「立憲は公明の養分になれ」…中道の逆襲、早くも軋み「『原発反対』の思いで集めた立憲票も『再稼働容認』公明のバッジに」ジャパンファンドにも死角

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 衆議院選挙だ。どれくらいの票がとれるのかなかなか見えてこない中道改革連合だが、早くも軋みが生じているようだ。立憲民主党系の議員は本当に原発再稼働を容認するのか。肝煎り政策のジャパンファンドに死角はないのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

目次

中道改革の比例名簿「主従の生態系」

『ファインディング・ニモ』という映画をご存知だろうか。鮮やかなオレンジ色をしたニモ(クマノミ)を巡る美しい物語だ。

 だが、生物学的な現実は、もう少しシビアで、ある意味では残酷な側面を含んでいることをご存知だろうか。

 イソギンチャクは、自ら動き回って獲物を捕らえることができない。岩場に固着し、ただ水流に身を任せるだけの存在だ。そこで、自由に海を泳ぎ回るクマノミが重要な役割を果たすことになる。クマノミは外から餌を運んでくるだけではない。彼らが食べた後の「食べ残し」や、さらには彼らが排出する「排泄物」が、イソギンチャクにとっては貴重な栄養源となる。

 動けないイソギンチャクは、クマノミが落としてくれる残りカスや排泄物を摂取することで、ようやく命をつなぐことができる。クマノミが主であり、イソギンチャクは従。あるいは、クマノミが家主で、イソギンチャクはその廃棄処理係と言ってもいいかもしれない。美しい共生に見えるその裏側には、排泄物さえも糧にしなければ生きられない、哀れな依存関係が隠されている。

 先日発表された【中道改革連合】の比例名簿を見たとき、私の脳裏に浮かんだのは、まさにこの「主従の生態系」だった。

立憲系は選挙区だけが勝負

 そこには、完璧な計算に基づいた「設計図」が描かれていた。名簿の上位にずらりと並んだ公明党出身の24人の名前。それは単なる候補者リストではない。前回2024年の選挙で、公明党が獲得した議席数と全く同じ数字を、あらかじめ当選圏内として固定してしまう、鉄壁の名簿順位だった。

 選挙とは本来、蓋を開けるまでわからない水物であるはずだ。だが、この名簿は「何があってもこの24席だけは絶対に死守する」という、未来を先取りした確定事項のように見える。公明党からすれば、前回の選挙で小選挙区から当選した4人は、自民党に対抗馬を建てられて落選することが確定的だったはずだ。

 つまり、4議席はなくなる前提だったわけで、中道という政党によって増えた議席となる。逆に立憲系は必死で小選挙区を戦わなければ誰一人当選できない。

哀れな現実が浮かび上がる

 哀れな現実が浮かび上がる。

 今回の衆院選で生まれた「中道改革連合」という枠組みにおいて、かつての立憲民主党は、クマノミの排泄物を待つしかないイソギンチャクになり下がったのではないか、という疑念だ。そして公明党は、その中を悠々と泳ぎ回り、確実に実利を得る賢いクマノミである。

 公明党は、20年以上もの長きにわたり、第1次、第2次安倍政権、そして菅政権を含めた自民党という巨大な政党とタッグを組み、日本の舵取りを担ってきた。その経験値は伊達ではない。彼らは常に「現実的な落とし所」を探り、実務としての政治を前に進めてきた。理想を叫ぶだけでなく、泥にまみれて調整を行い、政策を実現させる能力を持っている。その政策の多くは、極めてまともであり、地に足がついている。

 今回の「中道改革連合」の政策大綱を見れば、その影響力は一目瞭然だ。

 驚くべきことに、中道改革連合は、原発再稼働に賛成し、安全保障関連法制を容認し、さらには辺野古移設までも賛成という立場を明確に打ち出している。

『アイデンティティの反原発は?』左派的活動家が卒倒するような事態

 細かい政策においては、旧立憲民主党的なリベラル色が色濃く残されている。しかし、国家の根幹に関わるエネルギー、国防、外交といった「大枠」の部分においては、完全に公明党のリアリズムが貫かれているのだ。かつて自民党政権下で培った、国家運営の要諦を彼らは決して手放していない。

 これは、旧立憲民主党の支持層、特に左派的な活動家たちにとっては、卒倒するような事態ではないだろうか。

 彼らは長年、「原発ゼロ」「安保廃止」「基地反対」を金科玉条のごとく唱えてきた。それが彼らのアイデンティティであり、正義そのものだったはずだ。しかし、今回彼らが必死に当選させようとしている「中道」という船は、彼らが最も忌み嫌っていたはずの航路を、堂々と進もうとしている。

