高千穂交易(2676)が上場来最高益を更新 万引き防止システムからデータセンター需要まで、目利き力が支える成長力
1952年創業の高千穂交易(2676)は、1970年に「万引き防止システム」を日本でいち早く導入するなど、次に伸びる技術を先読みして事業を展開してきた技術商社です。直近でも世界初のランサムウェア対策プラットフォームの日本展開や、生成AI需要を見込んだ光関連製品の取り扱いスタートなど、その「目利き力」は健在です。
その成果は数字にも表れており、2026年3月期は営業利益・経常利益ともに上場来最高を更新。2027年3月期は営業利益・当期純利益においてさらなる上場来最高益を計画しています。
さらに2027年3月期からは配当を下げない「累進配当制」を導入し、成長投資と株主還元の両立に踏み出します。この記事では、高千穂交易の目利き力の正体、過去最高益を支えた事業構造、そして新しい配当方針まで、同社の実力を分析します。
※2026年3月期決算の情報を基に作成しています。
KEY POINTS
- 1970年の万引き防止システム日本初導入から半世紀以上、次の成長領域を先取りする仕組みを持つ
- 2026年3月期の営業利益・経常利益は上場来最高を更新。2027年3月期は営業利益・当期純利益においてさらなる最高益を計画
- 2027年3月期の配当は前期と同額の76円。累進配当制の導入で「下がらない配当」へ転換

目次
高千穂交易(2676)とは?商社なのに社員の4割がエンジニアの技術商社
高千穂交易は、1952年創業、東京・四谷に本社を置く技術商社です。

事業は大きく2つに分かれています。ひとつは監視カメラや入退室管理システムなどを手がける「ビジネスセキュリティ」、もうひとつは半導体・電子部品・機構部品の販売から設計支援まで行う「エレクトロメカニクス」です。

高千穂交易の名前を一般消費者が意識する機会は少ないかもしれませんが、実は身近な場所で同社の製品と接しています。
1970年に日本でいち早く「万引き防止システム」を販売したのも同社で、以来、店舗の防犯カメラやオフィスの入退室管理、データセンターのセキュリティシステムなど、企業の「守り」を支える存在として事業を広げてきました。
また、一般的な商社のイメージとは異なり、同社は社員の4割以上をエンジニアが占めています。

単にモノを仕入れて売るのではなく、設計から設置・保守まで一気通貫でサポートできる体制を持っているのが特徴です。
成長領域を先取りする「目利き力」― 万引き防止からランサムウェア対策まで
高千穂交易の強みは、時代の一歩先を読んで新しい技術を発掘し、いち早く日本市場に投入してきた実績にあります。

1960年代からアメリカにオフィスを構え、1970年代にはシリコンバレーにも拠点を設置。最先端技術の情報をいち早く集める仕組みを、半世紀以上前から築いてきました。
その成果が、1970年の「万引き防止システム」日本初導入です。以降も2002年にリモートアクセスシステム、2013年にクラウド型無線LANシステムと、時代ごとに次の需要を的確に捉えてきました。

さらに、直近で注力しているのがデータセンター向けセキュリティです。日本に進出する外資系データセンター十数社のうち、3割超がすでに高千穂交易と取引があります。世界のトップメーカー製品を扱えることに加え、過去5年間の実績でサブコンや設計会社との関係を築いてきたことが強みです。

中期経営計画の最終年度(2028年3月期)にはデータセンター向け売上高を2025年3月期比で2倍超にする計画を掲げており、すでにその6割超の受注が積み上がっています。
目利き力を示すもう一つの事例が、ランサムウェア対策です。2025年6月、世界初のランサムウェア対策プラットフォーム「halcyon(ハルシオン)」を日本で初めて販売する権利を取得しました。

