“地域特化”に株主優待を刷新した「地銀トップ」コンコルディアFG 利上げ追い風に純利益17%増へ

記事のポイント
- “地銀No.1”の横浜銀行を中核とした金融グループ「コンコルディアFG」
- 株主優待を地域の特産品を掲載したカタログギフトに変更するなど株主還元にも力をいれる
- マーケットポテンシャルの高い神奈川・東京でソリューションビジネスを展開し今後の収益増加を目指す
「金利のある世界」が再び訪れ、その影響に関心が高まっています。
日本銀行は2024年3月、マイナス金利政策と長短金利操作(YCC)を解除し、同年7月には政策金利を0.25%程度へ引き上げることを発表。みんかぶ・株探が集計する人気テーマランキングでは「金利上昇メリット」など利上げに関連するキーワードが上位に入りました。さらに、25年1月24日、日銀が政策金利0.5%程度への引き上げ決定を発表するなど、金融機関を取り巻く環境は大きな変化を見せています。

地方銀行もまた、17年ぶりの利上げによる影響を強く受ける業種のひとつです。なかでも、神奈川・東京エリアという日本屈指の経済都市で事業を展開する「コンコルディア・フィナンシャルグループ(7186)」は、地銀トップクラスの企業規模と収益力を誇ります。長い歴史の中で培ったノウハウと地域社会からの信頼、そして戦略的M&Aなどを武器に企業成長を続ける同FG。今年3月末から株主優待を地域に特化した内容に変更するなど、地域、そして株主への還元に積極的な姿勢が見てとれます。
目次
横浜銀行を中核とした地銀No.1金融グループ
コンコルディアFGは、100年以上の歴史を誇る「横浜銀行」を中核とする金融グループです。2016年4月、同行と東日本銀行が経営統合して設立され、23年に神奈川銀行が連結子会社として加わりました。
コンコルディアFGという社名には、「調和」や「協調」を意味し、「お客さまのために、グループ各社がこころをあわせて取り組んでいく」という思いが込められています。
コンコルディアFGが発足してから8年以上が経過し、グループ各社の連携が深まり、当初の思いに込めた役割を果たしたと考えたことに加えて、より広く、わかりやすく認知してもらうことを目的に、10月に「横浜フィナンシャルグループ」へと社名変更を予定。「地域に密着した金融グループ」としての成長を目指しています。
24年3月末時点での預金残高は20兆円、貸出金残高は16.6兆円と、地方銀行のなかでトップクラスの座に位置しています。

地方銀行トップクラスの企業規模と収益力の根底にあるのは、神奈川県・東京都という、世界でも有数の巨大経済都市から得ている信頼です。両地域には国内総人口の約20%が集中し、上場企業の約60%が集積、民営事業所や富裕層が集中するなどマーケットとしての潜在力が高いと言えます。

この地域において、同FGは208店舗を展開し、グループの総合力による専門性の高いソリューションを提供。法人約25万社、個人約500万人という強固な顧客基盤を築いてきました。
特に主要マーケットである神奈川県内では、大手行(メガバンク+りそな)を抑えて貸出金シェア1位を記録し、預貸金シェアを着実に伸ばしています。

株主還元にも表れる地域第一の経営理念
地域トップの金融グループとして、コンコルディアFGが掲げている経営理念は「地域にとってなくてはならない金融グループ」です。長期的に目指す姿は「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」。この企業姿勢は株主還元策にも表れています。
コンコルディアFGは昨年、株主優待制度を2025年3月末から変更すると発表しました。これまでは定期預金金利上乗せなどを優待メニューとしていましたが、神奈川県・東京都の企業が扱う特産品などを中心としたカタログギフトへと切り替えます。

保有株式数1,000株以上5,000株未満で3,000円相当、5,000株以上で6,000円相当のカタログギフトとなり、横浜銘菓などの特産品や特定の地域の商店街などで使える商品券、レストランの利用券などがもらえる予定です。口座の有無に関わらず全国から広く株主を募り、特産品や地域への送客につながる体験型ギフトなどを優待品とすることで、地域の優れた魅力を発信するとしています。
25年3月末日基準では保有期間の定めはなく、26年3月末の基準日以降は株式を継続して1年以上保有していることを優待の条件にする予定です。

総合力を活かした地域密着型のソリューションビジネス
総合的な金融グループとしてソリューション・カンパニーを目指す同FGの姿勢がさらに色濃く反映されたのが、24年度まで(2022年4月~2025年3月)の中期経営計画です。
企業価値向上に向けた取り組みとして、PBRと相関性の高いROEの改善を中核的な経営目標に設定。「変革を加速し、成果を具現化する3年間」として、以下の3つを基本テーマに掲げ、重点戦略を敷いています。

