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石破首相の持論「公約を守る必要はない」…やってくるのは増税とバラマキ!どんどん遠のく現金給付と恒久減税「なぜ自民は変われないのか」

(c) AdobeStock

 先の参議院選挙で自民党と公明党は大敗した。大敗し、過半数維持もできなかった。しかし第一政党は維持している。そうなると気になるのは、給付なのか減税なのか議論の行方だ。自民党は国民一律2万円給付を公約に掲げた一方で、野党の多くは減税を国民に訴えた。たしかにこれまで自民一強体制に国民はNOをつきつけたのだが、その一方で結局国民が最も支持しているのは自民党であることもまた事実だ。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

目次

給付金が実現しない最大の障壁は、石破首相の信頼性の欠如

 参議院選挙の結果、自民党は第一政党の座を守った。しかし、与党全体(自公)では過半数を失う事態に至った。有権者の関心は、自民党が選挙公約として掲げた国民一律2万円の給付金に集まっているようだ。選挙結果を受け、給付金は支給されるのか、見送られるのか。

 結論を先に述べれば、給付金が国民の手元に届く可能性は著しく低い。その根源には、政権のトップである石破茂首相自身の、公約を有権者との約束事と見なさない深刻な姿勢がある。給付金が実現しない最大の障壁は、ねじれ国会でも財源問題でもなく、首相の公約に対する信頼性の欠如に他ならない。

 石破茂首相は過去の国会答弁で、自身の政治哲学を明確に示している。「当選したからといって公約を掲げた内容通りに実行するとはならない」と断言したのだ。発言の文脈が自民党総裁選挙に関するものであったという事実は、問題の本質を何ら変えない。国民の多くは、この発言を国政選挙で有権者に約束した公約でさえ守る気がないという、政治家の本音の表れだと受け取った。有権者との約束を、政権運営の都合次第で反故にできると考えている姿勢が露呈した。

 この公約を軽んじる哲学は、今回の給付金問題において現実のものとなった。選挙期間中、石破茂首相は物価高対策の切り札として給付金の必要性を熱心に訴え、継続的な実施の可能性にまで言及していた。これまで地方創生など効果がない莫大なバラマキを掲げる一方で、減税だけはダメ、減税はポピュリズムなどと論理性を欠く主張を繰り返した挙句、いざ選挙となると有権者の支持を得るため、選挙買収ともおぼしき「現金給付」など甘い言葉を並べ立てた。

給付金を押し通す力を発揮できる可能性は…

 その結果、第一政党という肩書きは残ったが、与党は過半数を失い、法案や予算を通すためには維新や国民民主などの野党の協力が不可欠となった。維新は財政規律を重視し、一律給付には否定的だ。国民民主も恒久的な減税や手取り増を優先し、現金給付を最前線に置く考えはない。こうした政局で石破政権が公約通りの給付金を押し通す力を発揮できる可能性は、限りなく低いと言わざるを得ない。

 石破首相は参院選後、「国民の理解を得られなかった」として公約を、自らの判断で事実上撤回する意思を示しているようにも見える姿勢を明らかにしている。もともと石破首相は、選挙での約束をそのまま実行する必要はないという考えを持っている。こうした政治姿勢は、2万円給付金のような即効性のある公約をあっさり捨てても不思議ではない。石破首相は党内の財政規律派、財務省に対して弱腰である。

 公約は重たいものであり、石破政権が続投するのであれば、公約は守るべきであるが、もし、民意にとって現金給付が否定されたというのであれば、やはり減税を打ち出すべきであろう。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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