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「自転車罰則強化」を保守主義は拒絶する!国民は未熟で危険だから警察官が細かく指導してあげましょう社会の憂鬱

「市民は未熟で危険だから、国家が細かく指導してあげよう」――そんなパターナリズムが、自転車の罰則強化という形を借りて私たちの生活を侵食している。112種類もの細かな規則で国民を縛ることは、果たして真の安全に繋がるのか。経済誌『プレジデント』元編集長で作家の小倉健一氏が、大人としての「自己責任」と「個人の自律」を重んじる保守主義の立場から、監視社会化する日本の現在地を問い直す。

 みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」

目次

保守主義が鳴らす警鐘、自転車への青切符制度は「行き過ぎた介入」ではないのか

 結論から言おう。2026年4月に導入された自転車への青切符制度は、地域社会が長い時間をかけて育ててきた暗黙のルール、すなわち「自発的に生まれた秩序」を、現場を知らない役所からの命令で壊してしまう、行き過ぎた介入である。

 自転車に対する罰則が厳しくなった。一見すると、交通安全を守るための正しい政策に思えるかもしれない。しかし、国家権力がどこまで個人の生活に踏み込むべきかという保守主義の立場から見つめ直すと、危うい問題が浮かび上がる。

 保守主義とは、単に古いものを守るだけの考え方ではない。国家の権力が大きくなりすぎることを警戒し、個人が自立して責任を持つこと、そして地域社会のつながりを重んじる立場である。自由を重んじる保守主義の視点から、新しい法律に潜む問題点を読み解いていきたい。

青切符導入で変わる構図――国家権力が日常の移動に踏み込む時代

 まず第一に、手続きを効率良くするという名目で、国家権力が大きくなっている問題について論じたい。過去においては、自転車の悪質な違反を取り締まるためには、赤切符と呼ばれる刑事上の重い手続きが必要であった。

 手続きが非常に複雑であり、警察にとっても、違反した市民にとっても負担が大きかった。ゆえに、よほど危険な行為でなければ、警察が直接的に罰を与えることは少なかったと言える。権力を使うことに対して、一定のブレーキがかかっていたわけである。

 しかし、今回、青切符という「行政罰」が導入された結果、現場の警察官の判断だけで、極めて簡単に反則金を求めることができるようになった。警察庁は、違反の処理が限界を超えていたため、手続きを簡単にして早く処理するためだと説明している。だが、罰を与えるハードルを下げることは、国家権力が市民の日常的な移動手段に対して、いつでも簡単に口出しできる状態を作り出すことと同じである。

「あなたたちは未熟で危険」市民の自律を奪う国家の”おせっかい”

 権力は、使いやすくなればなるほど、必ず大きくなっていく性質を持っている。保守主義は、国家が効率よく国民を管理する状態を強く警戒する。生活の隅々にまで警察の監視が行き届く社会は、自由な社会とは呼べない。

 第二に、市民が自分で決める権利を奪う、過度なおせっかいの問題である。難しい言葉で言えば、パターナリズムと呼ばれる問題である。国家が親のように振る舞い、「あなたたち市民は未熟で危険だから、私たちが細かくルールを決めて指導してあげよう」という態度をとることである。

 もちろん、交通事故を防ぐことは重要である。万が一、自転車で事故を起こし他者に損害を与えたならば、運転した人は厳しく責任を問われなければならない。民事上の賠償責任を負い、必要であれば自転車保険によって被害者を救済する。大人として、自分の行動には自分で責任を持つ。自己責任の原則である。

 しかし、新しく始まった青切符の制度は、事故を起こす前の段階、つまり「もしかしたら危険かもしれない」という軽い違反の段階で、国家が先回りして罰を与える制度である。112種類もの細かな違反項目を定め、少しでもはみ出せば反則金を取る。大人をまるで子供のように扱い、自発的に安全を確認する能力を信用していない。市民から「自分で考え、判断し、責任を負う」という自立の機会を奪い去るものである。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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