特に注目したいのが、ソリューションビジネスの深化・拡大と戦略的投資・提携の活用を掲げる「Growth(成長)」の部分です。
他地域の地方銀行と異なり上場企業の多い神奈川県・東京都にあって、コンコルディアFGは資本効率の改善や企業価値向上のための提案など、シンプルな融資にとどまらない高度な金融技術を活かしたソリューションビジネスを展開しています。
こうした事業戦略がストラクチャードファイナンス(仕組み金融)などのより収益性の高い貸出の増加につながり、収益増加を実現しています。

個人の顧客に対しては、ライフステージに応じた幅広いソリューションを提供していることに加えて、特に富裕層には、相続・事業承継や不動産活用、金融資産運用に関するコンサルティングなど様々な課題に対応したサービスをオーダーメイド・ワンストップで提供することで貸出やコンサルティングによる収益を拡大しています。

また、戦略的M&Aを通じた新たな成長機会の獲得に向けた取り組みを進めています。
24年11月には三井住友トラスト・ローン&ファイナンス(以下「L&F」)の子会社化を発表しており、25年4月に三井住友信託銀行から株式の85%を取得する予定です。
L&Fはおもに個人顧客を対象とした不動産担保金融領域において、長年培った独自の審査ノウハウのもと、銀行が必ずしも十分に対応できていない顧客への多様な金融ニーズに対応するノンバンク領域に強みを持つ企業です。
空き家・築古物件の増加など社会構造の変容に伴う金融ニーズ多様化への対応力強化を通じて、地域社会の課題解決に貢献するとともに、新たな成長機会を獲得することを目的としています。今回の子会社化をつうじて、ROEは0.4%ポイント程度改善することを見込んでおり、今後もこのような戦略的M&Aにも積極的にチャレンジしていくとしています。

日銀の利上げや国内営業部門の好調を受け、24年度業績予想を上方修正

24年度(2024年4月~2025年3月)決算における当期純利益の見通しについては、日銀の利上げに伴う貸し出しの利ざや改善などを追い風に、従来予想を35億円引き上げ、前期比17%増の785億円へと上方修正しています。中期経営計画策定時には24年度(2024年4月~2025年3月)のROE目標を6.0%としていましたが、業績が好調に推移していることもあり、6.6%での着地を見込んでいます。
25年2月に発表した24年度第3四半期(2024年4月~2024年12月)決算では、当期純利益が通期業績予想比79.9%と好調に進捗しています。
次期中期経営計画では、3つのドライバーによりROEを向上
25~27年度(2025年4月〜2028年3月)の次期中期経営計画でめざす水準としては、ROE8.0%を前提に議論中としています。長期的な目標であるROE9.0%以上の達成に向けて、ROE成長を実現するドライバーとして、3つの取り組みの強化を掲げています。
まずは、本業である「ソリューションビジネスの深化・拡大」、そして、L&Fのような「戦略的投資による成長加速」に加えて、「株主還元の強化」に取り組んでいきます。

株主還元は、還元方針として、累進的な配当を基本とし、配当性向は40%程度とすることに加えて、機動的に自己株式を取得していくことを掲げています。コンコルディアFG設立以来、減配はなく、1株あたり配当金を着実に向上させています。好業績を受けて今年度の年間配当は、前期比+4円の27円を予定。自己株式取得も含めた総還元性向は50%程度以上で推移しており、24年度(2024年4月~2025年3月)については65%程度となる見通しです。

地域と株主への還元を充実 「金利のある世界」でさらなる成長に期待
直近の好調な業績に目を取られがちではありますが、グループ創設の2016年以降から俯瞰してその成長を見てみると、マイナス金利政策で銀行業界が苦戦するなかでも2020年以降、ソリューションビジネスへの転換を機に自力で業績を成長させてきたことが見て取れます。

これは日本の経済中心地である神奈川県・東京都のなかで、上場企業をはじめとした地域の企業・個人にしっかりと向き合ってきた結果と言えるでしょう。
特に中核となる神奈川県は、全国2位の生産人口(約580万人)を抱え、県内総生産は35兆円を超える(2021年度)など、フィンランドの国内生産に匹敵する額で、一国の経済に並んでいます。
国際交流都市として外資系企業の進出も進み、新しいビジネスチャンスが日々生まれる地域。その地域に根ざし成長を続けるコンコルディアFGは、株主優待制度でも「地域密着」の姿勢を強化し、株主、そして地域への還元をますます充実させています。
多角的なソリューションビジネスの展開と地域で選ばれる信頼を武器に業績アップを実現し、積極的な株主還元に力を入れるコンコルディアFGは、再び訪れた「金利のある世界」で魅力的な投資対象となり得るかもしれません。