国民民主比例候補「汚物まみれ4人衆」はあまりに失礼…経済誌元編集長「ひどいのは2人では?」支持率急落を救うのは公認外ししかないのか

参議院選挙に向けて、各党において立候補者が名乗りをあげ、話題を呼んでいる。そんな中、SNSでは国民民主党が擁立した4人の元国会議員に注目が集まった。昨年の衆議院選挙で大躍進を遂げ、国民からの期待も高まる同党だが、インターネットではこの4人について「汚物まみれ四人衆」とあまりにひどい揶揄がなされている。一体何が起きているのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
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ネット上で「汚物まみれ四人衆」と呼ばれる候補者
国民民主党が今夏の参院選比例代表候補として擁立を発表した4人の元国会議員に、激しい批判が巻き起こっている状況である。私自身、長年にわたって国民民主党に期待を寄せてきた者として、この人選には心底驚きを隠せなかった。発表の翌日、国民民主党の支持母体である労働組合の幹部にこの驚きを伝えたところ、先方も戸惑う表情を浮かべるばかりだった。党内外で波紋が広がっている今回の候補者擁立、その問題点を明らかにしたい。この4人の候補者は、インターネット上で「汚物まみれ四人衆」と揶揄される状況である。
まず一人目は山尾志桜里氏である。山尾氏に対する批判は、特に国民民主党を古くから応援してきた保守寄りの支持層から強く発せられている点が特徴だ。山尾氏が過去から主張してきた女系天皇や夫婦別姓の推進といった政策は、国民民主党の支持基盤、特に保守的な層にとって受け入れがたい思想である。国民民主党の幹部たちは、山尾氏の主張は党の主張ではないと口々に弁明に躍起になっている状況だが、支持層は党の説明を信じるというよりも、疑ってかかっている。山尾氏自身も候補者発表後の記者会見を欠席するなど、党への配慮を欠いた行動に出た。党内の混乱を助長する行動である。
山尾氏だけが問題であるならば、批判は彼女個人に集中するだろう。しかし、世論が「四人衆」全体へのバッシングを浴びせている状況は、残る3人の候補者にも当然問題があると多くの有権者が感じている証左である。特に山尾氏と次の足立康史氏に対する批判の声は、他の二人に比べても大きい。
二人目は足立康史氏である。足立氏に対する批判は、近年減税を主要政策に掲げるようになった国民民主党の支持層から、特にSNS上で大きな反発を受けている。
過去、ネット上で「貯金税」と酷評された政策の導入を強く主張していた足立氏
足立氏はかつて日本維新の会に所属し、声高に増税の必要性を訴えていた政治家である。足立氏を継続的に取材し続けてきた筆者だが、足立氏が掲げる「減税」主張や「私は増税志向ではない」という言葉を額面通りに受け取るのは、まだ早い。足立氏のX上での発言を追っても、「ネット減税」、つまり一部に増税があっても全体では減税になる状態を目指すのかどうかを尋ねてもスルーしている。その一方で「応能負担」という増税政治家の常套句を連発する傾向にある。歳出削減の有効な手段である「シーリング」にも否定的な発言をした。さらに、高年収高齢者への負担増を訴えている。
日本維新の会時代、足立氏は「資産課税」、インターネット上では「貯金税」と酷評された政策の導入を強く主張した経緯がある。これは維新内部でも大きな物議を醸した論争であった。日本維新の会は2021年の衆院選で「大減税」を公約の柱として訴え、議席を大幅に伸ばした。有権者は維新を減税政党と認識したのである。しかし選挙後、足立氏は自身のTwitterで「総選挙前ドタバタの中で落とした資産課税について、本当に党として『捨てる』ということでいいのか事後検証したかった次第です」と投稿し、36兆円規模とされる資産課税の増税議論の開始を宣言した。
山尾氏も足立氏も一度は政治家引退宣言しているのに…
これは有権者が減税を信じて投票した直後に、党是として増税を追求するかのような発言であり、党内外に大きな衝撃を与えた。党幹部との対立も報じられ、自身の行動に異を唱える同僚議員をTwitterでブロックするなど、党内の秩序を乱すような行動も報じられた。
