感」であれば問題ないとするならば、「負担感の軽減」などと言わず、国民負担を実際に軽減すべきだ。