年収1000万円はなぜ日本で一番不幸なのか…なぜ年収が低くても幸せなのか

国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、男女合わせた平均年収は443万円である。したがって、平均の2倍以上も稼いでいる年収1000万円は、はたから見れば、裕福で幸せに暮らしているイメージだろう。しかしその実態は幸せとはほど遠く、生活にも余裕がないことが多い。一体何が彼らを不幸たらしめているのだろうか。
年収900万円で所得税33%の不条理
日本で年収1000万円が不幸になる大きな要因は、まず国や自治体のシステムによるものだ。日本の所得税には超累進課税方式が採用されており、所得が多ければ税金の割合も増える。900万円超~1800万円の範囲では、33%の所得税がかかる。330万円超~695万円では税率20%、695万円超~900万円では税率23%だから、これらの場合と比較すると、年収1000万円前後の人は10~13ポイントも所得税率が高くなり、手取りの割合はそのぶん減ってしまうのだ。
また、収入額によっては、控除が受けられなくなることもある。たとえば配偶者特別控除だ。これは配偶者の年収に応じて、最大38万円の控除が受けられる制度であるが、本人の年収が1000万円を超えると、控除が適用されない。
子育て世帯になると、さらなる理不尽が待ち受けている。毎月1万〜1万5千円の児童手当は、年収1071万円を超えるともらえなくなるうえ、保育園の利用料は、年収が上がるほど高くなる。そのほかにも、自治体によっては子ども医療費の支援が受けられない。高等学校の授業料支援が受けられる「高等学校就学支援制度」も約910万円の所得制限があり、年収1000万円世帯は当然対象外である。
児童手当の所得制限は撤廃される方針であるうえ、子ども医療費支援の所得制限がない自治体も増えてきているが、とりあえず現在の状況では、年収1000万円は理不尽な扱いを受けていると感じてしまう。高い税金を払っているにもかかわらず、様々な支援が受けられないのだ。
年収1000万円以上の家庭は、これらの制度設計により、年収1000万円未満の家庭よりも、実際の資金が少ない可能性も考えられる。彼らは本来なら余裕のある生活が送れるはずなのに、家計を支援する各種制度のせいで、本来の余裕が奪われてしまっているようだ。
年収1000万円のプライドと見栄
「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、年収1000万円超えの人の割合は4.9%だ。4ケタ万円の年収は20人に1人しかいないため、自分の収入に優越感を抱く人も少なくないだろう。そして「上位5%」というステータスを可視化しようとする。その結果「上位5%の最下層」であり、さらに制度的に不利であるにもかかわらず、身の丈に合わない生活、浪費をしてしまうのである。