 実際、現場では早くも軋みが生じているようだ。左翼活動家のような一部の立憲系政治家や支持者たちは、この決定に愕然とし、早くも「話が違う」「公約を撤回させろ」と躍起になっているようだ。選挙戦の最中だというのに、内部で足を引っ張り合い、ちゃぶ台を返そうとする姿は、相変わらずの「決められない政治」「壊す政治」の悪癖を感じさせる。

「立憲は公明党の養分になれ」

活動家気質の強い立憲民主党が、実務能力に長けた公明党に取り込まれ、文字通り「養分」となる。イソギンチャクがクマノミの排泄物を栄養として取り込み、自らの体を維持するように、立憲民主党が公明党という現実主義のフィルターを通すことで、ようやくまともな政治勢力として機能するようになるのではないか。

「立憲は公明党の養分になれ」

 この言葉は、侮蔑ではない。むしろ、行き場を失った野党第一党に対する、唯一の救済策の提示である。

 自分たちだけで政権を担う能力がないのであれば、実績を持つ公明党と一体化し、その指導力の下で、手足となって働くほうがよほど世のためになる。感情的な反対運動しかできない活動家集団が、冷徹な実務家集団に飼い慣らされ、吸収される。それは「中道」という名の巨大な溶鉱炉の中で起きる、必然的かつ健全な化学変化なのかもしれない。

 ただし、この「中道」が掲げる政策の中で、看過できない大きな疑問符がつくのが「ジャパンファンド」構想だ。

 税金に頼らずに運用益で新たな財源を捻出するというアイデアそのものは、評価に値する。確かに、一部から批判があるように、「徴収した税金で政府が運用ゲームなどせず、国民の手に残して自由にその分を使わせるべきだ」という主張には一理ある。だが、これ以上の無秩序な国債発行を食い止められるのであれば、ギリギリ許容しうる範囲だろう。

 しかし、私が指摘したいこのファンドの致命的な欠陥は、「歳出(使い道)」について何らの縛りも設けられていない点にある。

 例えば「収益は全額、消費税減税の財源に充てる」といった厳格な用途制限がなければどうなるか。政治家たちが、まったく効果の怪しいバラマキ政策を行い、「私がこれを実現しました」と実績を誇示したいがための、都合の良い「財布」になってしまう恐れがある。

 公明党周辺から、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用益を流用するというアイデアが出ているのも、相当に危うい兆候だ。GPIFが効果を生んでいるのは、「使途は年金のみ」という鉄の掟があるからに他ならない。ここを崩せば、規律は崩壊する。国民の大事な資産を、政治家の「汚い貯金箱」にさせてはならないのだ。

公明党はかつてないほど安全

 さて、今回の選挙だが、風がどちらに吹こうとも、保守が割れようとも、野党内部で活動家が叫ぼうとも、この24議席だけは揺るがない。立憲民主党の活動家たちが、雪に打たれながら「自民党を倒せ」と叫び、生活の苦しさを訴えて走り回れば回るほど、その声は巡り巡って公明党の地盤を固めるコンクリートとなる。彼らが「原発反対」の思いを胸に秘めて集めた票でさえ、皮肉なことに、原発再稼働を容認する公明党議員のバッジへと変わっていくのだ。

 実に見事な生存戦略と言うほかない。

 政治とは、理想を語る場であると同時に、生き残りをかけた冷徹な計算の場でもある。イソギンチャクに取り込まれたように見せかけて、実はその家主を支配し、自らの繁栄のために使い倒す。そのしたたかさ、その強靭な生命力。

 投票箱の蓋が閉まる瞬間まで、熱狂は続くだろう。雪の弘前で、あるいは東京の雑踏で、マイクを握る候補者たちの声が響く。だが、すべての喧騒が終わった後、静かに、しかし確実に残るのは、あの計算され尽くした24の議席だ。

それでいいのだと思う。いや、それがいいのだ

 飼い慣らされたイソギンチャクと、その中で微笑むクマノミ。

 立憲民主党という巨大なエネルギー源を得て、公明党はかつてないほど安全な海を泳ぎ始めた。左翼活動家たちが集めた票は、濾過され、精製され、公明党という現実的な政治マシーンの動力源となる。そして、そのマシーンが出力するのは、原発再稼働や安保体制の維持といった、国家としての当たり前の営みだ。

 それでいいのだと思う。いや、それがいいのだ。

 活動家たちが騒げば騒ぐほど、公明党の現実路線が際立つ。彼らが汗をかけばかくほど、公明党の議席が盤石になる。哀れなイソギンチャクが、賢明なクマノミと一体化することで、初めて日本の政治に建設的な意味をもたらすことができるのなら、我々は黙ってその「捕食」と「消化」のプロセスを見守るべきだろう。

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