第十二話「データの流出」連載小説「奪われるースパイ天国・日本の敗戦ー」
スパイ防止法がないこの“天国”・日本で、知らない間に国が「奪われる」──。
表向きの歴史やニュースの裏側に潜む、冷酷な国際諜報戦と、個人の運命が国家間の巨大な陰謀に巻き込まれていく壮大な安全保障サスペンス小説、ここに爆誕。
舞台は、女性初の内閣総理大臣・高地きみえが熱狂的な支持を背景に「強い日本」を目指す日本。彼女は長年の懸案である日本人拉致被害者の奪還を決意し、極秘裏に北朝鮮の金正恩総書記との会談に臨む。しかし、その外交交渉の裏側では、すでに北朝鮮の体制に「影」が差し込み、巨大な隣国・中国の思惑が絡み合っていた。
第十二話「データの流出」
USBポートを挿入した瞬間、画面に赤い警告が点滅した。「不正アクセス検知、警報システム発動」。研究所の廊下に大音量の警報音が響く。5分後にキムが現れた時、山田浩一は身構えた。「好奇心が強いですね・・・」。キムは一直線に別のチームで研究を重ねていた深澤信輔のもとに突き進む。手には小型端末があった。「あなたのお嬢さんの写真、綺麗でしょう?」。
キムは静かに笑った。端末には深澤の高校生の娘が映っている。塾帰りと思しき制服姿だ。「・・・家族は関係ないだろ」。深澤の顔がこわばった。「本当にそう思っていらっしゃいますか? あなたが『余計なこと』をする度に、あの子が最初に『影響』を受けるんですよ」。キムは笑いながら、全員に聞こえるように大きな声をあげた。