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日本経済の先行きは?池田伸太郎氏が語る、日本経済の成長に向けた2つのポイント…高市政権が掲げる積極財政と難易度の高い「緩やかなインフレ」

(c) AdobeStock

 私たちを取り巻く経済環境は、かつてないほどの転換点にある。「円安はいつまで続くのか」「インフレで生活はどうなるのか」「今、投資すべきはどのセクターなのか」。多くの投資家、そして生活者が抱えるこれらの問いに対し、東大特任准教授・池田伸太郎氏がマクロ経済の視点と、企業の「稼ぐ力」に着目したファンダメンタルズ分析の両面から掘り下げるーー。

 短期連載全3回の第2回。

 みんかぶプレミアム特集「円安・インフレ狂騒曲」第7回。

目次

高市政権が掲げる積極財政と、難易度の高い「インフレの制御」

 これまでの高市首相の発言を踏まえると、円安そのものを直ちに是正すべき最優先課題とは位置づけていないように見えます。むしろ、企業業績(とりわけ輸出比率の高い大企業)を押し上げる側面を意識しており、為替を無理に円高方向へ誘導するインセンティブは強くないでしょう。

 また、政府と日銀は共同声明(いわゆるアコード)の下で、デフレ脱却と持続的な経済成長を掲げて政策運営を続けてきました。その延長線上で政府が志向しているのは、賃金上昇と整合的な「緩やかなインフレ」の定着だと考えるのが自然です。物価が緩やかに上がる局面では名目GDPが増えやすく、税収や企業収益も押し上げられる。一方で、過去に発行した国債の実質的な負担は緩やかなインフレの下で目減りしていく。高市政権はここに危機管理・成長投資を重ねて後押しする意図があります。

もっとも、金融政策における「インフレ目標」の効果については議論の余地がありますが、国家運営の視点に立てば、デフレよりも程よいインフレの方が望ましいのは確かです。これは高市総理個人の認識にとどまらず、周辺のブレーンを含めた共通の見解でしょう。

 ただし、「緩やかなインフレ」は狙い通りに微調整できるものではありません。金融政策にはタイムラグがあり、その間に為替や資源価格といった外部要因が物価を大きく揺さぶります。インフレが強すぎれば家計の実質購買力を損ない、金利上昇を通じて利払い費も膨らむ。弱すぎれば賃上げと値上げの循環が途切れ、デフレマインドが再燃しかねない。インフレの方向性自体は望ましいとしても、「ちょうど良い水準で維持する」こと自体がきわめて難易度の高い政策課題なのです。

賃上げと値上げの好循環が日本経済成長のカギ

 経済成長のカギは、国家の旗振りに加えて「現場の値決め」にあると考えます。賃上げが広がれば家計の所得が増え、需要が下支えされる。そこで企業が、単なるコスト転嫁ではなく「付加価値に見合う値上げ」で収益を確保できれば、その利益が次の賃上げを支えるという好循環が生まれます。たとえば味の素が「値上げを原資に賃上げと製品開発を進め、顧客価値を高める」という発想を前面に打ち出しているように、値上げを次の成長投資につなげられるかが、従来の企業に見られた「値上げを恐れる」というマインドを転換できるかどうかの試金石になるでしょう。

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この記事の著者
池田伸太郎

実業家、投資家、東京大学生産技術研究所特任准教授。博士(工学)。AIソフトウェア開発や技術コンサルティングなどを行う会社を経営しながら、2008年から続けている個人投資家としての活動や大学での経験を活かし、SNSやnoteなどで個人投資家やビジネスパーソンに向けた経済・金融・企業動向等の情報を発信している。文部科学大臣表彰若手科学者賞、空気調和・衛生工学会学会賞(論文賞)などの受賞実績あり。学術の専門領域は人工知能・数理最適化、建築環境・設備工学、技術経営学。

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