茂木健一郎「安倍さんの”志”だけは反対派でも認めざるを得ない」
「日本をよくしよう」安倍さんの努力に間違いはない
安倍晋三元首相が狙撃され亡くなるという衝撃的な事件の余波が収まらない。日本の憲政史上、数十年に一度という大事件。その背景を含めて、これからさまざまな検証が行われていくものと思われる。
安倍さんの政治、思想に対してはさまざまな意見があっただろう。民主主義国である以上、多様な意見がシェアされて、時にぶつかり合うのは当然なことである。
そんな中、安倍さんが、ご自身のお気持ちの中で、日本を良くしようと懸命に努めていらしたことだけは間違いないように思われる。その具体的な方法や方向性についてはいろいろな考え方があろうが、安倍さんの「志」だけは反対派でも認めざるを得ないのではないか。
どんなに志を持って奮闘しても、日本を良くすることは難しい。実際、日本はこれからどうしたら良くなるのだろう。バブル崩壊後、失われた10年と言われていたのが、いつの間にか20年、30年となった。少子高齢化などの状況があるものの、経済成長は他の先進諸国に比べるとかなり見劣りする。日本の物価は安いだとか、円が値下がりしている、人材の力が足りないなどの認識ももう当たり前のこととなった。
もちろん、政治は続いている。岸田文雄首相の「資産所得倍増計画」も、貯蓄から投資へより多くの資金を振り向けるという意味では歓迎すべきだが、副作用として、めぼしい投資先のない国内から海外に資金が流出して、結果として日本の国債の引受手がいなくなるなどの副作用が懸念されている。
結局、日本国内の生産性が上がり、企業の利益が増え、株価が上がり、人々の所得が増えて、日本が成長の軌道に乗るしか、回復への道筋はない。
一体、どうしたらそのようなことが可能なのだろうか? 折に触れ真剣に考えてみることは、日本を良くしたいと努力された安倍晋三さんの遺志にこたえることにもなるだろう。