FP(ファイナンシャルプランナー)がニュースを斬る

第1回 熱海土石流災害[その1]頻発する集中豪雨、「万が一」に備えて行政支援をマークせよ!

古田 靖昭
公開)
熱海土石流災害【その3】
写真はイメージです

本連載は、ニュースで報道される事件・事故などをファイナンシャルプランナーが調査して、「損害額はどれくらいか」「行政の支援はあるのか」「損害に備えるための手段は何か」といった情報を、皆さんにお伝えいたします。

第1回は、令和3年7月に起きた熱海土石流災害を取り上げます。

今年は大雨による被害が多く発生し「近くの川が氾濫したらどうしよう」「がけ崩れが起きたらどうしよう」と思った人も多いのではないでしょうか。

本記事でお伝えする被害状況、災害支援の実態、土砂災害を保障する損害保険などの情報は、皆さんがこうした災害に遭われた際に必ず役立つものです。

「災害対策をしていない」「災害対策が十分か不安だ」という人はぜひご一読されて、今後の対策にお役立てください。

目次

熱海土石流災害の概要

令和3年7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で大規模な土砂災害が発生しました。

気象庁によると、このとき静岡県の複数の地点で72時間降水量が観測史上1位を更新するなど、静岡県から南関東にかけて記録的な大雨となりました。

熱海の豪雨災害降水量分布図
(気象庁「7月1日から3日の東海地方・関東地方南部を中心とした大雨」から引用)

熱海市伊豆山地区の土砂災害では、大量の土石流によって家屋が流失したり、浸水したり、泥水が家に流れ込んだりといった被害が発生し、被害状況は、128棟135世帯、死者・行方不明者は27人、避難者数は176人となっています(8月27日現在)。

この災害では、多くの被災者が命を失い、ホテルや旅館などへの避難を余儀なくされ、土石流発生から50日以上経った8月末でも、いまだ行方不明者の捜索活動が続けられているという状況です。

今回、熱海土石流災害に見舞われた多くの方々に深くお見舞いを申し上げるとともに、災害支援・復興復旧関係者のご努力に対してもこの場をお借りして敬意を表したいと思います。

行政支援の概要

熱海土石流災害に対して行政が行っている支援策は、大きく分けて3つあります。

生活の再建 住まいの確保、災害廃棄物の処理、被災者支援、金融支援等
生業の再建 中小・小規模事業者の支援、観光復興に向けた支援、農林漁業者の支援
災害復旧等 公共土木施設等の災害復旧等、被災した地域の復興

(内閣府「令和3年7月1日からの大雨による被害状況等について」から引用改変)

生活の再建については、被災者生活再建支援法が適用されたため、住宅が全壊した世帯に対して最大300万円の被災者生活再建支援金が支給されます。また住宅を補修する際は、災害救助法の「住宅応急修理」による給付も併せて受けることができます。

また災害によって亡くなった遺族に対して災害弔慰金や災害障害見舞金の支給、生活再建のための災害援護資金の貸し付けが行われます。さらに住宅金融支援機構による低利融資などもあり、被災者がアクセスしやすいように市の施設に相談窓口が開設されています。

罹災証明の交付

上記のような行政支援や損害保険金の支払いなどを受けるにあたって「罹災証明書が必要」ということは、注意しなければいけない点です。

交付の手続きは、まず被災者から市へ申請し、それを受けて市が被害状況の調査をします。

調査が終わると市が被害の程度を認定し、被害を証明する罹災証明書が作成され交付されます。(横スクロールできます)

