2025年3月期は二桁の「増収増益」。堅調な成長路線を歩む株式会社ナック(9788)

独自の観点で注目企業の価値を分析するMINKABUマトリクス企業分析。
今回は、「暮らし」と「住まい」に寄り添った多角化経営で成長を続ける株式会社ナック(9788)を2025年3月期2Qベースで分析します。
Key Points
- クリクラ事業やレンタル事業など暮らしと住まいに寄り添った5つの事業を展開
- 前年同期と比べ7.8%UPの増収で2025年3月期は二桁の「増収増益」
- 5つの事業それぞれに明確な目標を設定し、二桁成長と強気な業績予想を発表
目次
ナックってどんな会社?
ナックは1971年に東京・町田市で株式会社ダスキンのフランチャイズ加盟店として創業した企業です。1984年にダスキン事業売上日本一を達成し、現在もトップを維持しています。
創業以来、消費者のお困りごとを担うために様々な事業に取り組んできたナック。宅配水「クリクラ」や浄水型ウォータ ーサーバー「feel free」などの製造販売をするクリクラ事業、ダスキンのフランチャイズ加盟店を主力としたレンタル事業の他に、建築コンサルティング事業、住宅事業、美容・健康事業など、「暮らし」と「住まい」に寄り添った多角化経営で成長を続けています。
サステナビリティにも貢献。営業利益の46.6%を占める「クリクラ事業」
ナックの主力事業の一つである「クリクラ事業」は、営業利益の46.6%を占めており、売上高は全体の28.0%を占めています(2024年3月期通期)。約1万坪の敷地に総額60億円を投じて2015年に建設されたクリクラ本庄工場は、国内最大級の宅配水生産工場として稼働しています。
「クリクラあんしん宣言」のもと、56項目の厳しい水質安全基準を満たしたミネラルウォーターを自社の専任スタッフが配送。全国各地に拠点があるため、「物流の2024年問題」も深刻な問題には発展しませんでした。
クリクラは全国44カ所に製造工場があるため、長距離輸送によるCO2排出抑制を実現。また、使用した空ボトルはすべて配送員が回収・洗浄し再利用するなど、サステナビリティにも貢献しています。2009年には宅配水業界で初めて「エコマーク」を取得しました。
さらに、「災害救援物資の供給等に関する協定」を全国の市町村と締結しており、災害発生時には備蓄水のインフラとして全国の自治体と連携する体制を整えています。
ダスキン代理店の最大手。ナックのレンタル事業
1984年にダスキン事業売上日本一を達成したナックは、全国約1,900店の加盟店で売上高・顧客数ともにNo.1を継続しており、関東を中心に札幌、大阪、名古屋、福岡にもエリアを拡大しています。事業所や家庭への清掃用品の定期レンタルに加え、プロによる清掃サービス、家事代行、害虫駆除、庭木のお手入れ、リペアも提供しています。
2018年には株式会社ダスキンと資本業務提携契約を締結。6年間で120以上の拠点を増設し、年間20億円以上の売上増加を達成しました。現在は投資回収フェーズに入っており、2023年11月8日に第2期共同プロジェクトを発足。両社の事業拡大に向け未来を見据えた新しい施策を計画しています。
グループで約90万件の定期顧客を獲得
クリクラ事業約42万件、レンタル事業約33万件、通信販売(美容・健康事業)約11万件と、グループで約90万件の定期顧客を抱えるナック。定期契約以外のOB・スポット顧客を合わせると年間で130万件にのぼり、安定した顧客基盤がナックの強みです。
また、顧客基盤に対して「Face to Faceの営業」によるダイレクトマーケティングを行い生の声を集約することで、市場の変化を一早く察知し顧客の求めるサービスを提供しています。
ナックの企業価値を4つの独自視点からチェック!
