「20年前に提示された路線」をたどるチームみらい…与野党全員参加の「消費減税祭り」で非減税票を一点に集める「政策への違和感」

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 衆議院解散総選挙で躍進したチーム・みらい。議席大幅増の理由について元NHK党秘書でコラムニストの村上ゆかり氏が解説する――。

目次

消費税減税を正面から否定した、ほぼ唯一の政党

 今回の衆議院選挙は、与党・自民党の大勝と、中道勢力の大敗という構図が大きく報じられた。一方で、その陰で静かに存在感を高めた政党がある。2025年に国政政党として誕生した新興政党・チームみらいだ。

 前回選挙では議席ゼロだったこの新興政党は、今回、一気に11議席を獲得した。数字だけを見ても、「躍進」と呼ぶにふさわしい結果である。しかも選挙期間中には、比例単独候補の公認取消や、重複候補の資格未達によって、本来得られるはずだった2議席が他党に回るという異例の事態も起きていた。

  このチームみらいの躍進は、偶然でも一時的なブームでもない。今回の衆議院選挙で、チームみらいが際立っていた点は“消費税減税を正面から否定した、ほぼ唯一の政党だった”という事実だ。

 選挙戦を通じて、与党・野党を問わず、多くの政党が消費減税を掲げた。物価高対策、生活支援、実質賃金の下支え――理由はさまざまだが、結果として選挙の争点は「何をどの程度、消費税を下げるか」というものだった。

消費税減税に否定的、あるいは慎重な層は決して少数派ではない

この状況下で、チームみらいは逆の立場を明確に取った。消費税減税を「現実的な解決策ではない」とし、消費減税よりも社会保険料負担の軽減、社会保障制度の持続性を優先すべきだと訴えたのである。

 世論調査を見れば、消費税減税に否定的、あるいは慎重な層は決して少数派ではなく、常に一定数存在してきた。しかし今回の選挙では、その層の受け皿となる政党が、“チームみらい”以外に見当たらなかった。結果として、「減税に疑問を持つ層」の民意の受け皿として、チームみらいが見事に当てはまったのだ。

 消費減税を否定したことで、チームみらいは他党よりも目立つことができた上に、減税派の票を奪い合う競争から離脱することができた。減税を巡る主張が分散する中で、非減税派の票が一点に集まる構図が生まれたのである。

 これは、政策論争の勝利というより、ポジショニング、ブランディングの勝利だ。 

 今回の選挙で特異だったのは、与党・野党の立場を超えて、消費減税が事実上の共通言語になった背景には、直近数年にわたる政府の物価高対策の迷走がある。

与党も野党も、消費減税を掲げた経緯

 各種世論調査では、ここ数年一貫して「物価上昇が生活に悪影響を与えている」と答える割合が7~8割前後で推移してきた。とりわけ食料品や日用品の値上がりに対する不満は強く、可処分所得の減少を実感する層が広がっていた。 

 物価上昇が家計を直撃する中、政府は給付金、補助金、定額減税と、場当たり的な対策を繰り返してきた。とりわけ、定額減税は「減税」という言葉とは裏腹に、一時的で分かりにくく、手取り増加の実感も乏しかった。結果として、「バラマキではない恒久的な対策を」という民意が広がった。 

 この空気を決定づけたのが、選挙直前にかけて高まったバラマキ批判である。給付は一時的、補助金は不透明、中抜き批判、効果も検証されない――。こうした流れを象徴する出来事が、2025年6月、参議院選挙を見据えて示された、石破茂首相(当時)による「一律2万円給付」構想への反発である。物価高対策として示されたこの案は、選挙戦が本格化する中で「バラマキ」「場当たり的」「恒久性がない」といった批判を集めた。とりわけ、消費減税を求める声が高まっていた状況では、一回限りの給付は「減税の代替にはならない」と受け止められやすかった。

「消費減税をどこまでやるか」という競争に変質

 結果として、この発言は世論の支持を広げるどころか、「給付ではなく減税を」という空気を一層強める契機となり、各党が消費減税路線へと傾斜していく流れを後押しし、こうした批判が高まっている中で、与党は「財政規律を守りつつ家計を支援する」という難しい立場に追い込まれた。

 一方、野党側にとって状況はより単純だった。物価高への不満を最も分かりやすく表現できる政策が、消費減税だったからである。消費税は、誰にとっても身近で、説明コストが低く、「下げれば楽になる」という直感的な理解が共有されやすい。

