不祥事がノンストップに出るわ出るわ!石橋貴明氏、青井実氏…フジテレビは本当に再発防止できるのか「栄華を誇っていたものは衰退していく」

(c) AdobeStock

 オールドメディアから人材流出が続いている。目立つのはテレビ業界、それもフジテレビだ。かつては「民放の雄」として就職活動する学生からは羨望の眼差しを向けられたが、昨年末に元タレント・中居正広氏の女性トラブルが発覚。第三者委員会から人権や組織風土、ガバナンスの問題が指摘され、優秀な社員たちがお台場(本社)から去っている。経済アナリストの佐藤健太氏は「フジが解体的出直しを真剣に遂行できなければ、国民やスポンサーが今後も見放し続けるだろう」と見る。はたして、オールドメディアは激動の時代に生き残っていけるのか――。

目次

栄華を誇っていたものも衰退していく

 インターネットやSNSの台頭、そしてAI(人工知能)による変革を眺めると平家物語でも有名な祇園精舎の「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」が頭をよぎる。一連のフジテレビ問題を受けて、40年以上も事実上のトップに君臨した日枝久氏は権勢が失われ、「民放の雄」といわれたフジはスポンサー離れが止まらないままだ。もちろん、ここで平家物語の名文を持ち出すのは違うのかもしれないが、やはり栄華を誇っていたものも衰退していくということだろう。

 団塊ジュニア世代、就職氷河期に遭遇した人々は「マスメディア」に入社することの難しさがお分かりのはずだ。大学生の人気就職先として知られ、入社試験の時期が早いこともあって高い倍率を示してきた。華やかさ、高収入という面も魅力的だったに違いない。今も人気であることに違いはないものの、決定的に異なるのはかつての勢いを失い、早期に退職する人々が見られることだ。それはメディア業界に限らず、多くの企業が経験しているとはいえ、テレビや新聞といったオールドメディアは異様に映る。

 テレビ業界では近年、名物プロデューサーやディレクターらの退社が目立ってきた。さらにテレビの「顔」であるアナウンサーの流出も顕著と言える。日本テレビの藤井貴彦アナや上重聡アナは2024年3月いっぱいでフリーに転身。TBSは小倉弘子アナが昨年末に辞め、宇内梨沙アナや加藤シルビアアナも続いた。テレビ朝日は2022年に富川悠太アナが退社し、昨年末には加藤真輝子アナが年内いっぱいで辞めることが報じられた。

 もちろん、退職理由は様々だ。ただ、アナウンサーに限らず制作サイドなどを含めれば相当の数に上っていることだろう。特にフジテレビは深刻な危機にある。

何もテレビだけじゃない、新聞や週刊誌も苦しい

 早期退職制度を2022年に導入したフジは同年3月に久代萌美アナが離れ、その後は吉本興業とマネジメント契約を締結。今年3月には女性アナウンサー3人が退社すると報じられた。有能な局員たちも退社ラッシュが続いているという。4月1日には東京・台場の本社で入社式が行われ、2025年の新入社員35人が再興を誓ったというが、フジを取り巻く環境は決して平坦なものではない。

テレビ業界だけではなく、斜陽といわれて久しい新聞や週刊誌といった「紙媒体」も苦しいところだ。ベテラン組は「とにかく定年まで残る」という人も多いが、若手・中堅は他紙やウェブメディアなどに向かうケースも珍しくはない。「日本新聞協会」によれば、新聞総発行部数は約2662万部(2024年10月現在)で、わずか1年で200万部近くも減っている。就職氷河期世代が入社を競い合った2000年は約5371万部であり、実に20年ちょっとで半減したことになる。

 一般紙は2000年の約4740万部から約2494万部(2024年)に、スポーツ紙は約631万部から約168万部に激減しているというのだからビジネスとして苦しいところだろう。1世帯当たりの部数は2000年に1.13だったが、2024年は0.45にまで低下していることがわかる。

今の稼ぎ頭は「不動産」というのが本音

 言うまでもなく、新聞業界のビジネスモデルは「販売」と「広告」を基本とする。販売部数そのものが下降の一途をたどれば、広告も落ち込む。2000年は1兆2474億円の広告費を得ていたが、2023年は3512億円と4分の1近くにまで減った。広告量が減り、掲載率も40.1%だったものが29.0%に減少している。

 最近になって「DXを推進しよう」「ネットでバズる記事を量産し、デジタル有料会員を獲得するんだ」と編集幹部たちが檄を飛ばしているというが、長年にわたって染み付いたビジネスモデルの変革は奏功しているようには見えない。今の稼ぎ頭は「不動産」というのが本音なのではないか。

