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アクティビストの重心が欧州からアジアへ…法的には強いのに実質的には弱い日本の株主権限

「2025年もアクティビスト(物言う株主)は活発に動くだろう。企業も受け身ではなく『言うべきことは言い返す』スタンスに転じるべきだ。アクティビストの影響力を増幅している面もあった株主の法的な諸権利を見直す機運もある。ルールメークも含め、企業がもっと声をあげていい」日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏は、”強くて弱い日本の株主”についてこう物申す。その理由をくわしく解説していくーー。

目次

アクティビズムの重心は欧州からアジアへ

 2024年はアジア、特に日本のアクティビズムにとって歴史的な年となった。バークレイズの調査によれば、昨年1年間にアクティビストが全世界で起こした提案や働きかけなどのキャンペーン数は243件と23年比で6%増え、過去10年では18年の249件に次ぐ多さだった。地域別に見ると、アクティビズムの本家米国が115件と全体の47%をしめたが、次いで多いのは66件、27%のアジア太平洋地区。48件、19%の欧州を上回った。前年はアジア太平洋が36件、16%、欧州が65件、28%だったから、米国外のアクティビズムの重心が欧州からアジアへと東進していることが分かる。

 特に特筆すべき国が日本だ。66件の総キャンペーンの77%、51件が日本で起きている。23年の14件から3・6倍増と主要国・地域一のなかで変化率の大きさが際立っている。

“アクティビスト大国”韓国が停滞

 一方、アジア第2位のアクティビスト大国である韓国は23年の15件から9件に減少。韓国政府が発表した「市場振興策」が期待外れに終わり、国内外のアクティビストの活動が停滞気味だったことが影響している。さらに、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の戒厳令に端を発する政治的混乱は長期化するとみられ、アジアの中でソウルへの投資を検討していた米国アクティビストが対象を日本市場に切り替えることも考えられる。

 2000年代初頭に日本市場で暴れた米スティール・パートナーズまで再上陸を考えているという報道もあった。そうした観測が真実味を帯びるひとつの理由は、アクティビズムのアジア、就中、日本への傾斜という潮流だ。

 株式の非公開化を含むM&A(合併・買収)にもアクティビストの影響を強く受けたものが増えた。対象企業の取締役会には相当の覚悟がいる。

反論する力が足りなかった東芝…経営は揺らぎ続けた

 東芝の例を思い出したい。昨年12月に株式非公開化から1年余りが経過。2017年の増資で経営に影響力を持ったアクティビスト(物言う株主)たちに、経営は揺さぶられ続けた。増資を引き受けた投資家のリストを見るだけで、名門企業にその後起きうることが漠然とは予測できた。「東芝は実に物わかりがよかった」。東芝の増資を引き受けたあるアクティビスト幹部の弁だ。聞けば複雑な思いに駆られる関係者も少なくあるまい。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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