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“ポスト岸田”に小池東京都知事の名前も…森喜朗化する泥沼・岸田首相「自民党の救世主は誰か」アンチ岸田なら「小泉進次郎」一択だ

 衆院議員の欠員に伴う春の補欠選挙が、東京15区、島根1区、長崎3区の3つで実施される。4月16日告示、28日投開票となるが、政権与党を担う自民党には逆風が吹き続けている。あまりの厳しさに、東京15区ではまさかの自民党が推薦者も出さないという事態にまでなった。そうなると話題になってくるのが「岸田退陣だ」。安倍派亡き今、誰がイニシアチブをとるのか、次の総理は誰になるのか。作家で元プレジデント編集長の小倉健一氏が語るーー。

目次

「党員として恥ずかしい気持ちでいっぱい」

「選挙は大変厳しいものになる。これまで活動してきた中で、肌感覚で強く感じている」と、4月16日に公示された島根1区補選の第一声を放ったのは、劣勢が伝えられる自民党公認候補だ。「一時期は10ポイント以上の開きがあり大惨敗も覚悟していた。組織がフル回転し、知名度は上がってきた…」とそう話すのは、地元の自民党関係者だ。

 清和政策研究会(現・安倍派)の会長だった細田博之元衆議院議長の死去によって、島根1区補選は行われることになった「弔い合戦」であり、さらに、これまで島根の選挙区は自民党候補が独占してきた。ここまでの逆風は初めてだろう。

 岸田文雄首相が4月21日に島根県で行った「車座対話」では、裏金問題を念頭に「党員として恥ずかしい気持ちでいっぱい」と参加者から批判を浴びている。

「内閣支持率と自民党の支持率を合わせて50%切れば、政権は赤信号」という「青木の法則」に従えば、内閣支持率23%、自民党支持率28.4%(NHK)と、51.4%となる。民放や新聞の調査では併せて50%を切っているものもあり、もはや岸田政権は風前の灯となっている。

 衆議院選挙の補選は3選挙区で行われているが、他の補選は自民党は候補者すら立てられない「不戦敗」であり、もし、島根が負ければ「全敗」となって、政権は急速に求心力を失うことになる。

読売、菅義偉が推す「石破茂総理説」

 産経新聞(4月22日)の朝刊には、<岸田首相の自民党総裁再選に9割が否定的>という大きな見出しが踊った。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が4月20日、21日に行った世論調査で、<岸田文雄首相に「(自民党総裁任期が満了する)9月以降も続けてほしい」との回答は8・2%にとどまり、計9割が総裁再選に否定的だった>のだという。

 岸田首相が、補選で「全敗」すれば、解散もできないままに、9月の総裁選までいけば、再選されることはまずない。

 では、次の首相は誰になるのか。その首相は、一体何をする人物なのか。

 読売新聞(3月25日)に掲載された世論調査では、次の自民党総裁にふさわしい政治家は、石破茂元幹事長だった。

勝ち抜けるシナリオがあるとすれば、小泉進次郎

 石破氏を、今、党内で推しているのは菅義偉前首相だ。

 文藝春秋デジタル(4月9日)によれば、<菅に自ら再登板する気はないが、今はポスト岸田のキングメーカーの座を狙っている><難局を打開するには、最も国民受けする人物を担ぎ上げるしかない。さもなくば、自民党の下野も現実味を帯びかねない。岸田が追い込まれるほどに、世間で人気の高い者が優位になる。菅はそう思い描く。/「自民党が生きるか死ぬか。やはり石破、か」/今年2月には内輪の会合で菅の口から初めて石破茂の名前が出た>のだという。

 読売新聞の世論調査では、第2位が小泉進次郎氏、第4位が河野太郎氏、第6位が菅義偉氏と、菅氏自身と、菅氏に近い政治家が名を連ねている。

 ただ、党内で石破氏と河野氏は全くの不人気だ。石破氏は20人の派閥を維持することもできなかったし、河野氏が所属する麻生派は河野氏を総裁選でまじめに支えなかった。国民が直接投票できない自民党総裁選を勝ち抜こうとしたときに、勝ち抜けるシナリオがあるとすれば、小泉進次郎氏だろう。派閥の解消を菅氏とともに先導し、裏金問題でも厳しい処分をすべきだと主張を続けいてきた。

 結果的に中途半端なものになってしまったものの、ライドシェアの解禁を主張し、既得権益とも戦える姿勢を示した。神奈川県には大きなタクシー会社があり、代々の小泉ファミリーを支えてきたとされている。

「進次郎氏が環境大臣のときの有料のレジ袋導入などで資質を疑われる事態となった。本人は『自分は客寄せパンダだ』と割り切っているが、<誰の><何のための>客寄せパンダになるのかが問題だ」

 改革派的な政治行動を果敢にとれる利点がある一方で、過去には「保険料を徴収して、子育て支援に使う」という「こども保険」の導入における「客寄せパンダ」だった。今、国民から猛烈な批判を浴びている「子育て支援金」の原型である。さらには、脱原発と炭素税導入に積極的であり、莫大なエネルギーを使用する半導体製造にとって、明らかにネガティブだ。

