第十一話「新たな女」連載小説「奪われるースパイ天国・日本の敗戦ー」
スパイ防止法がないこの“天国”・日本で、知らない間に国が「奪われる」──。
表向きの歴史やニュースの裏側に潜む、冷酷な国際諜報戦と、個人の運命が国家間の巨大な陰謀に巻き込まれていく壮大な安全保障サスペンス小説、ここに爆誕。
舞台は、女性初の内閣総理大臣・高地きみえが熱狂的な支持を背景に「強い日本」を目指す日本。彼女は長年の懸案である日本人拉致被害者の奪還を決意し、極秘裏に北朝鮮の金正恩総書記との会談に臨む。しかし、その外交交渉の裏側では、すでに北朝鮮の体制に「影」が差し込み、巨大な隣国・中国の思惑が絡み合っていた。
第十一話「新たな女」
しばらく悶々とする日が続いた。GTL社の日本支社の研究室でリーダーを務める山田浩一は、たまに許可される友人との会食を楽しんでいた。「山田、もう一軒いくぞ!」。高校時代のクラスメート2人が上京し、赤ら顔で両サイドから浩一の肩に腕を回す。2軒目の英国風パブは金曜日だったこともあり、いつもより混雑していた。カウンターで飲み物を注文し、人にぶつからないようテーブルまで運ぶのも一苦労だった。
もちろん、パブの入り口付近にはいつもの「護衛」が立っている。店内の混雑ぶりに少し苛立っているように見えた。2杯目のハイボールを注文し、会計を済ませた浩一の背後から1人の女性が近寄ってきた。顔は日本人のように見えるが、どうも韓国人らしかった。