「移住婚女性に60万円」発表3日で撤回に国民唖然…一方婚活ライターは「60万でもスワイプの手は止まる」と指摘
8月30日、女性が結婚のために地方に移住する「移住婚」を支援する方針について、自見英子地方創生担当大臣は、世論の反発などを受け撤回すると表明した。今回検討されていた新制度は、未婚女性が結婚で移住すれば、就業・起業しなくても60万円支給するというものだったが……。今回の移住婚制度に関しての問題点を、エッセイストのトイアンナ氏が解説するーー。
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「地方移住で60万円」の制度には何が欠けていたのか
東京都へ在住、または通勤している女性が結婚をきっかけに地方へ移住するならば、60万円を支給する。政府から出た新制度案は多くの批判を受け、事実上の撤回に追い込まれた。
確かに、「未婚女性だけ、さらに就業しない場合でもお金がもらえる」というのは、「お金で人を動かそうとしている」「ただのばらまき政策」といった反発も仕方ない制度である。こんな提案がメディアにリークするまで、コンプライアンス部門で叱られなかったことのほうが驚きだ。
一方で、地方の現状を鑑みると「そこまでして未婚女性が欲しい」現実はわからないでもない。
未婚女性が消えていく地方
2020年の国勢調査によると、東京外に住む15~49歳の女性は910万人。男性の1,111万人と比べて、かなりの差がある。特に、進学・就職で東京に出てきた女性は、地元に戻らない傾向があるという。
筆者もまた、進学をきっかけに関東圏へ引っ越し、そのまま帰らなかった人間だ。「なぜ、東京から地元へ戻らなかったのか」といわれると、理由は多数ある。
まず、地元である愛知ではトヨタ系列以外に女性の総合職勤務が見込まれる仕事が限られること。親との不仲。中学の友人も多数上京しており、都内で同窓会が開ける規模になっていること。虫が苦手すぎて、蝶すら見るだけで逃げ出したい性格。「結婚相手」という条件を除いてもこれくらい理由があるのだから、私が愛知県へ戻る可能性はほとんどないといえる。
私のように総合職志望でなくとも、「自分がなりたい仕事に就きたい」と考えたときに、都内なら選択肢が多いのは、自明の理であろう。ネイリスト、デザイナー、アイドル、弁理士、公認会計士。どれも東京のほうが働き口は見つかりやすい。都内には人口の数だけ仕事がある。
不景気の就職活動のような激戦を勝ち抜かねば、男性は結婚できない愛知
その傾向は、フリーランスでも変わらない。私がかつてフリーライターになったときは、たとえば地方に安く住んで、都内の案件をもらえば住みやすいだろうと考えたこともある。しかし、実際には都内の大型案件が欲しければ都内の法人へ挨拶で赴く必要があるのは今も昔も同じである。丸の内の案件は、丸の内に行かねばないのだ。
こういった事情をすべてひっくるめても、「都内がいい」という女性は、多くいるはずである。ただ、この「都内がいい」という意思が、ゆらぐこともある。それが、結婚である。
都内には男性も多くいる。だが、その男性と結婚できるとは限らない。なぜなら、都内には賢い美人など、いくらでもいるからだ。さらに育ちがよく、性格も温厚な人までいる。地方には「そもそも男性がいない」という声がありつつも、都内の婚活はシビアだ。