相次ぐ“公約破り宣言”に「発言軽すぎる」…結局、原発はどうしたいの?中道改革「立憲の政策とは大きく異なる5つの政策柱」に疑問

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 中道改革連合(中道)は、立憲民主党と公明党が結成した衆議院だけの新党で、2026年1月19日に綱領と基本政策が発表された。連合の芳野友子会長は1月19日の会見で、「多様な選択肢を提供する形で政治の活性化につながる」と述べるなど、中道改革連合の結成は、野党再編の新たな可能性を示すものとして評価する声がある。一方で、政治に詳しいコラムニストの村上ゆかり氏は「立憲民主党のこれまでの政策とは大きく異なる点がばかりだ」と指摘する。以下、村上氏が解説する――。

目次

「原発ゼロ社会の実現」を党の柱としていたのでは

 立憲民主党側が従来の理想主義から現実路線へシフトした背景には、政権交代を目指す選挙戦略があるとも指摘され、例えば日経新聞は「高市政権への対抗軸として有効」と分析する。党の旗印となる「5つの政策の柱」は、生活者ファーストの政治を掲げ、極端な思想による社会分断を避け、現実的な改革を目指すものとされた。この中道の「5つの政策の柱」の中身を確認すると、公明党が長年与党で積み上げてきた立場を、より前面に出した形に近い。むしろ、公明党が「自民党との連立の中で抑制的に表現してきた部分」を、中道はより明確に言語化しており、政策面では公明党の立場とほぼ変わらない。しかし立憲民主党のこれまでの政策とは大きく異なる点ばかりだ。

 まず最も大きな違いは原子力政策である。立憲民主党は、長年にわたり「原発ゼロ社会の実現」を党の柱としてきており、将来的な廃炉と再生可能エネルギーへの転換を前提に政策を組み立ててきた。しかし中道改革連合は原発再稼働を容認している。

 安全保障と安保法制も大きく異なる。立憲民主党は、2015年に成立した安保法制について「違憲部分がある」との立場を取り続けており、集団的自衛権の行使には強い歯止めをかけるべきだという考え方が基本である。これに対し、中道は「安保法制は合憲との立場に立ち、現実の安全保障環境に対応する」としている。法制そのものを否定せず、前提として運用改善や議論を深めるべきとの姿勢だ。

 辺野古基地移設問題も違う。立憲民主党は「米軍普天間基地の辺野古移設中止」を一貫して公約に掲げてきたが、中道では「辺野古移設については現実的な対応が必要」としている。憲法改正に対する姿勢も違う。

数合わせのために合流したのでは

 立憲民主党は、憲法改正そのものに慎重であり、「まずは現行憲法の理念を生かすべきだ」という立場だったが、中道では「憲法改正論議を深める」としている。与党であった公明党と、与党を批判してきた立場の立憲民主党が合流したため、これまでと政策が異なるのはある意味当然と言える。

  公明党の代表で中道の共同代表でもある斉藤鉄夫氏は、1月16日の共同記者会見で新党名を発表した後、中道に入党する元立憲民主党の議員について「中道改革連合の理念と政策に賛同する方々が集まっている」と述べている。つまり、「立憲民主党だから受け入れたのではないか」「数合わせのために合流したのではないか」という懸念を明確に否定した。しかし、中道に入党した元立憲民主党の複数の国会議員は、中道の公約に賛同しているのか疑わしい言動が繰り返されている。

  立憲民主党の安住淳幹事長は1月19日の制作発表記者会見で、辺野古移設について「政権を担うことになれば、ストップすることは現実的ではない」と述べ、大きく話題を呼んだ。20日、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る新党「中道改革連合」の見解を「私の発言で物議を醸している。言葉足らずだった」「新党として辺野古移設に関する整理はまだできていない」と修正した。

原発ゼロを目指しながら、原発再稼働に反対していなかった

 立憲民主党を立ち上げ、自ら代表を務めていた枝野幸男衆議院議員は1月19日、「立憲民主党が、例外なくすべての原発再稼働に反対という政策を決めたことはないと思います」と投稿し、立憲民主党のSNSアカウントが2019年7月18日に「立憲民主党は、原発ゼロを実現します。原発再稼働は認めません」と投稿していることなどを多数から指摘された。枝野氏は翌日に続けて「ミスリードする広報物が存在したこと、深くお詫び申し上げます。」と投稿したが、原発ゼロは立憲民主党の結党当初から存在する。原発ゼロを目指しながら、原発再稼働に反対していなかったとはどういう理屈なのか。

