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日本の「明治維新大好き」保守は、保守(伝統を守る人々)として成立していない

 作家で経済誌プレジデント元編集長の小倉健一氏が、「本物の保守主義とは何か」という問いに向かっていく新連載、「小倉健一の新保守宣言」が始まる。第一回は、多くの日本人が信じる「保守主義」と、エドマンド・バーク以来の西洋生まれの「保守主義」との決定的な違いについて論じるーー。

目次

アメリカの国家システムよりも、明治維新後の日本の国家システムの方が、残念ながら「新しい」

 感情や主観的な思い込みを捨て、数字と歴史のファクト(事実)のみを見つめる時間がきたようだ。多くの日本人が抱く「明治維新はその輝かしい復古である」というロマン(夢物語)は、歴史的事実の前では無力である。

 日本の自称保守派が直面すべき残酷な現実がある。彼らが理想視する明治維新(1868年)以後の国家体制は、アメリカ合衆国の建国(1776年独立、1787年憲法制定)よりも、システム(仕組み)としては「新しい」ということだ。アメリカを「歴史の浅い人工国家」と見下す言説(言い方)をよく耳にするが、現在の統治機構の連続性という観点で見れば、1868年に急進的なシステム(仕組み)の変更を行った明治維新でできた行政体の方が、よほど歴史が浅い。

 さらに、この明治という体制は、ロシア革命(1917年)によって成立し、その後崩壊したソビエト連邦と同じく、強力な「国家による計画」の下で作られた人工的なシステム(仕組み)としての側面を持つ。伝統を重んじるはずの正統派保守が、なぜこれほどまでに革命的かつ人工的な変革(明治維新)を崇拝するのか。

日本の自称保守派が信じて疑わない「二つの神話」

 ここからは歴史の真実にメスを入れたい。日本の自称保守派が信じて疑わない「二つの神話」がある。一つは「明治維新の富国強兵は、政府の賢い産業政策のおかげで成功した」という神話。もう一つは「戦後の高度経済成長は、通産省(現在の経済産業省)の指導が起こした奇跡である」という神話だ。

 残念ながら、これらもまた、データと史実(歴史の事実)を無視したファンタジー(空想)に過ぎない。

 まず、明治の産業政策を見る。教科書では「官営模範工場(国が作った手本となる工場)」が称賛されるが、その実態は惨憺(さんたん)たるものだった。政府が経営した工場の多くは、役人の非効率な運営によって赤字を垂れ流し、結局は民間に安く払い下げられた。成功したのは政府の指導力ではなく、払い下げを受けた後の民間人たちの、泥臭い工夫と利益への執着心のおかげである。

 さらに、自称保守派は都合よく忘れているが、江戸時代の日本にはすでに世界有数の「自由な市場」が存在していた。大阪の堂島(どうじま)米会所では、世界に先駆けて先物取引(未来の価格を予想して売買すること)が行われ、庶民の識字率は世界トップクラスだった。明治の経済発展の基礎は、政府の命令ではなく、江戸時代から続く民間人の商売センスと、草の根の自由主義によって築かれたものだ。政府はむしろ、その活力を戦争遂行のために吸い上げたに過ぎない。

 戦後の「通産省の奇跡」も同様だ。官僚たちはかつて、自動車産業を「過当競争(競争しすぎ)」だとして、数社に統合しようと画策した。もし本田宗一郎がその「指導」に従っていたら、世界的企業ホンダは存在しなかっただろう。ソニーやトヨタといった成長企業は、行政の保護ではなく、むしろ政府の干渉を跳ねのけたからこそ世界で勝てたのである。

 国家が経済をコントロールできると信じるのは、社会主義者の妄想だ。自称保守派がこの「官製(国が作った)成功物語」にしがみつくのは、彼らが本質的には保守ではなく、国家社会主義(国がすべてを管理する考え)の信奉者だからである。

「保守主義の父」エドマンド・バークが述べた保守主義の真髄…日本の自称保守主義者たちと全然違う

 ここで、読者諸君に問いたい。現代の日本人が守りたい「伝統」とは何か。もしそれが「変化を拒み、お上が決めたルールに従うこと」だと思っているなら、それは大きな勘違いだ。

 エドマンド・バーク、ロジャー・スクラトン、マイケル・オークショット、そしてフリードリヒ・ハイエク。世界で「正統派」とされる保守思想の巨人たちは、誰一人として「現状維持」や「国家統制」を是(よし)とはしなかった。

 「保守主義の父」と呼ばれるバークはこう述べた。

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