感染後も迅速なデータ復旧が可能な点が特徴で、話題のランサムウェア攻撃グループ「Qilin」を撃退した実績もあります。すでに製造業を中心に受注を獲得し、直近では1万ライセンスの大型案件も獲得。数年内に100社・10万ライセンスの導入を目指しています。
さらに直近では、2026年6月に光関連製品の取り扱いを開始。AIデータセンターでの光通信需要拡大というタイミングを捉えた展開を進めています。
上場来最高益を支えたデータセンター需要とサブスク収益
高千穂交易の2026年3月期は、売上高295億1,000万円(前期比+5.0%)、営業利益20億9,800万円(+0.9%)、経常利益24億800万円(+20.1%)となり、営業利益・経常利益はともに上場来最高を更新しました。

牽引したのはビジネスセキュリティ事業です。
データセンター向けの入退室管理システムや監視カメラシステムの販売が好調だったほか、タイで展開する海外子会社の防火システムなどのグローバル事業も伸長。営業利益率は9.3%まで上昇しました。
一方、エレクトロメカニクス事業は、車載機器向け半導体の反動減に加え、円安による仕入コスト増加や成長投資に伴う販管費増加が響き、減収減益となりました。ただし2027年3月期は、新たに取り扱いを始めた光関連製品が牽引し、増収増益に転じる計画です。
業績を支えるもう一つの柱が、サブスクリプション型ビジネスです。

2026年3月期の売上高は27億2,600万円(+8.1%)に成長。営業利益率は約20%と高水準で、比較的利益率の高いクラウドライセンスの伸びが押し上げ要因となっています。一度契約すれば継続的に収益が積み上がる仕組みのため、業績の安定性を高める土台になっています。
「下がらない配当」導入の裏側 ― 配当性向100%から累進配当制へ
高千穂交易の配当方針は、2026年3月期から2027年3月期にかけて大きな転換点を迎えています。
2026年3月期の年間配当は1株あたり76.0円で、前期比4円の減配となりました。これは投資有価証券の評価損を計上したことにより、当期純利益が減益となり、「配当性向100%」という方針のもと、その期の純利益に連動して配当額を決めたためです。

2025年3月に開示した中期経営計画では、3年間で60億円の成長投資を行う方針が示されています。成長投資と株主還元の両立を図る中、2027年3月期の配当は前期と同額の76.0円とする予定です。
そして2027年3月期からは、「累進配当制」が導入されます。累進配当とは、配当を原則として減らさず、維持または増配を続ける方針のことです。これまでの「利益の何%を配当に回すか」という配当性向ベースの考え方とは異なり、たとえ利益が一時的に落ち込んでも配当額そのものは維持されます。
配当性向100%から累進配当制への切り替えは、会社としての先行きへの自信の表れとも言えます。その裏付けとなっているのが、サブスクリプション型ビジネスで積み上がる安定収益です。景気に左右されにくい収益基盤があるからこそ、「配当を下げない」という約束に説得力が生まれています。
2027年3月期は上場来最高益更新の計画 ― 注目すべき2つのポイント
高千穂交易は2027年3月期、ビジネスセキュリティ・エレクトロメカニクスともに増収増益を計画しており、営業利益・当期純利益は上場来最高益をさらに更新する見通しです。目利き力によって育ててきた事業が、着実に成果として表れつつあります。
一方で、今後の進捗を注視すべきポイントも2つあります。
ひとつは、エレクトロメカニクス事業の回復です。2027年3月期は、新しく取扱いを始めた光関連製品で大幅な増収を見込んでいます。この計画通りに販売が進むかどうかが、事業全体の回復ペースを左右します。
もうひとつは、halcyonをはじめとする新サービスの収益化スピードです。サブスクリプション型ビジネスの拡大は同社の成長戦略の柱であり、これらの新サービスがどれだけ早く収益に結びつくかが、今後の四半期ごとの注目点になります。

高千穂交易は70年以上にわたり、時代に先駆けて種をまき、それを育てて成長を続けてきた会社です。この目利き力の仕組みが、次にどの成長領域を捉えるのか注目されます。