 物価高という共通の不満とバラマキに対する批判が高まる中、導き出された解が“消費減税”だった。与党も野党も、異なる立場でありながら、同じ方向に引き寄せられた。

 こうして選挙戦は「消費減税をどこまでやるか」という競争に変質した。だが同時に、「消費減税そのものに懐疑的な有権者」の居場所は、急速に失われていった。

 チームみらいの政策に対して、「新しい」「これまでにない」といった評価が語られる一方で、詳しく見ていくと、どこか既視感を覚える人が少なくないのも事実である。

チームみらいの政策の“既視感”

 その違和感の正体は、個別政策の是非ではなく、思想的な系譜にある。

 チームみらいが掲げるキーワードを並べると、行政の効率化、データ活用、官と民の連携、制度の再設計、エビデンスに基づく政策判断といったものが目立つ。いずれも現代的で洗練された言葉だが、こうした発想自体は、決して新しいものではない。

 1990年代後半から2000年代にかけて、欧米を中心に広がった「市場原理と社会的配慮を両立させる改革路線」は、日本でも強い影響力を持った。米国のビル・クリントン政権や、英国のトニー・ブレア政権が象徴したこの流れは、民間活力を活用しつつ、国家は制度設計や調整役に徹するという考え方に基づいたものだ。日本ではこの潮流が2000年代の改革議論や、NPO・民間団体を政策実行役とする「新しい公共」論として展開された。子育て、福祉、医療、教育といった分野で、行政に代わり、民間やNPO団体などの非営利組織が役割を担うことが期待された。その代表例の一つが、子育て支援分野で存在感を高めた認定NPO法人フローレンスだ。

当時の改革によって残された課題が表面化

 当時の改革は結果として、日本全体の財政構造や政府の肥大化に本質的な歯止めをかけるには至らなかった。制度の外側を「効率化」しようとしただけで、歳出の中核や負担構造という肥大化の根本原因は、ほとんど手付かずのまま残されたからだ。

 さらに現在は、この路線そのものに対する評価も変化してきた。近年では、子育てや福祉といった分野をNPO団体や民間団体に委ねる手法について、ガバナンスや透明性、費用対効果の観点から疑問が呈される場面が増えている。実際、子育て支援分野で象徴的存在だったフローレンスを巡っては、東京都渋谷区において、施設に根抵当権が設定されていたことが議会で問題視された例もある。この件についてフローレンス側も事実関係を認め、説明と謝罪を行った。これは、行政の責任を民間団体に委ねることで、かえって公共サービスの安定性が損なわれるリスクを示す象徴的な事例である。

 特定の団体の是非ではなく、「行政の責任を外部化することで問題が解決する」という発想そのものには、限界があるのだ。制度の中核に手を付けないまま、実行部分だけを外注しても、構造的な財政問題は解消されない――。当時の改革によって残された課題が、形を変えて露呈し始めたと言える。

選挙後の分析と行動にこそ、政党と政治家の本質

 この状況下でチームみらいの政策が「新しく見える」のは、こうした過去の議論を、AIやデータ、EBPMといった現代的な言語で再構成しているからだろう。しかし、目指している国家像や政府の役割分担は、20年前に提示された路線と殆ど変わらない。

 チームみらいが躍進した一方で、今回の選挙で、多くの国政政党が減税を公約に掲げた事実は、減税を求める民意がいかに強かったかを明確に示している。

 政治はすでに、「減税をするか、しないか」という段階を通過し、「どのような減税が、どの層に、どのような効果をもたらすのか」という設計の段階に立っている。

 チームみらいに寄せられた民意も無視はできない。消費減税に懐疑的な立場を取った同党が一定の支持を集めたことは、「減税一色の議論」に対する違和感や、減税よりも先に社会保障負担=社会保険料の負担軽減に関心を寄せた民意が、確かに存在していることを示している。これは減税への反対というより、減税を含めた政策全体を長期的に考える視点を求める民意だ。

 選挙結果は、単なる勝ち負けだけではない。そこに、どのような国民の民意が表れたのかを読み取ることにこそ、本来の政治の役割がある。

 勝ったから、躍進したから「自らの路線すべてが全面的に信任された」わけでもなく、負けたからすべてを否定されたわけでもない。仮に勝利を過信し、「国民は我々の政党を選んだのだ」と短絡的に自己正当化の材料にしてしまえば、民意はたちまち離れるだろう。過去の選挙でも、そうした慢心が支持離れを招いた例は少なくない。いつの時代も選挙後の分析と行動にこそ、政党と政治家の本質が試されている。

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