悪夢のような石破政権…丸川珠代「どうかお助けください」に“むしろ国民を助けろ”の声「非公認議員側に2000万円」カネで票を買う倫理観

 日本各地でヒートアップしている衆院選。しかし、そもそもなぜいま我々は税金を使って選挙をしなくてはいけないのだろう。発足したばかりの石破政権はすぐに解散にうってでたが、その理由は「発足直後の支持率が高いうちに」というのが本音で、自民党の都合ばかりを優先した。これまで党内批判を繰り返して来た石破首相らしからぬ行動に幻滅した国民も多いだろう。

 そんな自分都合の解散をしておきながら、情勢は厳しい。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件に関与した丸川珠代元五輪担当相が選挙活動中に「どうかお助けください」と〝涙の訴え〟をしたが、「助けてほしいのは国民の方だ!」と批判がやまない。元経済誌プレジデントの編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

目次

石破首相「緊急通達」の空虚な言葉

 石破茂首相が断末魔のような叫びをあげた。それが「緊急通達」という題名の、石破茂首相の檄文である。この檄文にはこう書いてある。

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緊急通達

選挙は、いま重大な局面を迎えている。後半戦に至るも全国各地において激戦が続いているが、 この衆院選は、 あらためて言うまでもなく『政権選択』 選挙である。

引き続き『自民党と公明党による政権を継続して、経済成長をはかり国民の暮らしを向上させる』のか、それとも『具体的な政権構想のない無責任な野党の政権を選んで、経済と国民生活を混乱に陥らせる』のか、極めて重大な岐路に立っている。

わが党の底力を発揮するのは、今この時である。

全党一丸となって国民のために決戦に勝利しよう。この後半戦、 私も死にもの狂いで全国を駆け回る。各位におかれても必ず勝利を掴み取るため全力を尽くしてご奮闘いただくようお願いしたい。

令和6年10月21日 自由民主党 総裁 石破茂

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 この檄文を読んで、果たして「その通りだ!」と心から賛同した人がどれほどいただろうか。私には、空虚な言葉が羅列されているだけで、まったく意味をなさない文章に感じられた。むしろ、大東亜戦争末期に『非国民』』(実際は自分より弱い人全般)を叱咤するために使われた「貴様には大和魂が足りない」という言葉の方が、始めから理に適わない表現であった分、反論するスキを与えなかったのではないかと感じた。

 例えば、この石破首相の檄文だが、今回の衆院選挙は「政権選択」選挙ではないという現実がある。野党は政権を奪取する意図を持っておらず、与党内でもそのように考えている者はほとんどいない。理由は明白で、参院では自公が圧倒的な勢力を維持しており、仮に自公が過半数を割ったとしても、野党第一党である立憲民主党が議会第一勢力になる見込みはほとんどない。

実際に経済と国民生活を混乱させている

 結果として、自公政権は継続されるのが既定路線だと言える。そして、自公が過半数を割った場合でも、どの政党と連立を組むかは選挙では決められないため、有権者にとって「政権選択」という意識はさらに希薄なものとなっている。

 石破首相は<具体的な政権構想のない無責任な野党>と批判するが、自民党自身も過半数を割った後の具体的な政権構想は示していない。また、<経済と国民生活を混乱に陥らせる>と言いながら、実際に経済と国民生活を混乱させているのは、他ならぬ石破首相自身だ。

 総裁選時に掲げていた主要政策も、ことごとく市場に嫌われたため放棄し、結局は岸田政権の路線を継承するという形に落ち着いた。さらに、外交政策の柱であった<アジア版NATO>も、インドをはじめとするアジア諸国からは冷笑と敬遠を受け、いつの間にかその話題は消えてしまった。岸田前首相が掲げた「新しい資本主義」も、その名残りだけが残り、最終的には中身のない、得体の知れないものとなってしまったが、石破首相に至っては、何一つ、ビジョンが名前すら残っていない。首相として何を目指し、何を成し遂げようとしているのか、国民に伝わるものは全くないのだ。選挙期間中のため、党内からの批判は表面化していないが、選挙が終われば、自民党内で積もった不満が石破首相に向けられるのは避けられないだろう。