次に、ナックの企業価値について分析していきましょう。評判(価値)、実利(実績)、共感(志向)、姿勢(ESG)の4つの観点からチェックしていきます。
各分析の結果はこちら。
1.評判価値:Very Good
2024年11月14日現在の時価総額は、267億9百万円。個人および中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベルにあります。また、PERは10倍以上の17.24倍、PBRも1倍を割っておらず評価できる内容となっています。
2.実績(業績)価値:Very Good
前期末の「減収減益」から2025年3月期2Q業績は前年同期と比べると7.8%UPの増収で「増収増益」へと転じており、堅調な成長路線を歩んでいます。
3.共感(志向)価値:Very Good
市場動向が不透明ななか、中期経営計画のもと多角化経営のメリットを活かして事業間のシナジーを追求した戦略を展開中です。
4.姿勢(ESG)価値:GOOD
サステナブル経営を推進する前向きな意識は評価できるものの、管理職における女性比率は3.7%とサービス業としては低く、今後の改善が期待されます。
それでは各項目について詳しく見ていきましょう。
PER17.24倍 配当性向は63.2%の高還元率
2024年11月14日現在の時価総額は、267億9百万円と200億〜500億円の間で、個人および中小型株ファンドがターゲットとする時価総額レベルにあります。PER(株価収益率)は一般的に「15倍前後ならば普通、20倍を超えるようなら割高」といわれるなか、17.24倍という数値に。
また、PBR(株価純資産倍率)は1倍が基準として見られることが多いのですが、ナックは1倍を割っておらず、評価できる内容となっています。
また、2024年3月期の配当性向は63.2%と還元率が高く、2021年3月期の記念増配分を除くと5期連続で増配予定となっています。
前年同期と比べ7.8%UPの増収。営業利益は25.3%UPで「増収増益」
売上高は278億36百万円で前年同期と比べると7.8%UPの増収。営業利益は25.3%UPで「増益」となっており、2025年3月期は二桁の「増収増益」に。
一方、最終利益は△61.6%と「減益」になっていますが、投資有価証券評価損による「特別損失」を計上したためで、一時的な現象だと考えられます。特に、コロナ関連需要の低下でレンタル事業、少子高齢化に伴う住宅着工数減少などで建築コンサルティング事業が影響を受けているため、当面は市場動向に引き続き配慮する必要があります。
分かり易い企業姿勢と計画に基づいた成長戦略が強み
ナックの強みは、時代のニーズを先読みした商品展開とノウハウ提供で培ってきた「専門知識に基づく対応力」による多角化経営。最終年度を迎える中期経営計画はパンデミックや資材価値・資金の高騰や入手不足の影響を受け、当初の計画通りに事業戦略を実行することが難しく、通期業績は計画を下回る見込みです。しかし、そんななかでも5つの事業それぞれに明確な目標を設定し、二桁の増収増益と力強い業績予想を発表しているのは評価できるポイントです。
一方で、為替やコスト高などを踏まえて市場動向には引き続き注視が必要です。また、今後の課題は東証プライム市場の上場基準を2025年12月末までに充足させることが挙げられます。さらに、社名と取り扱いブランドの紐づけを行うなどの知名度向上戦略も重要なポイントとなっています。
サステナブル戦略は評価できるものの女性管理職の比率は改善期待
気候変動に対するTCFD提言への賛同を表明し、環境面における削減数値を開示しています。サステナビリティ戦略として、全国の営業所や工場で太陽光発電や地熱発電などの再生可能エネルギーの利用を促進しているほか、自社で蓄積したノウハウをもとに企業の省エネコンサルティングや省エネ住宅も販売しています。また、ゴミ削減に加え、GHGガス排出削減にも取り組んでいます。
一方で、管理職における女性比率は3.7%とサービス業としては低く、今後の改善が期待されます。社外役員は、11名中5名で45.5%、また女性役員は2名で18.2%となっていますが、国内平均レベルにとどまっています。
サステナブル経営を推進する前向きな意識は伺えるものの、ESG戦略のいっそうの強化が望まれます。
市場動向が不透明ななか、「暮らし」と「住まい」に寄り添った多角化経営で成長を続ける株式会社ナック(9788)をご紹介しました。