 松下玲子衆議院議員は中道への入党を表明した後、1月20日「原発再稼働反対です。入った上で、中で頑張りたいと思います」と投稿した(現在は削除)。このポストは「公約破りではないか」などの批判が殺到し、コメント数は2千を超え、799万回表示され、X上においていわゆる大炎上を起こした。その後投稿は削除された。

公約破り宣言ではないのか…

 弁護士でもあるしのだ奈保子衆議院議員は、2024年10月6日に自らが投稿した「私は安保法制違憲道東訴訟の弁護団員ですからね。ぶれたりしませんし、ぶれたら、それこそ、懲戒請求ものです。」というポストを引用し、1月19日に「今回の新党加入で私の苦しさはここに。政権交代したら、合憲解釈運用で、違憲状態とはならないかもしれない。しかし、条文上の違憲の疑義は絶対に残る。党内議論において、しっかり主張していきます」と投稿した。このポストも松下議員同様、公約破り宣言ではないかという批判を受け、ポストのインプレッションは200万表示を超えた。

 この一連の出来事を、公明党や立憲民主党の支持者はどう見ているのだろうか。

 公明党支持者の多くは、斉藤鉄夫代表が「政策に賛同した人が入ってきている」と説明したことは、大きな安心材料だろう。中道改革連合は、人数合わせの連合ではない。まず政策があり、それに同意した人だけが集まっている。しかし、その直後に目に入ってきたのが、立憲民主党出身議員による一連の言動である。「原発再稼働には反対だが入る」「辺野古には反対だが中で頑張る」―――。本当に政策に賛同して入ってきているのだろうか。斉藤代表の説明と、現場で起きていることが、かみ合っていないのではないか。

「当選してから内部で反対すればいい」

 公明党支持者は、政策の細かい中身よりも、「政治の進め方」を重視する傾向がある。約束は守られるのか。説明と行動は一致しているのか。そこが揺らぐと、不安が一気に広がる。立憲民主党出身議員の発言は、公明党支持者にとって、「自分たちが大事にしてきた政治の作法」が軽く扱われているように映ったのではないか。公明党は信じられるけど、中道は信じられるのか。立憲民主党の政策を支持してきた支持者はもっと混乱しているだろう。自分たちが信じてきた言葉は何だったのか。

  原発や安全保障、基地問題のような政策は、簡単に切り替えられるものではない。発電所は何十年も動き続ける。基地は地域の暮らしを長く左右する。法律は社会の前提になる。だから有権者は、難しいことまで分からなくても、方向性だけは確認しようとする。その方向を示したものが公約だ。その公約を「当選してから内部で反対すればいい」と発言されると、その公約が守られるのかどうか、全く分からなくなる。では、選挙とは何なのか。

企業や投資家が最も嫌うのは、増税でも規制でもなく、先が読めないこと

 企業や投資家が最も嫌うのは、増税でも規制でもなく、先が読めないことだ。原発を動かすのか止めるのか、選挙後の力関係で変わるなら、長期投資はためらわれる。過去にも、日本では原発政策の見通しが揺れた時期に、国内投資が慎重になったとの指摘があった。問題は賛成か反対かではなく、不透明さが続いたことである。公約が選挙後に変わるかもしれない、という先行き不透明な考え方が広がれば、公約そのものが信用されなくなる。信用されない政策は、市場ではリスクとして扱われる。

 さらに深刻なのは、政治文化への影響である。どうせ後で変わるなら、正直に書く必要はない。そう考える政治が当たり前になれば、有権者は政策を読まなくなり、選挙制度そのものを根幹から大きく揺らがすことになる。そもそも「当選してから内部で反対すれば良い」という言動そのものが、選挙制度や国民の民意を軽視している態度として評価されるのではないか。当選後、公約を果たしたい議員とそうでない議員で意見が対立したら、党内の意見がまとまらず、何も進められないということにならないか。軸がない政党では、責任の所在もぼやけてしまう。公明党や立憲民主党の支持者は、それでも中道を支持し続けることができるのだろうか。「できたばかりだから仕方ない」そう思って見過ごしてしまうと、自らの望んだ政策と異なる結果になりはしないか。国会議員の発言はそんなに軽くないし、選挙結果はそんなに甘くない。そして当選後、次の選挙が行われるまでは、実質的に民意は示せない。

 中道改革連合に入った議員たちが今後、国民から信頼されるような真摯な説明や行動が示されることを筆者は心から願っている。

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