石破ができることは現金給付と他党批判

 現時点で、何も残っていない石破首相が取れる手段は二つしかない。ひとつは、現金給付やばら撒き政策で自民党への支持を引き留めること。そしてもうひとつは、他党への批判だ。他党への批判は、先述の檄文にも見られるように<具体的な政権構想のない無責任な野党>という攻撃だが、これこそが石破首相が突如開始した「民主党政権批判」につながっている。かつて安倍晋三元首相が民主党政権の失策を揶揄した際、石破首相は「国民が求めているのは民主党批判ではない」と批判していたが、今では自らその道を辿っている。政策を失い、訴えるものがなくなった今、他党を攻撃する以外に選択肢がなくなったのだ。

 石破首相は10月22日の応援演説で「『悪夢のような民主党政権』と言うが、あの時ほど野党で申し訳ないと思ったことはない」と述べ、街頭演説では「『あんな人たち』にこの国を任せるわけにはいかない」と強調した。これらはまるで大東亜戦争末期に「出てこいミニッツ、マッカーサー。出てくりゃ地獄へ逆落とし」などと敵将を罵倒したフレーズを彷彿とさせる、無意味で攻撃的、妄想めいた選挙演説であった。

石破首相の倫理観の欠如

 石破首相には、未来を描く力も、現在を冷静に分析する能力もない。ただ一つ、首相の座に留まりたいという執念だけが見える。彼が言う<死にもの狂いで全国を駆け回る>という言葉通りの行動を取れば取るほど、選挙戦が進むほどに、内閣支持率も自民党支持率も低下している現状を考えると、国民にとっての本当の悪夢は、石破首相の続投なのだと確信せざるを得ない。

 他にも、石破首相の倫理観の欠如について挙げれば、きりがないが、例えば低所得者向けの給付金制度に関する問題がある。この給付金は、石破首相が衆院解散を決定した直後の10月4日に閣議で指示したものだが、要するに低所得者、特に投票率が高い高齢者層をターゲットにして、税金を使って票を買おうとする行為であると言っても過言ではない。

 選挙直前にこうした給付金を発表するのは、民主主義の根幹を揺るがす行為であることは言うまでもない。しかし、選挙戦略としては一定の効果があることもまた事実だ。例えば、「Familias en Acción(FA)」プログラムに関する研究では、選挙直前の給付金制度を通じて投票率が1.6%から2.5%上昇し、特に与党候補への支持が約1.5%増加したことが確認されている。つまり、こうした現金給付が低所得者層の投票行動に直接的な影響を与え、与党の支持を強化する結果をもたらすことは過去の実例からも明らかだ。この事実には呆れるばかりだが、さらに驚くべきことに、石破首相はこれに味を占めたのか、非公認にしたはずの自民党候補にまで活動費として2000万円を支給しているのだ。

非公認候補側にまで巨額の資金を投じる

 自民党は、余剰の政党交付金を湯水のごとくばら撒いているようだが、非公認の候補の支部にまで巨額の資金を投じるとは、もはや倫理観の欠如を通り越して恐怖すら覚えるほどである。私自身、応援したいと思っていた自民党非公認候補もいたのだが、裏で2000万円もの資金を受け取っていると知ってしまった以上、もはや支持する気も失せてしまった。「自民党としてケジメをつける」と国民に約束しておきながら、結局は何がしたいのか、全く理解に苦しむばかりだ。

 このように、すべてをなし崩しにしてしまう石破政権には、心の底から倫理観の欠如を軽蔑せざるを得ない。仮に自民党が過半数を獲得したとしても、この政権が長続きすることはないだろうし、そもそも長続きさせてはいけない政権であることは明白だ。

就任以来、言行不一致で知られる石破茂首相

 就任以来、言行不一致で知られる石破茂首相。現在の選挙情勢では、自民党単独で過半数を維持することが難しいと伝えられており、総辞職の可能性が現実味を帯びてきている。この状況下で、有権者がどのような判断を下すかが最大の焦点となっている。

 石破首相は、衆院選の見通しに関し「非常に厳しいことは認識している。何とか全力を尽くし、自民、公明で過半数をいただければありがたい」(10月14日)と述べた。しかし、ここまで自らが総裁選で掲げてきた主張を次々と撤回していく政治家は近年では珍しいと言わざるを得ない。先述の通り、総裁選中に提唱した日米地位協定の改定や「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」構想は、すでに事実上封印されている。さらに、前向きだったはずの選択的夫婦別姓や富裕層への課税強化についても、その姿勢は明らかに消極的となっている。

 かつては迷走する民主党政権を叱責していた石破首相だが、今回は自らが得意としてきた分野で主要政策を放棄せざるを得ない事態に直面している。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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