え、誰が対象? 日本年金機構からもらえる特別な「給付金」…いくらなの!全員がもらえるわけではない「嬉しいサポート」の正体

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 一体、7月の参院選で示された「民意」とは何だったのだろうか。あれだけ「熱」を帯びていたはずの物価上昇対策や減税論が8月に入り、すっかり姿を消してしまっているように映る。約1カ月前は各政党がこぞって激論を交わしていたが、いまだ国会は動かず、政権与党である自民党内では数百万円から数千万円も「不記載」にしていた議員たちが自らの責任を転嫁するように、石破茂首相(自民党総裁)に敗北責任を問う姿は異様だ。メディアは連日のように「石破おろし」ばかり取り上げ、国民生活に打撃を与えている物価対策や減税策をほとんど報じなくなった。経済アナリストの佐藤健太氏は「自民党の『党内政局』は国民を置き去りにしており、あまりに『民意』とかけ離れている。選挙で票を投じても何ら変わらないとなれば、政治不信は高まるだろう」と指摘する。

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これは「国民をバカにした話」でしかない

 7月20日投開票の参院選で、自民党と公明党は非改選議員を含めて与党で過半数を割り込む大惨敗を喫した。衆院に続いて、参院でも少数与党に転じたことで政策推進力に陰りが見られるのは事実だ。両党は参院選で国民1人あたり2万円を一律給付し、子供や住民税非課税世帯の大人には1人あたり4万円とすることを掲げた。石破首相は7月2日、毎日新聞のインタビューで「年内には当然開始する」と明言し、参院選中には「速くなければ意味がない。実現したが1年後でしたみたいなことにはならない」と繰り返した。だが、給付を裏付ける補正予算を成立させることが見通せなくなったことで霧消しつつある。たしかに給付策への人気は決して高かったわけではないが、政権与党が約束していながら実現しないというのは国民をバカにした話と言える。

 では、野党があれだけ声高に訴えていた「減税」はどうなのか。立憲民主党と日本維新の会は消費税の「食料品0%」(2年)を掲げた。立憲は1人2万円の現金給付(財源は2兆5000億円)も掲げ、消費減税に必要となる財源としては「政府基金の取り崩し・外国為替資金特別会計」で対応するという。社民党、日本保守党も「食料品0%」の立場だ。

 消費税を「5%」にすると訴えたのは、国民民主党と共産党。国民民主は実質賃金が持続的にプラスになるまで一律5%に下げ、共産党はまず5%に引き下げてから「廃止」とした。

選挙で示されたのは「民意」なら、「減税」は国民の声

 れいわ新選組は「消費税廃止」と現金10万円給付を訴え、参政党は消費税の「段階的廃止」を掲げた。

 選挙で示された「民意」ということならば、「減税」は国民の声ということになる。衆院でも参院でも少数与党になった石破政権は、野党が一丸となって「減税」するよう突きつけていけば最終的に飲まざるを得ない。つまり、野党がその気になれば減税策はいつでも実現することができるはずだ。にもかかわらず、国会で減税論が強まっていると報じられることはほとんどない。連日のように報道されるのは、自民党内政局ばかりだ。

 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる「裏金問題」に端を発し、岸田文雄前政権時代に「派閥」というものは麻生太郎元首相が率いる麻生派を除いて解散されたはずなのだが、いまだニュースでは旧安倍派、旧茂木派、麻生派の面々が石破首相を引きずり下ろそうと躍起になっていると報じられている。もちろん、すべてではないものの、少し前まで「裏金問題」で火中にあった議員たちが何事もなかったかのように石破首相の敗北責任を問うシーンは異様だ。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないが、それは各党が公約を競い合った参院選での物価高騰対策、減税論のその後と重なるように見える。

コメ平均価格は値上がりしているが、各党の政策は実現せず

 読売新聞が参院選投開票翌日(7月21日)に報じた出口調査の結果によれば、争点として重視した政策は「物価高対策・経済政策」が46%で最も多く、「年金・社会保障政策」(17%)、「子ども政策・少子化対策」(12%)と続いた。「物価高対策・経済政策」と回答した人の比例選投票先は自民党が20%、国民民主党が16%、立憲民主党が14%だったという。上昇が止まらない物価を何とかして欲しい、コメ価格高騰に手を打ってもらいたいという国民の思いがそれぞれ選挙結果に反映された結果だろう。

