小泉悠「ゼレンスキーはトランプ当選でワンチャンあると思っている」…ウクライナ戦争新局面!プーチンが陰謀論に陥った理由と「真の目的」
米大統領選をめぐっては、トランプ氏とハリス副大統領が熾烈な争いを展開している。一般的には「トランプが当選した場合、ウクライナにとっては不利な状況になる」と言われているが、東京大学先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠氏は「一概にそうとは言えない」と話す。米大統領選がウクライナ戦争にどのような影響を及ぼすのか、小泉氏に聞いた。みんかぶプレミアム特集「世界・日本経済『大激変』」第7回。
目次
「トランプ当選=ウクライナを見捨てる」は誤り
11月に行われる米大統領選において、トランプ氏とハリス副大統領のどちらが大統領になるのか。これはロシアとウクライナにとっても大きな関心事の一つです。いまは「どちらが大統領になったほうが自国の利益につながるのか」を両国とも入念にシミュレーションしていることでしょう。
そもそもロシアもウクライナも前提として、両氏について「自分たちがまったく制御できない存在ではない」と思っているはずです。台風などの自然災害とは違って、政治家はこちらから働きかけることである程度はそのコース(進路)を変えることができる存在です。
しかし、トランプの特異性は、そもそも彼のコースがどこを向いているのかがよくわからない点にある。「トランプが当選したらウクライナを見捨てる」という議論があり、それも可能性の一つではあるのですが、そうでない可能性もまた捨てきれないのが難しいところです。
2016年の米大統領選では、ロシアはサイバー攻撃やSNSを使ったプロパガンダなどあらゆる手段を尽くし、トランプを当選させるべく介入しました。いわゆる「ロシアゲート」です。この選挙戦でトランプは、「ロシアと和解する」「北大西洋条約機構(NATO)から脱退する」など、プーチンに耳障りのいい主張を声高に叫びました。
ですが、大統領になったトランプは親露路線を推し進めたわけでもなければ、NATOから脱退したわけでもない。結局トランプは、「大統領選に勝つため」の施策を叫んでいるにすぎず、実際に“アメリカ合衆国の大統領”として着手することとは乖離があるのです。