今、最も総理に近いとされるのはこの人

 小石河連合とも称される、小泉、石破、河野の三氏の中で、一人選べというのであれば小泉進次郎一択なのだが、これからのAI時代に脱原発などという昭和めいた政策はさっさと捨てるべきだろう。

 選挙を介せば、反省して、これまでの政策を一切放棄できるのが、民主主義の良いところだ。経済成長には、国民負担の軽減と規制緩和が必要なことは、各種調査研究で明らかになっているのだから、いったん、整理して自己批判を含めた政策本などを出してみてはどうだろうか。客寄せパンダを演じすぎて、自分の政治家としての骨格を失ってはいないだろうか。

 さて、いま、もっとも、ポスト岸田の有料候補に名前がでているのが上川陽子外相だ。地下鉄サリン事件の犯人たちを、法務大臣時代に、次々と処刑台へ送り込んだことから、産経新聞(3月16日)のコラムでは「時事通信が先月配信した世論調査によれば、内閣支持率も政党支持率も20%を割ったままで、低迷から抜け出せない状態だ。これを立て直して新たな展開を生み出すのに、上川さんほど適した人材はいないように私には思える」「ひとりの日本人として、私は上川首相の誕生を切望している」などと絶賛され、リベラルな外交姿勢を持っているにもかかわず、保守受けがよい。また、首相になれば「初の女性」となることから、新鮮さも期待する声がある。

 しかし、ちょっと待ってほしい。

上川氏は岸田派であり、増税派である

 上川氏は岸田派であり、政策などもほぼ一緒だ。ほぼ一緒というより、実態からすれば、上川氏がつくりあげた政策を岸田首相が行なっていると言ってもいい。

 2007年、当時、内閣府特命担当大臣(少子化)だった上川氏は、内閣委員会で以下のような発言をしている。

「家族政策関連の支出ということでございますけれども、我が国のマクロ的な指数として、GDP比が0.75%ということでございます。アメリカは0.7ということでありますが、欧州の国々では、おおむねGDP比の二から3%の財政投入をしている。これはいずれも事業主の拠出も含む数字でございます」「我が国の少子化対策の、逆に言うと特徴というものを見てみますと、まだまだ質、量両面のサービスの基盤整備が不足している」

「手厚い家族政策を支える国民負担についての国民の皆さんからの応援、合意ということについても、これからさらに充実しなければいけない」

日本経済が上向くことなどファクトとしてありえない

 読んでお分かりだろうか。そう、現在の「異次元の少子化対策」とそれに伴う「子育て支援金(消費税0.8%相当の増税)」をつくりだしたのは上川氏なのである。

 これまで、子育て支援と少子化の関係について、研究がされてきたが、「子育て支援が人口動態の変化の軌跡を変えていない」(https://edition.cnn.com/2024/03/20/health/global-fertility-rates-lancet-study/index.html)のは、定説になっている。

 子育て支援の手厚いスウェーデンをはじめとする北欧でも、少子化は止まっておらず、そもそも移民が出生率を高めているだけという実態も明らかになった。子育て支援で出生率が上がることはない、つまり、完全に誤った政策なのである。

 同じ派閥から、首相がでることは、例えば、超低支持率だった森喜朗氏から小泉純一郎氏へとバトンが渡されたこともあった。岸田首相から上川氏という流れも、それに近いものがあるが、政策が全く違った「森→小泉」と、政策が全く同じ増税路線の「岸田→上川」では完全に違うシロモノだ。

 レジ袋やら、増税などの政策を、一切の反省もしない政治家によって、日本経済が上向くことなどファクトとしてありえない。

まさかの小池百合子総理説も

 そんな中で意外な人の「次の総理」の可能性を語る者もいる。

 1月の東京・八王子市長選挙で、政治とカネの問題もあり自民党の推薦候補が苦戦する中、小池百合子都知事が応援・支援に乗り出したところなんとか勝利を収められた影響で、自民党内で小池氏への再評価が進んだという。

 そんな中で日本テレビ政治部の竹内真デスクは「自民党内からは、『やはり小池さんは選挙に強い』という評判が立ったんです。そういう流れの中で、『4月の衆議院の補欠選挙で東京に小池さんが自ら立候補して、国政復帰を図るんじゃないか]という噂が流れたんです。ある自民党の議員は、『小池さんのセンは消えてない』と。『小池さんがもう一度トップを目指す可能性は消えてない』と言うんですね。そうはいっても、『小池都知事は自民党を出たし、どうするんだ』と聞くと、『そんな理屈は後からついてくるんだ』と。これは自民党らしいですけれど」(3月30日、ニュースNNN)と語る。

 竹内氏は、小池総理説の実現可能性について「本命ではない」として上で、以下のようにも解説する。

「特に、噂のようなところもあるので、確度が必ずしも高いわけではないです。ただ、一つ言えるのは、こういう噂や情報が出回るぐらい、自民党が苦しい、追い込まれた状況だということではあると思います」

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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