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絶望的に意味がない「政府の経済安全保障政策」日本企業が中国の脅威から身を守るたった一つの方法

(c) AdobeStock

「経済安全保障」を掲げる日本。しかしその裏で、日本企業の機密情報は静かに奪われ続けている。被害はすぐには見えず、数年後に決定的な打撃となって現れる――そんな「見えない戦争」がすでに始まっている。にもかかわらず、政府の対策は本当に機能しているのだろうか。むしろ政策が市場を歪め、企業の競争力を削いでいる可能性すらある。

 では、日本企業がこの時代を生き抜くために必要なものは何か。国家に依存しない、現実的な防衛のあり方とは――。経済誌『プレジデント』元編集長で作家の小倉健一氏が、現代の「情報戦争」の構造を読み解き、日本が学ぶべき教訓を語る。

 みんかぶプレミアム特集「トランプ、習近平、高市の本音」第6回。

目次

被害の事実にすら気づけない。いま日本企業が置かれている「危険な状態」

 はじめに、読者にお伝えしたいことがある。現在、日本企業を取り巻く環境は極めて危険な状態にあることだ。中国が仕掛けるサイバー空間での攻撃は、建物を壊すような目に見えるものではない。被害者が全く気付かないうちに情報を持ち出し、数年後に解読するという恐ろしい手法をとっている。

 その手法とは、通信の途中で暗号化されたデータを今のうちに盗んでおき、将来、超高性能なコンピュータが完成した時に中身を見るというものだ。被害を受けた大企業や政府機関は、情報が盗まれたことにすら気付いていない。現在使われている暗号の技術は安全だと思い込んでいるからだ。

 しかし、5年後あるいは10年後、日本の製造業の高度な設計図や未公開の特許データといった、時間が経っても価値の落ちない機密情報が解読されればどうなるだろうか。日本の産業は決定的な打撃を受ける。情報を盗まれた今の時点では被害が見えなくても、将来確実に莫大な損害が発生する。被害の種はすでにまかれているのである。

 さらに、文章や画像を自動で作るAIによる情報の奪い合いも深刻である。現在、世界を代表するAI開発企業は、著作権を守るルールに従い始めている。例えば、Googleに「ウチのデータを使わないでほしい」と頼めば、Geminiは情報を集めるのをやめるようになっている。

脅威は中国だけではない。自ら活力を奪う日本政府の「税金の無駄遣い」

 一方で、中国のAI企業は他国の権利を一切無視している。日本の貴重な書籍や研究論文、企業の公開データを無差別に吸い上げているのだ。ルールを守る他国の企業が決して得られない圧倒的な情報量を、不正な手段で手に入れている。結果として、日本の大切な情報が相手の能力を高めるために使われているのである。

 現在起こっている深刻な危機に対し、現在の政権がとっている対策は絶望的なまでに的外れである。政府は「経済安全保障」や「成長投資」といった立派な名目を掲げ、半導体やAIといった特定の分野に巨額の税金をつぎ込んでいる。

 しかし、官僚が未来の成長産業を正しく予測し、適切にお金を配ることなど絶対に不可能である。どの技術が10年後に役立つか、どの企業が最も効率よく資金を使えるかを判断できるのは、無数の参加者が集まる自由な市場だけだ。政府が介入すれば、補助金をもらうことだけが目的の企業や、本来なら市場から退場すべき企業が生き残る。

 結果として、税金の無駄遣いになるばかりか、激しい競争を勝ち抜く力を持った新しい企業の芽を摘んでしまう。画期的な技術を開発する小さな企業は、複雑な手続きをこなす余裕がなく、官僚の顔色をうかがうのが得意な大企業との競争で不利になる。政治家は言葉で国を守ると言うが、実際には市場を歪め、経済の力を弱めているのだ。

核武装する中国との「圧倒的戦力差」国家介入が招く防衛力の自滅

 また、エネルギーの分野でも政府の介入は有害である。石油の価格を抑えるために、政府が石油の元売り企業に莫大な補助金を出している。しかし、価格を無理やり抑えつけたり、売る相手を決めたりすれば、必要な場所に物資が届かなくなる。経済の歴史が証明している通り、政府の介入は品不足を招き、経済全体が立ち直る力を奪うのである。

 防衛政策も意味がわからないことばかりだ。防衛産業とは、国家というたった一つの顧客に頼る市場である。国が保護を与えれば、厳しい競争にさらされることがなくなり、開発費用は膨らみ、納期の遅れが当たり前になる。確かな防衛力の源になる画期的な技術は、官僚に守られた企業からではなく、厳しい民間市場で鍛えられた技術が自然な形で転用されることによってのみ生まれるべきだ。

 日本の現実的な安全保障環境を直視すれば、中国のみが核武装している現状が続く限り、両国の戦力差は圧倒的であると言わざるを得ない。この条件下で正面から戦力を均衡させるのは不可能である。ゆえに手持ちの資源を極限まで活用し、「日本への侵攻は甚大な被害を招く」と強く認識させる抑止力が不可欠となる。だからこそ、防衛力の構築にも徹底した経済効率が求められるのだ。国家の保護によって非効率を温存することは、自ら抑止力を削ぐことと同義である。

 では、日本企業はどうやって身を守ればいいのだろうか。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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