高市氏優勢なら防衛・重工株、小泉氏なら農業株…両氏一騎打ち総裁選で浮上する日本株のシナリオ

本稿で紹介している個別銘柄:エヌビディア(NVDA)、インテル(INTC)、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、FFRIセキュリティ(3692)、クボタ(6326)、井関農機(6310)
石破首相の辞任を受け、自民党総裁選が10月4日の投票・開票に向け本格化。小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎の5氏が立候補を表明し、物価高対策や野党連携が主な争点として浮上した。
党勢回復が最優先課題となる中、党員票の行方に視線が集中。一方、投資家目線では、総裁選のさまざまなシナリオと、それによってスポットライトを浴びるセクター・銘柄が最大の焦点となっている。
今回は、『Financial Free College』(以下、FFC)の講師である松本侑氏(X:@smatsumo0802)に、日銀の政策に対する市場の反応や、9月22日に告示された自民党総裁選のシナリオ、そして今後注目されるセクター・銘柄について話を伺った。
目次
日銀ETF売却サプライズで株価揺らぐも、米AIブームが下支え
──日銀の9月政策決定会合の結果について、市場の反応はどうでしたか。利上げ見送りが続いたようですが。
そうですね。政策金利の無担保コールレートを0.5%で据え置く決定は、市場の予想通りでした。
植田総裁の会見では、米国の関税政策の影響を見極める必要性を強調し、「不確実性が依然高い」と繰り返しました。
実際、大きなマイナス影響はまだ現れていませんが、追加のデータや情報を待つ姿勢が明確でした。
一方で、サプライズとなったのは、日銀が保有するETFとJ-REITの市場売却方針を発表した点です。
これにより、日経平均株価は一時800円超の下落を記録しましたが、終値では前日比-257円(-0.57%)の45,045円と、比較的落ち着いた形で取引を終えましたね。
──ETF売却は過去に例がなく、市場の不安を煽ったと思いますが、反応が抑えられた理由は?
サプライズ性は高かったものの、売却ペースが年間簿価3300億円、時価約6200億円と緩やかだからです。
日銀の保有額は3月末で簿価37兆円、時価70兆円規模なので、このペースでは完了まで100年以上かかる計算になります。
会見では記者から「責任の所在はどうなるのか」との質問が相次ぎましたが、総裁の回答は曖昧で、不信感を残しました。
結果、為替市場ではドル円が一時147.24円まで円高に振れた後、148円前後に戻り、円安基調を維持。株式市場全体への影響は限定的で、日本株は高基調を保っています。
──財政再建の先送り感が強いですが、市場への長期影響はどうなると思いますか。
おっしゃる通り、責任先送りの印象は否めません。ただ、米半導体・AI関連の好調が日本市場を下支えしています。
例えばエヌビディア(NVDA)のインテル(INTC)出資報道でフィラデルフィア半導体指数が4%上昇し、日本半導体株も堅調。景気下振れリスクはありますが、短期的にメガトレンドは続くでしょう。
参議院大敗の反省活かすが、外交の視点が少なかった
──22日の総裁選告示と所見発表演説会について、全体の感想を聞かせてください。
告示日を迎え、5候補(小林鷹之、茂木敏充、林芳正、高市早苗、小泉進次郎)が揃いました。演説会では、各氏の個性が際立ちました。
小林氏はAI・宇宙分野の国家投資を強調し、「諦めではなく希望」を合言葉に技術立国を訴え。茂木氏は「増税ゼロの政策推進」で党再生を約束。
林氏は外交経験を活かし、国際協調を主張。高市氏は安倍路線継承で積極財政と防衛強化を力強く語り、小泉氏は「自民再生の原点」と財政健全化を強調しました。
──特に印象に残った候補の演説は?
高市氏の演説は力強く、防衛や経済安保の広範な分野をしっかりカバーしていましたし、小泉氏の環境・農業重視のポイントも新鮮味があって印象的でした。
全体として、外国人政策の厳格化を競うような傾向が見られ、参院選大敗の反省が背景にあるようです。ただ、演説が内向きに偏りがちで、トランプ関税への対応が薄かった点は残念ですね。
高市氏逆転? 小泉氏との一騎打ち、派閥が鍵
──演説を踏まえ、総裁選のシナリオをどう見ますか。