鬼の岸田、突然の「不出馬表明」はやっぱり「麻生太郎」が仕掛けていた…!梯子を外され計算“総崩れ”の茂木敏充に待つ辛すぎる未来
岸田文雄首相(自民党総裁)の後継を決める9月の自民党総裁選は大乱戦の模様だ。若手からベテランまで10人超が立候補を模索し、出馬に必要な20人の推薦人確保に奔走している。こうした中、自民党唯一の「派閥」を存続させた麻生太郎副総裁の動向に注目が集まっている。経済アナリストの佐藤健太氏は「岸田氏を事実上退陣に追い込んだと見る向きもあり、今度の総裁選は麻生氏サイドにとって逆風が吹きそうだ」と見るーー。
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野田聖子「こんなに出たかったのならば、もっと前から出れば良いのに」
「こんなに出たかったのならば、もっと前から出れば良いのにと思うが、それだけ自民党は派閥の圧力で多くの有能な人たちが手を挙げたくても挙げられない不自然な状況だったのだな、と改めて気がついた」。自らも出馬に意欲を見せる野田聖子元総務相は8月18日の講演で、今度の総裁選は派閥の否定から始まるとの考えを示した。
野田氏が発した言葉は意味深長なものと言える。自民党は派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題を受けて大逆風の中にある。岸田首相は自身が率いてきた「岸田派」(宏池会)の解散を宣言し、二階俊博元幹事長の「二階派」(志帥会)や最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)なども解消せざるを得なくなった。従来の派閥として存続するのは、麻生副総裁が牽引する「麻生派」(志公会、54人)だけだ。
“号砲”を鳴らしたのは、岸田氏とは距離がある非主流派の菅義偉前首相説
大派閥を率いた田中角栄元首相の「政治は数、数は力、力はカネ」という論理を出すまでもなく、自民党総裁選においては国会議員票の数がモノを言う。派閥は議員票をまとめることが力の源泉となり、その優劣によって事実上の宰相が誕生してきたのだ。
最大派閥を牽引した安倍晋三元首相が死去し、岸田政権は岸田派と麻生派に加え、茂木敏充幹事長の「茂木派」(平成研究会)による「3頭政治」で安定をみせてきた。だが、内閣支持率が超低空飛行を続け、「いま解散総選挙があれば下野もあり得る」(自民党中堅)との声が日増しに高まる中で「ポスト岸田」をめぐる動きは活発化していった。
その“号砲”を鳴らしたのは、岸田氏とは距離がある非主流派の菅義偉前首相との見方がもっぱらだ。菅前首相は6月23日に「文芸春秋」が公開したインターネット番組のインタビューで、「総理自身が派閥の問題を抱えているのに責任を取っていなかった」「責任について触れずに今日まできている、そのことに対しての今、不信感というのが一般国民は多いと思う」と痛烈に批判。次期総裁選においては「政治の刷新感」がキーワードになると発し、事実上の交代を要求した。
「ポスト菅」を決める総裁選においては岸田氏が事実上の菅批判を繰り返した
なぜ菅前首相が岸田首相と距離を置くのかは説明が必要だろう。安倍政権を受け継いだ菅内閣は地方選挙での敗北や支持率続落によって約1年で終幕したのだが、菅氏は退陣直前まで内閣改造・党役員人事による政権浮揚を模索していた。だが、総選挙や総裁選を控える中での人事断行には主要派閥から難色を示され、もはや打つ手なしとなった。
菅氏が退陣を正式に党側に伝えたのは2021年9月3日の党臨時役員会で、同17日告示、同29日投開票の自民党総裁選に出馬しない意向を示した。派閥に属していない菅氏の周辺は「最後は麻生派など主要派閥が協力してくれなかった。無派閥宰相の限界」とこぼしていたものだ。
そして、「ポスト菅」を決める総裁選においては岸田氏が事実上の菅批判を繰り返した。「政治の根幹である国民の信頼が大きく崩れ、わが国の民主主義が危機に瀕している」などと菅政権を批判し、寛容で丁寧な政治を自らが行うと岸田氏は繰り返したのだ。
菅前首相にとっては「口ではいくらでも言える」という思いがあったのだろう。首相に就けば派閥を抜けることが恒例だったにもかかわらず、岸田氏は派閥会長職にとどまり続けた。裏金問題を受けて全ての派閥を解消するはずが麻生派だけは存続した。国民政党として政権を維持するならば、岸田氏も麻生氏も庶民感覚とはかけ離れている。その当然とも言える思いは消えることがなかったに違いない。