あなたは永田町の住人になってしまったのか…石破首相に問う、変節とSNS規制「政権に都合の悪い情報は潰すべき?」

令和7年(2025年)1月8日、NHK「首相動静」の表記によれば、<16:29 ネットメディア「みんかぶマガジン」のインタビュー(~17:02)>に、石破茂首相へのインタビューを行った。インタビューは、SNS規制、地方創生、減税、経済政策など国政の主要課題について行われた。なお、掲載にあたって読みやすさや話題のまとまりを重視して、順序を入れ替えた部分がある。今回は「SNS規制」について。(聞き手は、鈴木聖也みんかぶ編集長、小倉健一)全5回の第1回。
目次
SNSは規制されるのか
政府はSNS規制を進めようとしているようだ。選挙中にSNS上で真偽不明の情報が拡散し、選挙結果に影響を与えていることが背景にあるとされる。ただし、表現の自由の観点から、オールドメディアも含めて、あらゆる報道への規制には慎重であるべきだと考えられる。根本にある課題は「間違った情報」と「偏った情報」の整理である。間違った情報に対しては当事者が迅速に訂正する仕組みが求められる。一方、「偏った情報」については「誰にとって偏っているのか」という視点が重要だ。ある事象について異なる見解があるのは当然であり、「偏り」を規制対象に含めると、政府にとって不都合な情報が表に出にくくなる。
選挙期間中のSNS広告収益を止める案もあるが、公平性を確保するならオールドメディアの収益も同様に停止する必要があるといえる。SNS規制がどのような影響を持つのか、表現の自由や公平性にどのように配慮するのか。これらの課題について石破首相に見解を尋ねた。
ーーかつて石破総理の演説に立ち会った際、内容に引き込まれ、言葉の力を強く感じたことがある。同じ感覚を、最近の総裁選での演説を聞いた際にも味わった。心がジーンと来るような思いがした。総理は言葉に非常に大きな力を持つ政治家だと感じている。
石破茂総理大臣
政治家にとって言葉は命だと思っている。言葉を通じて政策を伝え、人々の心に届くようにするのが仕事だ。
ーーご自身でよく見るネットメディアはあるのか。
石破茂総理大臣
あまり見ない。見始めると辛くなることもあるし(笑)……。
ーーネットメディアを見る時間を自分で制限しているということか。
石破茂総理大臣
そういうわけではないが、時間がないのが一番の理由だ。日々の業務が忙しく、個人的にネットメディアをじっくり見る余裕がない。
SNSでは真偽不明な情報が流れる
ーーネットメディアやSNSの台頭により、新聞やテレビがオールドメディアと呼ばれることが増えている。最近では、兵庫県知事選や都知事選挙における、いわゆる「石丸現象」のように、SNSを活用した政治活動が目立ってきた印象がある。政治環境や選挙の在り方に変化を感じるが、石破総理は選挙や政治におけるSNSの役割についてどのように捉えているか。
石破茂総理大臣
SNSは、政治や経済、選挙などあらゆる分野に影響を与える存在だと感じている。SNSでは、大手メディアやオールドメディアが発信しない多様な情報が流れる。これは大きな可能性を秘めている一方で、真実と虚偽が入り混じった状況を生み出している。
兵庫県知事選挙では、大手メディアが予測しなかった結果が現れた。その結果が多くの人々に影響を与え、派生的に広がったことは興味深い。ただ、その情報が本当に正確であったのか、あるいは誤りが含まれていたのかを判断するのは難しい。こうした現象を見ると、真実と嘘を見極める能力が社会全体で十分に高まっていないことを痛感する。
正確な情報を見極められる仕組みが必要
ーーSNSでは、発信者側が自由に情報を投稿できるが、その自由には課題もあるのか。
石破茂総理大臣
言論の自由や表現の自由は非常に大切な価値だ。しかし、どんな情報でも無制限に発信できる状況が本当に良いのかという疑問もある。メディアを通じて流れる情報が真実か嘘かを見分けることは常に難しい課題だった。SNSが登場する以前から、こうした問題は存在していた。
SNSが普及したことで、情報の拡散速度や影響力はさらに大きくなった。これにより、不正確な情報が広がり、それによって世の中が変わってしまうことをどう防ぐかが大きなテーマだと考えている。表現の自由を最大限に尊重しつつ、正確な情報を見極める仕組みを社会全体で構築する必要がある。これは選挙だけではなく、政治、経済や他の分野においても非常に重要な課題だ。
SNSにおいては消費者保護の観点が必要だ
ーーSNS規制について、総理はどのように考えているか。規制が必要だとお考えか。
石破茂総理大臣
規制という言葉の定義にもよるが、私は消費者保護の観点から取り組むべきだと考える。情報が正確に国民に伝わる仕組みを整えることが重要だ。これを「規制」と呼ぶかどうかは別問題だが、情報統制と捉えられるような手法は避けなければならない。情報の自由な流通を妨げることなく、正確な情報が広がる仕組みを作ることが本質だと思う。これは、消費者が誤った情報に惑わされないようにするための保護策に近い考え方だ。
石破総理はなぜ“変節”してしまったのか
ーー総裁選の前、石破総理は「次の総理にふさわしい人物」として多くの支持を得ていた。しかし、選挙で敗北した後、発言やスタンスが変化し、石破総理は「永田町の住人」になってしまったように見える。特に、以前はサブカルチャー的な分野やラジオ、週刊誌などに積極的に出演し、マイノリティーの声や国民一人ひとりの意見を積み上げてきた印象があった。それに比べ、現在は永田町の論理に縛られ、「やりたいけれど難しい」という言い訳に終始している姿勢が垣間見える。SNSについても、かつてはもっと寄り添う姿勢が強かったのではないか。最近の自民党から出るのは、SNSへの規制の話ばかりとなり、ネットメディアやSNSの意見に寄り添う姿勢が弱まっているように感じる。SNSは大手メディアと比べてクオリティが低い部分も一部あるのだろうが、それでもその特性を重視し、国民に寄り添ってきた石破総理の姿勢が、総裁選を機に変わったようにも見える。石破総理は、あるメディアのインタビューに対して、夜遅くまで電話対応に追われていると述べていたが、石破総理へ電話をかけてくるのは、「永田町の住人」たちなのではないか。総裁選を機に、かつての寄り添う姿勢から現在のようなスタンスに変化した理由や、今後どのような姿勢で国民と向き合おうとしているのか、立場の変化についてどのように考えているかを伺いたい。