 日本銀行が8月13日発表した7月の企業物価指数(2020年平均=100)は126.6で、前年同月比2.6%上昇し、53カ月連続でアップしている。伸び率は鈍化がみられるものの、「国民の主食」であるコメの平均価格は値上がりしている。にもかかわらず、参院選から1カ月が経った今も選挙で打ち出された各党の政策は何ら実現していない。今のところ、ただ「口」で公約が語られただけなのである。

政権与党とは何なのか、国会や選挙とは何のためにあるのか

 これでは、政権与党とは何なのか、国会や選挙とは何のためにあるのか、と問いたくもなってしまう。

  憲法25条1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定している。いわば、「人間らしい」生活を送ることができるよう国の責務を宣言したものとされるが、30年以上も国民の所得環境が改善せず、様々な物価高騰が続いていけば基盤をやがて危うくなるのは避けられない。政府は「賃上げ」こそが全てだ、というような政策を重ねているものの、賃金上昇の恩恵を大企業のように受けられない組織に属する人や働きたくても働くことが叶わない人にとっては、ひたすら生活費を削ってしのごうとするしかないのが現状だ。

 気になるのは、年金を受給するシニアだろう。ただでさえ、かつて「老後に2000万円が必要」と試算され、資産防衛にひたむきになってきた人にとっては強い危機感を抱いているはずだ。ただ、公的年金を受給している人で収入が基準よりも低い場合は「給付金」が支給される。消費税率10%への引き上げに伴い、2019年10月から支給されている「年金生活者支援給付金」だ。

年金生活者支援給付金、どんな人が対象?

 この給付金のポイントは、物価変動に応じて支給額が改定される点にある。つまり、物価上昇が2%あれば、給付金の基準額も同率で引き上げられる。支給対象になるのは、世帯全員が住民税非課税者であるなどの条件を満たす必要があるが、年金収入に依存する人たちにとっては嬉しいサポートと言える。

 支援対象は、老齢・障害・遺族基礎年金を受給している人だ。まず「老齢年金生活者支援給付金」は、①65歳以上の老齢基礎年金の受給者である②世帯全員が市町村民税非課税である③前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が1956年4月2日以後に生まれた人は88万9300円以下、1956年4月1日以前に生まれた人は88万7700円以下―といった条件をすべて満たす必要がある(障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれない)。

 1956年4月2日以後に生まれた人で78万9300円を超え、88万9300円以下である人や、1956年4月1日以前に生まれた人で78万7700円を超え、88万7700円以下である人には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される。給付額は月額5450円を基準に保険料納付済期間等に応じて算出され、①保険料納付済期間に基づく額(月額)=5450円×保険料納付済期間/被保険者月数480月②保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1551円×保険料免除期間/被保険者月数480月の合計額となる。

「障害年金生活者支援給付金」の条件

 2つ目の「障害年金生活者支援給付金」の条件は、①障害基礎年金の受給者である②前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額)こと。3つ目の「遺族年金生活者支援給付金」の条件も、①遺族基礎年金の受給者である②前年の所得が472万1000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額)、となっている。

 障害年金生活者支援給付金の給付額は、障害等級2級は月額5450円障害等級1級の場合は月額6813円。遺族年金生活者支援給付金は、月額5450円となっている。たかが5000円程度と思う人もいるかもしれないが、物価変動に伴い改定される仕組みは今の時代を生き抜くためには重要と言える。

 老齢基礎年金の受給資格がある人には請求書が送付され、いずれも年金事務所に請求書を提出すれば給付されるものだ。自治体が把握する所得情報によって年金生活者支援給付金の支給要件を満たしているか判定され、原則として課税証明書などの添付も必要ない。条件を満たしている場合は2年目以降の手続きも不要のため、自らが対象の可能性がある人は一度問い合わせすると良いだろう。

今年9月頃から給付金請求書を日本年金機構が送る予定

 老齢・障害・遺族基礎年金を受給している人で、所得額が前年より低下より低下したことなどを理由に対象となる場合には、今年9月頃から給付金請求書を日本年金機構が送る予定となっている。手続きした翌月分から支給対象となるため、速やかな請求をオススメしたい。

 国や自治体は納税者の所得情報を把握し、一般国民は「1円」単位で正確な納税が義務づけられ、誤れば罰せられることもある。だが、国会議員をはじめとする「上級国民」は起訴を免れ、政局に明け暮れるケースもみられる。選挙で国民が示した「民意」は、物価上昇に対して1日でも速く対策を打って欲しいという願いだったはずだ。一票を投じても何も変わらないのであれば、政治不信が増幅し続けるのは当然と言える。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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