見捨てられたリベラル…なぜ中南米移民は共和党を支持するのか「テキサス州が米国の将来を決める」(みんかぶ特集「米国株の底値」)
今でも健在な熱狂的トランプ支持者たち。急進化するリベラル陣営。人口構成比率が6割を切り、マジョリティから転落寸前の白人たち。急増する不法入国者に不満を募らせるヒスパニックたち。BLM運動に向けられる賛否…。みんかぶプレミアム特集「米国株の底値」(全10回)の第3回は、分断しつつあると言われるアメリカ社会の “リアル” な姿を、前回に引き続き、国際政治アナリストの渡瀬裕哉さんが伝える。
目次
急速に変質しつつある民主党・共和党の二大政党
民主党は有色人種が支持する政党、共和党はWASPが支持する政党である、という偏見が再び大きく変わろうとしている。
実はこれまでも、米国では、政党支持と有色人種の関係は時代によって大きく変質してきている。南北戦争時代は黒人奴隷解放の政党であった共和党は、その後の歴史的変遷を経て公民権運動後には白人保守層を中心とする党に様変わりした。民主党は当初は黒人奴隷制度の擁護者であったが、近年では有色人種を包摂する寛容なリベラルという位置づけとなっている。米国の政党は極めてプラグマティックな組織であり、選挙戦略によってその支持層を総入れ替えすることすら平然と行うのだ。
そして、現在、そのような大きな選挙戦略のパラダイムの変化が大規模に起きつつある。
ニューディール政策や公民権運動以来、民主党は人種自体を選挙における重要なターゲットセグメントとして扱ってきた。特にアフリカ系住民の所得が総じて低かったこともあり、民主党が主張してきたリベラルな経済政策とアフリカ系住民のニーズは整合してきた。ニューディール政策の過程で作られた人種団体と労働組合の選挙マシーンは、絶大な動員力を発揮して1990年代半ばまで、民主党が下院で多数派として40年間の支配権を持つ原動力となった。