1年で資産が5億円増加……89歳デイトレーダーがそれでも満足しない理由

本稿で紹介している個別銘柄:ニデック(6594)、カバー(5253)、イタミアート(168A)、ミーク(332A)、サイプレス・ホールディングス(428A)、リンカーズ(5131)
2025年は、89歳デイトレーダーの藤本茂氏にとっても資産が大きく増加した年になった。しかし藤本氏は、その結果にも満足しているわけではないという。投資歴70年を超えた藤本氏に、その心境をうかがった。みんかぶプレミアム特集「億り人への最強戦略」第12回。
目次
資産は5億円増の25億円へ
日経平均株価が史上初めて5万円の大台を突破した2025年。大型株やAI関連株を中心に、相場は力強く上昇した。そんな相場環境の中で、89歳の現役デイトレーダー・藤本茂氏の資産もまた着実に増加した。
2025年初時点で約20億円だった資産は、12月末には25億円を突破するまでに増加。70年に及ぶ投資人生の中で、自身の最高額を更新した。
だが、藤本氏自身はこの結果を一切評価していない。「結局日経平均と同じくらいの上昇率やからね。これでは『ようやった』とは言えん。全然満足はできてないわ」。藤本氏が主力とするのは中小型株であり、とりわけ年後半は日経平均株価を構成する大型株に比べさえない動きとなったが、それを言い訳にすることはない。
「『グロースは駄目』というようなやつも駄目や。個々の銘柄で見ればいい銘柄もたくさんある。個別の銘柄で勝てる力を付けないと、ほんまの投資家としては呼べない」と話す。
藤本氏の元には、2025年もたくさんのメディアが取材に訪れた。「2025年、どの銘柄が一番儲かったのか」「高市政権は株式市場にポジティブか」「2026年、日経平均株価はどうなりそうか」―。そんな問いに対して、「どの記者もそんな質問をしてくるけど、そんなんわからんわ」とにべもない。
どれだけ未来を予測しても、その通りの未来がやって来るとは限らない。むしろ「きっとこうなるはずだ」という思いが、投資戦略を狂わせることもある。日経平均は上がるかもしれないし、下がるかもしれない。未来を予測するよりも、実際の株価の動きを見て動くことこそが、藤本氏にとっては重要なのだ。
また、過去の株価の動きを頭に入れることは重要だが、それによって得られた利益を覚えておくことには、次の投資にとって何の意味もない。
不祥事を起こしても売らない理由
藤本氏のやり方は、一貫して「なじみの株を売買する」というものだ。市場から注目されているからといった理由で売買はしない。数十年前から売買している銘柄も多く、売買回数が数千回以上に及ぶ銘柄も複数存在する。
なじみの株については、その企業への信頼が深いがゆえに、株価が急落したからといって売るわけではない。たとえばニデック(6594)。ニデックでは2025年、不適切会計の疑いが浮上し、東京証券取引所からは、1年以内に体制を改善し「内部管理体制確認書」の提出が義務付けられる「特別注意銘柄」に指定された。
そんなニデック株を、藤本氏はいまも売買し続けている。12月時点で保有株の評価額は500万円ほどのマイナスとなっており、藤本氏が高く評価していた同社の永守重信氏も取締役を辞任することが決まった。それでも、「永守さんは『すぐやる・必ずやる・できるまでやる』が信条の人。たとえ取締役を退いても、その遺伝子は会社に受け継がれているはずや」と話す。
一方、「なじみの株を売買する」というのは、「売買する銘柄が変わらない」わけではない。なじみの株を増やすべく、新しい銘柄も日々チェックしている。