また、足立氏は過去に他党に対する言動で懲罰動議を受けている。党の政策や規律よりも自己の主張を優先する傾向は、政党政治家としての適格性に疑問符を付けざるを得ない。
山尾志桜里氏と足立康史氏の二人は、一度は政治家引退を宣言している。特に足立氏の引退宣言は去年のことだ。政治家の言葉というものは、こんなにも軽いものなのかと呆れてしまう。
三人目は須藤元気氏である。須藤氏については、過去に新型コロナウイルスワクチンに関する言動などで、科学的根拠に基づかない主張を繰り返した。
須藤氏の科学的根拠に基づかない主張
須藤氏がウクライナ支援は止めるべきと主張したり、SNSではDS(ディープステート=闇の政府)にも言及するなど、公衆衛生や外交といった分野で政治家として高い倫理観や科学的知見が求められる領域において、問題がある言動があったと評されている。しかし、須藤氏に関しては、自身の発言や政策について、批判を受けて謝罪したり、見解を修正したりする姿勢が見られる点に注目すべきである。間違っていたと認めて謝罪し、方向を修正しようとする態度は、政治家として必要な柔軟性や反省の姿勢であると言える。人間、間違うことはあるものだ。謙虚に、自身の政策を修正できるのは、この時代にあって、長所ではないだろうか。
山尾志桜里氏や足立康史氏には、そういった過去の言動に対する反省や修正の姿勢がほとんど見られないように映る。党は須藤氏に科学的根拠と事実に基づく議論・立案を行うという確認書への署名を求めたと説明している。これは須藤氏が党の政策に従い、建設的な議論を行う意思を示した前向きなステップと捉えることも可能である。もちろん、過去に繰り返された科学的見地から逸脱した言動や陰謀論めいた主張は、軽々に済まされる問題ではないという厳しい指摘も多くある。
4人の中で一番批判の声が穏やかな薬師寺氏
四人目には薬師寺道代氏が含まれる。薬師寺氏は過去にみんなの党や自由民主党といった複数の政党を渡り歩いた経歴を持つ元参議院議員である。他の三人、山尾志桜里氏、足立康史氏、須藤元気氏と比較すると、薬師寺氏に対して向けられる批判の声は比較的穏やかである。薬師寺氏の擁立については、評価できる点も存在する。特に、経済政策における姿勢には注目すべき点がある。2013年の参院選で愛知選挙区から初当選した際、薬師寺氏は「増税の前にやるべきことがある」と訴え、この主張が有権者に届いたことが当選の一因になったと報じられた。
これは国民民主党が現在掲げる「手取りを増やす」という政策方向性と一致するものである。また、直近の2024年に行われた朝日新聞のアンケートにおいて、消費税率を10%よりも高くすることについて、「どちらかと言えば反対」と回答している。関心が経済成長の足を引っ張る社会保障分野に偏っている懸念もあるが、増税に対して慎重な立場を取っていた点は、減税を訴える国民民主党の政策と整合性が高いと言える。
国民民主党は政党支持率の下落に危機感を強めている
さらに、医師、特に産業医としての経験を持つことも評価できる。産業医は企業の現場で働く労働者の健康管理や労働環境の改善に携わる専門職である。この経験を通じて、現場で働く人々、現役世代が直面している経済的な悩みや労働環境における課題、健康問題などを肌で感じ、深く理解している可能性を秘めている。
国民民主党は政党支持率の下落に危機感を強めている。読売新聞の調査では4月から2ポイント減の11%となり、報道各社の調査でも下落が目立つ。躍進の原動力となってきたSNSでは「変な流れになってきた」「支持をやめる」といった批判的な投稿が増加している。地方選での敗北や議員の不祥事も重なり、党内には不安が広がっている状況だ。埼玉県和光市議補欠選挙での敗北、「政治とカネ」を巡る横浜市議の県連幹事長職解任といった党の足元を揺るがす事態も起きていると伝えている。
玉木雄一郎代表は候補者の確認書提出を公表して沈静化を図ろうとしたが、反発は収まっていない。玉木代表は非常に難しい舵取りを迫られることになった。今回の四人衆、というか、私の見立てでは問題があるのは2人に限られているが、山尾氏と足立氏の擁立は国民民主党にとって大きな傷となる可能性がある。