間違えたら、手取りが大きく減る・・・マネーコンサルタントが警鐘を鳴らす「年金の受け取り方」と「退職金の受け取り方」

新NISAの開始以降、インデックス投資に踏み出す現役世代は一気に増えた。毎月積み立てをしながらも、「本当にこのペースで老後資金は足りるのか」という不安の声も多い。
「オルカンやS&P500を毎月必死に積み立てをしている人は多いかもしれません。そんなみなさんに朗報です。大丈夫です。老後はなんとかなります」──。マネーコンサルタントの頼藤太希氏は断言する。
そもそも老後に必要なお金はいくらか。ゆとりある老後を送るにはいくら必要か。定年前後で取るべきお金の戦略とは。
ライフプランニングと資金戦略のプロが語る、いまからやっておくべき人生戦略。連載全3回の最終回。
目次
年金は「繰り下げ受給」、退職金は「一時金」が基本
定年前後には、「年金の受け取り方」と「退職金の受け取り方」という2つの大きな選択が待っています。この2つの判断を間違えると、手取りが大きく目減りしてしまう。いわば「見えない増税」を受けてしまうんです。
まず、年金について。私は基本的に「繰り下げ受給」をおすすめしています。年金は本来65歳から受け取り始めるものですが、1カ月繰り下げれば毎月の受給額は0.7%ずつ増額されていきます。70歳まで繰り下げれば42%増、75歳まで繰り下げれば84%増です。
65歳時点の平均余命は、男性で85歳、女性で90歳まで生きるのが標準的です。それを踏まえると、68〜70歳あたりで受給を開始するのが、手取り面で得をする一つの合理的なラインです。
私がよく言うのは、「繰り上げて後悔するのはこの世、繰り下げて後悔するのはあの世」という言葉です。繰り上げで早くもらい始めて後悔するのは、長生きしている本人です。一方、繰り下げて損したと感じるのは、亡くなった後の世界の話。生きている間は、繰り下げしたほうがお得なんです。
次に、退職金。これは「一時金受け取り」が基本です。理由は、退職所得控除という税制優遇が非常に強力で、しかも一時金受け取りでは社会保険料がかからりません。
一方、年金形式で受け取ると、そのぶん税金や社会保険料の負担が重くなってしまうんです。深く考えずに選択すると、数百万円単位で手取りが変わることも珍しくありません。
ちなみに、退職所得控除にはちょっとしたルールもあります。勤続年数の端数は「切り上げ」で計算されるので、ちょうど20年で退職するより、20年と1日働いて退職したほうが、非課税枠である退職所得控除が70万円広がります。退職日を自分で調整できる場合は、こうした細かいルールも押さえておくと、手取りに差が出てきます。
日本は「申請主義」、黙っていたらもらえない
もう一つ、定年前後で押さえておきたいのが、「日本は申請主義の国」という現実です。
この国の制度は、基本的に「自分で手を挙げた人にしかお金を出さない」仕組みになっています。例えば、年下の配偶者を養っている場合に受け取れる「加給年金」という制度があります。金額は年間で約40万円。決してバカにならない金額です。
ところが、この加給年金、毎年届く「年金定期便」には一切記載されていません。65歳になる3カ月前に届く年金請求書の中に、「該当する場合は記入してください」と書いてあるだけ。該当するかどうかは自分で調べて、自分で申請しない限り、もらえないんです。
他にも、60歳以降に再雇用などで賃金が75%未満に下がった場合にもらえる「高年齢雇用継続給付金」など、知らないと取り逃がす制度はいくつもあります。会社でも、こうした制度はほとんど教えてもらえません。教えてもらえるのは退職金の受け取り方くらいでしょう。
生命保険料控除も、住宅ローン控除も、医療費控除も、お住まいの自治体独自の給付金や補助金などもすべて自分で申請しないと適用されない。この国では、「黙っていたら何ももらえない」のが大原則なんです。
老後の手取りを守るには、自分で情報を取りに行く姿勢が欠かせません。現役世代にとってはまだ先のことになりますが、知らないと損をするという仕組みが、定年前後にはたくさん眠っているということを知っておいてほしいですね。