「自公維連立」の数合わせゲームで本当に日本は良くなるのか…国民民主党の幹事長が語る自民・維新“永田町論理”への疑問

「手取りを増やす」を掲げ、現役世代を中心に支持を広げる国民民主党。その躍進の裏には、玉木雄一郎代表とともに党を牽引する榛葉賀津也幹事長の存在がある。
YouTubeなどで見せる気さくな人柄で「国民民主党の番犬」「ヤギの人」としても人気を博す榛葉氏。その政治家としての原点、独自の政党運営論、そして激動する日本政治の未来図とは。イスラエルでの壮絶な体験から、自民党総裁選、エネルギー問題まで、その核心に迫った。短期連載全4回の第3回。(取材日:9月19日)
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麻生太郎氏が語った本音「自民党が唯一…」
実は、田中角栄氏が自民党幹事長だった時代に「自公民路線」という構想がありました。自民党、公明党、そして民社党が連立を組めば、この国は安定するという考え方です。麻生太郎先生からも「榛葉、お前は分かってるだろう。自民党は公明党とも社会党とも組んだ。組んでいないのは、お前たちの支持母体の民間労働組合だけなんだ。ここと組めば、日本は安定するぞ」と言われたことがあります。
この民間労組のところの賃金が上がることで、それを基準に公務員などの給与も上がっていきます。ですから、彼らの賃上げ運動は日本経済全体にとっても非常に重要な意味を持っているんです。
榛葉幹事長が自民党総裁選を大胆予測「本命は…」
――現在、永田町では自民党総裁選が最大の関心事です。今回の総裁選は、先の選挙で国民民主党や参政党が躍進したこともひとつの引き金になったと思います。この総裁選をどうご覧になっていますか?
どの候補者の方も、それぞれに個性や強みがあり、極めて優秀な方々だと思います。自民党の総裁、つまり日本の次の総理大臣になるわけですから、そうであってほしいと願っています。
情勢としては、小泉進次郎さんと高市早苗さんが本命、対抗が林芳正さんといったところでしょうか。おそらく1回目の投票では決まらず、決選投票になるでしょう。そうなると、自分が1位、2位に入るだけでなく、もし漏れた場合に、決選投票で誰と組むのかを瞬時に判断しなければならない。非常に複雑な駆け引きが行われると思います。
小泉進次郎氏の“致命的な戦略ミス”とは
ただ、私が個人的に思うのは、小泉進次郎さんについてです。彼は非常に発信力があり、素晴らしい政治家ですが、もし今回、あえて出馬せずに誰かを応援する側に回り、その人を総理にして、ご自身は幹事長や官房長官といった党や政権の要を経験すれば、政治家としてさらに大きく、太くなったのではないかと感じます。
私の尊敬する安倍晋三元総理も、実は各省の大臣は経験していません。副幹事長、幹事長、そして官房長官という、党と官邸の中枢を経験したことが、あの長期政権の礎になりました。幹事長と官房長官というのは、政治のすべてを動かす要です。進次郎さんがその経験を積んでから総理を目指せば、盤石だったかもしれません。
「常識人」の小泉進次郎氏は父のカリスマ性を超えられない?
進次郎さんは「自民党をひとつにしなければいけない。自民党を守るために自分が何ができるか考える」とおっしゃっていましたよね。これは非常にまっとうな発言です。しかし、もし彼のお父さん、小泉純一郎さんだったら、間違いなくこう言ったでしょう。「このチャンスに、自民党をぶっ壊す!」と。その破壊力とカリスマ性が、国民を熱狂させた。
進次郎さんはお父さんとは違うタイプの、非常にまともな常識人ですが、政治には時として、常識を超えるダイナミズムが求められる局面もあります。
「自公維連立」は単なる数合わせ? 永田町の残念過ぎる論理
――総裁選後の政局、特に連立政権の枠組みについてはどのようにお考えですか? 自公連立に維新の会が加わる「自公維連立」の可能性も囁かれています。
自公で過半数を割っているからといって、「じゃあどこを足したら安定するか、維新か、国民か?」といった、単なる数合わせ、足し算の論理で動いてしまうと、私はダメだと思うし、チャンスを逃すことになると思います。
今は30年ぶりに日本経済が上向くかどうかの正念場です。人口動態も大きく変わり、新しい国づくりが求められている。そんなときに、目先の議席数だけを考えて小さくまとまってしまっては、ダイナミックな政治は生まれません。
維新が抱える“時限爆弾” 自公維連立なら党分裂も
維新の会が連立に加わるかという点ですが、これはそう簡単ではないでしょう。維新の会の本質は「大阪の自民党」です。ですから、大阪の議員にとっては、自民党と連立することは、いわば先祖返りのようなもので、抵抗は少ないかもしれません。
しかし、今の維新の会には、大阪以外の選挙区で、自民党候補に敗れて比例復活しているような議員が多くいます。彼らにとって、自民党と連立するということは、次の選挙で自分たちの選挙区がなくなることを意味しかねない。特に参議院は非大阪の議員の方が多い。藤田文武さんは非常にクレバーな方ですが、党を割るリスクを冒してまで連立に踏み切れるか。これは相当な胆力がいる決断です。
立憲と選挙区を譲り合ったことなど一度もない
――国民民主党は、特に安全保障やエネルギー政策において、立憲民主党とは考え方が大きく異なると公言されています。しかし、先の参院選などでは、1人区などで事実上の選挙協力、棲み分けが行われているように見えました。この矛盾はどのように説明されるのでしょうか?
まず明確にしておきたいのは、私たちは立憲民主党さんと選挙協力もしていませんし、選挙区を譲り合ったことも一度もありません。結果として我々が候補者を出していない選挙区があるのは、単純に「出せなかった」からです。
1人区というのは、人口が少ない地方の選挙区です。地方には、私たちの支持基盤である大手の民間企業が少なく、一方で立憲民主党さんの支持基盤である官公労の組織は全国どこにでも存在します。
そして何より、私たちには資金がありませんでした。当初は国会議員が15人しかおらず、玉木代表が個人で何億円もの借金をして党を運営しているような状況でした。選挙には莫大なお金がかかります。候補者を擁立したくても、お金も組織もない。譲ったのではなく、体力的に出せなかった、というのが偽らざる実情です。
立憲民主党をバッサリ「政権は任せられない」
安全保障に関する考え方の違いは決定的です。今年で安保法制の成立から10年になりますが、私たちはこの法制を是とし、今の厳しい国際情勢に対応するためには不可欠だと考えています。しかし、立憲民主党さんはいまだにこれを「憲法違反だ」と主張し、同盟国や友好国と物資や役務を融通し合うACSA(物品役務相互提供協定)の締結にも反対し続けています。国の守りを真剣に考えない政党に、政権を任せることはできません。
エネルギー政策も同様です。GX(グリーン・トランスフォーメーション)関連法案に反対しておきながら、どうやって日本の経済を成長させるつもりなのか。そうした基本的な国家観が違う以上、安易に協力することはあり得ません。