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ちゃんと戦略はあるのか…トランプー石破首脳会談「窮地日本に残された最後の切り札」を凄腕政治アナリストが解説「我が国以上に相応しい存在ない」

(c) AdobeStock

 石破茂首相と米ドナルド・トランプ大統領がついに対談する。大統領選でトランプ氏の勝利が決まって以降、石破氏はなかなか直接会うことが叶わなかった。その前に安倍昭恵氏がトランプ夫妻と会うなどもはや総理の面目丸つぶれだった。しかし、トランプ政権が「日本軽視」していることはいわずもがな。まともに交渉できるのか、不安に思う国民も多いだろう。そんな中で早稲田大学招聘研究員で国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は石破氏が実は持っていた「切り札」の存在を語る。それは「アラスカ大開発だ」。共和党に絶大なコネクションを持ち、多くの識者がトランプ当選を否定した2016年大統領選で見事予測を的中させた渡瀬氏が、じっくり解説するーー。

目次

日本とアメリカが運命共同体になれる可能性

  トランプ大統領は1月20日就任早々にアラスカの資源開発に関する大統領令に署名した。同大統領令ではアラスカに眠るエネルギーや鉱物などの膨大な天然資源を開発し、その可能性を解放することが求められている。

 左派勢力に支配されていたバイデン前政権は、生物多様性や気候変動などの観点からアラスカ開発に制約をかけてきており、結果として米国が持つエネルギー資源活用を阻害し、西側諸国の国家安全保障を毀損してきた。

 トランプ大統領はアラスカ産業開発輸出公社の開発契約の再開、野生動物保護区での開発等を実施するとともに、アラスカ国家石油保留地での開発規制を削除することを決定した。このような土地活用政策の見直しは、同地域の地域経済活性化に資するものだとも言えよう。

 そして、このアラスカ開発は日本政府にとって対トランプ交渉の切り札となる可能性がある。仮に、日本が国家プロジェクトとしてアラスカ開発に全面協力姿勢を示すことになれば、トランプ政権、そして日本は切っても切れない、エネルギー安全保障を介した運命共同体になるからだ。

 日本はエネルギー資源を持たず、その化石燃料輸入先の中東依存は90%を優に超えている。万が一、中東で大乱が発生した場合、日本経済の息の根は一発で止まってしまうのだ。中東に代わる資源輸入先として考慮されてきたロシアの政治的なリスクも極めて高く、日本としては同国を安定的な化石燃料供給元として捉えることはできない。一方、グリーン関連のインフラは最終製品及びレアアース等の鉱物資源を中国に依存しており、エネルギー安全保障の観点から全くアテになるものではない。

日本以上に相応しい存在は地球上にはない

 米国は第一次トランプ政権の政策によってエネルギーの純輸出国に変質している。当たり前であるが、日本にとっては同盟国である米国からのエネルギー資源輸入は他地域からの輸入と比べて遥かに信頼性が高い。たしかに、日本はLNGの確保に関しては既に十分な量を確保しているものの、上述の通り、その調達先は何時でも政情不安に陥る可能性が高い場所である。したがって、日本にとっては米国ほど妥当なエネルギー輸入元は存在していないと言えよう。トランプ政権はエネルギー輸出を国是としており、トランプ政権が志向する方向性と日本のエネルギー安全保障政策の強化はWin-Winの関係を構築できる。

 トランプ政権がアラスカ開発で必要としているものは、エネルギー資源等の輸出先と開発投資だ。上述の通り、同エネルギーの輸出先として日本以上に相応しい存在は地球上にはない。あえて言うなら、日本の他には中国があるが、米国は米本土への中国資本によるエネルギー開発は受け入れないだろう。したがって、日本は同地域からの資源輸入先として手を上げることによって、トランプ政権に多大な貸しを作ることが可能だ。

幾つかのハードルがある

 ただし、積極的な開発投資に関しては幾つかのハードルがある。

 アラスカ開発のリスクとして頻繁に指摘されることは、米国の政策の安定性だ。将来的に民主党の大統領が誕生した場合、アラスカ開発が再び凍結されてしまう可能性はゼロではないからだ。しかし、この点についてクリアする方法はある。それは大統領令だけでなく、連邦議会の法律策定による後押しを得ることだ。現在、連邦上院では共和党支配が2030年代半ばまでは続く選挙情勢となっている。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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