 落ち込みが激しいといわれる週刊誌の動向は「日本雑誌協会」が公表するデータを見ればわかる。2024年10~12月の印刷証明付部数(平均)は「週刊文春」が約41万8000部、「週刊現代」約28万部、「週刊ポスト」約24万6000部、「週刊新潮」約21万3000部などとなっている。

テレビも「一家に一台」という時代ではなくなった

「文春砲」で知られる週刊文春は2015年に70万部近くを保っていたが、それでも部数維持につなげられていない。ちなみに、筆者が愛読してきた「SPA!」は約5万7000部、「AERA」は約4万7000部、「サンデー毎日」は約3万1000部にまで減少している。令和時代のテキスト離れは深刻なものであり、ボリュームを増していく若年層を喚起する策を見つけられていないのだ。

 では、テレビ・ラジオ業界はどうなのか。「日本民間放送連盟」が明らかにしているデータによれば、会員社(194社)地上波の売上は計2兆1435億円(2023年度)で、テレビ放送事業収入は1兆7273億円、ラジオ放送事業収入は1017億円となっている。広告費を見ると、2023年の地上波テレビは1兆6095億円であるが、2021年の1兆7184億円、2022年の1兆6768億円と比べれば下降していることがわかる。

 テレビも「一家に一台」という時代ではなくなり、今やスマホ片手にYouTubeやTikTok、有料動画配信サービスを楽しむ人々が増えている。

経営陣の人権意識は低いとされるフジテレビは本当に再発できるのか

 一連のフジテレビ問題を見ていると、実はCMのスポンサー企業に異変が生じていることがわかる。それは「本当にテレビCMって効果あるの?」という点だ。フジテレビ問題を受けてスポンサー企業は一斉にCM出稿を見合わせることになったが、ある企業幹部は「その後も売上に変動は見られない」と明かす。つまり、高額のCM費用をかけなくても問題はないということだ。「むしろ、今の時点で再開すれば批判の的になり、逆効果になる」と見ているという。この観点はフジテレビだけではなく、テレビ業界全体に深刻な打撃になりかねないと言える。

 もちろん、フジテレビのダメージは計り知れない。業務の延長線上で女性社員が中居氏から「性暴力」を受け、さらにフジは「ハラスメントに寛容な企業体質」と第三者委員会から認定された。経営陣の人権意識は低いとされ、組織風土やガバナンスに問題があったと指摘されている。他にも類似事案が発覚したほか、情報番組「Live News イット!」のメインキャスターを務めるフリーの青井実アナがスタッフを叱責するなどの不適切言動があったことも判明した。他にも10年以上前、フジテレビの番組出演者であった石橋貴明氏が同局の女性社員に対して自身の下半身を露出していた可能性を週刊文春が報じた。フジテレビは数々の再発防止策を並べるものの、はたして実効性が確保されていくのかは見えない。

民放を襲う、アクティビストたち

 フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)をめぐっては、投資ファンドなどが株式取得を進めている。旧村上ファンド系の投資会社と村上世彰氏の長女・野村絢氏は4月3日時点で合計11.81%保有。他にも米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が関連会社と合わせて計7%近く取得している。株式5%超を保有する資産運用会社「レオス・キャピタルワークス」代表はTBSの取材に対し、外部人材をトップに迎え、会社を変革するべきだと主張している。

 レオスは北尾吉孝氏が率いるSBIホールディングス系の運用会社だ。北尾氏と言えば、2005年に「ホリエモン」の愛称で知られる実業家・堀江貴文氏がニッポン放送株取得を通じたフジテレビ支配を計画。村上氏側も呼応する動きを見せたことがあった。その際、北尾氏側は「ホワイトナイト」(友好的買収者)の役割を果たし、フジとの和解につなげた因縁がある。

かつての「民放の雄」は今や昔

 今後の焦点は6月下旬に予定されるFMHの定時株主総会だ。日経新聞は4月14日、ダルトン・インベストメンツがFMHの取締役候補として北尾氏を株主提案することがわかった、と報じた。ダルトンは新しい取締役に10人超の候補者を選んでいるといい、大幅入れ替えを提案する準備を進めているという。

 もちろん、アクティビスト(物言う株主)の狙いはそれぞれにある。議決権の過半に及ばず株主提案が認められない可能性はあるが、FMH側がどのように対応するのか注目されるところだ。

 これからの日本は、人手不足・人材難が深刻になる。斜陽産業からは人が離れ、自らの社員を大切に守れないような企業は生き残ることが難しい時代だろう。フジテレビは本当に変わるつもりがあるのか、そして真に変革することができるのか。かつての「民放の雄」は今や昔、衆人環視の下で厳しい再出発が問われている。

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

政治・経済カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者及び情報提供者は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

関連リンク
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.