「俺たちの安倍晋三が…」銃撃事件後に初めて統一教会との関係を知り、自我崩壊したネトウヨの運命
「ネトウヨ」たちには驚天動地の出来事だった安倍元総理銃撃事件
安倍元総理銃撃事件から数カ月が過ぎたが、安倍元総理を大きな思慕の対象としていたネット右翼(ネット保守とも。本稿ではネット右翼で統一)に衝撃を与え続けている。
銃撃事件前、「三たび安倍を」の声が強く、2021年の自民党総裁選で安倍氏の肝いりとされた高市早苗氏が第1回投票で敗れても、岸田の次は安倍という声も少なからずあった。清和会(安倍派)は自民党内で第一派閥の勢力を維持し続けており、安倍氏の年齢(当時67歳)から言っても再々登板は現実的と言えなくもなかったからである。トランプ前大統領の再出馬も取りざたされている米国状況がそれに拍車をかけた。
安倍氏が良くも悪くも強烈な個性の持ち主だったから、必然的に安倍氏の後継と目される人々の存在は霞んでいた。第二次安倍政権下で防衛大臣等を歴任した稲田朋美氏がそれとされたが、日報問題で事実上の更迭(17年7月)となったこと以上に、稲田氏が同性婚やLGBT権利擁護に理解を示す方向に転じたことが保守層に失望を与えたため、「安倍の後継」リストからは外れた。これに代わって期待を集めたのが前述の高市氏だったが、21年総裁選で決選投票に進めなかったことのダメージが大きく、今一歩、決め手を欠く状況である。実弟の岸信夫氏も健康不安の憶測が絶えない。このように清和会内の「安倍後継」が霞んだままあの事件が起きた。
「角福戦争、何それ?」…実は自民党の歴史を知らない無垢な「ネトウヨ」たち
事件後、自民党と旧統一教会の関係が大メディアで喧(かまびす)しくなるや、ネット右翼の多くはこの関係の矮小化を唱える人々の言説を支持するようになった。というのも、ネット右翼はそもそも2002年の日韓ワールドカップで日本メディアが韓国チームのラフプレーを大きく報じなかったことへの不信や怨嗟(えんさ)によって発生したもので、また2009~12年の民主党政権下における反民主党潮流で加速した性質を持つ。要するにネット右翼は21世紀における保守層であったから、冷戦時代の自民党史全般に疎い。