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こわ…増税王子・小泉進次郎「年金は80歳からもらえばいい」健康寿命ギリギリまで働くことを前提とした制度に国民絶望。世襲の本領「選挙前のバラマキ万歳」政策

 自民党総裁選が幕を明け、小泉進次郎議員に注目が集まっている。しかし、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は「小泉進次郎が総理になっても増税路線が継続するだけ」と警鐘をならす。日本の国民負担率は45%・一体、小泉氏は何を企てていくのか。総裁選緊急企画「増税の王子様」全3回。第2回は増税の王子様、小泉氏の「怖すぎる野望」が何かを解説するーー。

目次

「受給開始年齢は80歳でもいいのではないかと考えている」

「受給開始年齢は80歳でもいいのではないかと考えている」。これは小泉進次郎氏が2018年に国策研究会会員懇談会で演説した際の言葉だ。

 国策研究会は昭和8年(1933年)に貴族院議員の大蔵公望らが設立した由緒正しい民間研究団体であり、戦後も政財界の要人の交流の場として機能し、2013年に第2次安倍内閣の下で国策研究会は公益財団法人認可を受けている。つまり、講演当日の小泉進次郎氏は、日本のエスタブリッシュメント向けの話をしたと理解するべきであろう。

 小泉進次郎氏の面白い感覚のズレは、「人生百年時代」の到来とする同演説内容を自らのブログにアップして公開していることだ。そこでは、ごく一部の高齢でも社会で活躍している人々を取り上げて、74歳までを労働人口として再定義し、年金受給年齢を引き上げても良い、年金受給年齢を柔軟化せよ、という主張が展開されている。

健康寿命ギリギリまで働くことを前提とした制度

 小泉進次郎氏が同演説で主張するように80歳までの好きな年齢で年金受給開始を選択できるようにした場合、一見すると小泉氏の主張は現役世代の負担を軽減する制度変更を主張しているようにも思える。しかし、実際には公的保険制度による現役世代搾取を継続し、年金受給年齢の更なる繰り下げ幅を拡大すると同時に早期受け取り額を大幅に減額する措置と合わせるなら、新手の詐欺的制度の提案のようなものにもなり得る。

 年金早期受給額の減額幅を拡大した上で、健康寿命まで本当に働く人が増加する場合、年金を支払い損どころか、全く受け取れない人も増加するだろう。現在の健康寿命は男性が70代前半、女性が75歳前後であるが、小泉氏が言うように健康寿命ギリギリまで働くことを前提とした制度改変をしていくなら、実際の寿命までの僅か数年しか年金を受給できずに死ぬことになる。仮に健康寿命まで雀の涙の年金しか渡さないよう制度変更するなら、公的年金制度はただの奴隷制度のようなものになる。

世代交代というイメージとはほど遠く、実に古臭い自民党の発想

 そのため、小泉進次郎氏のような議論をするなら、そもそも政府の財政上の都合や為政者の気分によって変更される公的年金への強制加入を改め、公的年金を任意加入制に変更する議論も併せて行うことが筋であろう。現状では政府に年金保険料を支払ったとしても、将来的に受給に関する権利が著しく侵害される可能性があるからだ。

 なので民間の保険や積立に対する税制優遇を付加した貯蓄口座方式に移行すれば、国民にとって中途取り崩しも含めた利便性も高い制度を構築することができる。世代交代した若い政治家が担うべき役割は既に破綻している年金制度の実態を明らかにし、その限界を説くことが真摯な姿勢である。小泉進次郎氏のように現役世代の定義や受給年齢後ろ倒しを図る姑息な議論は古い自民党の誤魔化しの議論そのものだ。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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