被害の程度 全壊 大規模半壊 中規模半壊 半壊 準半壊 準半壊に至らない
(一部損壊)
損害基準判定※1 50%以上

40%以上

50%未満

30%以上

40%未満

20%以上

30%未満

10%以上

20%未満

10%未満

※1:住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合のこと

たとえ実際に被災していても、この罹災証明書を提示しなければ、行政支援を受けたり、損害保険の保険金を受け取ったりすることができません。

また罹災証明書の申請期間は自治体によってまちまちで、熱海市では令和3年7月26日から申請受け付けを行っています(終了日未定)。

住居再建のための支援金

土石流災害の被災者には、さまざまな行政支援が行われていますが、今回は住居の再建・修理のための支援金について詳しく調べました。

行政による「住まいの確保・再建のための支援」には、あらかじめ以下の表のようなものが用意されていますが、これら支援策の中でも、特に皆さんが気になるのは「住居の再建・修理費用のための支援金」ではないでしょうか。

住まいの確保・再建のための支援

独立行政法人住宅金融支援機構の融資

  • 災害復興住宅融資(建設)
  • 災害復興住宅融資(購入)
  • 災害復興住宅融資(補修)
  • 住宅金融支援機構融資の返済方法の変更
被災者(個人・個人事業主)の債務整理支援

災害援護資金等の貸し付け

  • 生活福祉資金制度による貸し付け
  • 母子父子寡婦福祉資金の住宅資金
  • 災害援護資金
被災者生活再建支援制度
公営住宅への入居
特定優良賃貸住宅等への入居
地域優良賃貸住宅への入居
障害物の除去(災害救助法)
住宅の応急修理(災害救助法)

独立行政法人住宅金融支援機構の融資

  • 宅地防災工事融資
  • 地すべり等関連住宅融資
住宅の耐震化事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業
地域型住宅グリーン化事業
リフォーム税制

(内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」から引用改変)

住居の再建・修理費用への国の支援金には、災害救助法における住宅応急修理の支援金と、被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金があります。

これら2つの支援金の支給金額は下表のとおりです。(横スクロールできます)

罹災証明書の区分
(損害割合)
全壊
(50%以上)
大規模半壊
(40%以上50%未満)
中規模半壊
(30%以上40%未満)
半壊
(20%以上30%未満)
準半壊
(10%以上20%未満)
準半壊に至らない
(一部損壊)
(10%未満)
住宅応急修理
(災害救助法)
全壊の場合でも、応急修理を実施することにより居住が可能である場合は支援の対象となる 居室、炊事場、便所等日常生活に必要最小限度の部分に対して、1世帯当たり59万5000円以内 居室、炊事場、便所等日常生活に必要最小限度の部分に対して、1世帯当たり30万円以内 なし
被災者生活
再建支援金


基礎支援金(100万円)

加算支援金

【建設・購入】200万円

【補修】100万円

【賃借】50万円

基礎支援金(50万円)

加算支援金

【建設・購入】200万円

【補修】100万円

【賃借】50万円

基礎支援金(なし)

加算支援金

【建設・購入】100万円

【補修】50万円

【賃借】25万円

全てなし
※単身世帯は3/4相当の金額。

※単身世帯は3/4相当の金額。

※住宅が「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」の罹災証明を受け、あるいは住宅の敷地に被害が生じるなどして、そのままにしておくと非常に危険であったり、修理するにはあまりにも高い経費がかかるため、これらの住宅を解体したりした場合には、「解体世帯」として、「全壊世帯」と同等の支援が受けられる。

 

火災保険

住宅総合保険

地震保険

損害保険金対象

(内閣府「災害に係る住家の被害認定」「災害救助法 住宅の応急修理」「被災者生活再建支援制度の概要」より引用改変)

住居再建のための支援金の問題点

熱海の土石流災害では「家屋が全壊~準半壊に至った場合は、住宅応急修理または被災者生活再建支援金が支給されるが、準半壊に至らなかった場合はこれらの支給が受けられない」という問題がニュースに取り上げられていました。

これは被害認定の問題の一つです。

行政の支援は、被害を受けた人全員に行われるというわけではありません。

行政支援の範囲は、罹災証明書に記載された被害の程度によって線引きされるため、同じように住居が使えなくなった場合でも、市町村が認定した被害の程度が高ければ手厚い支援が受けられますが、軽度と判定されてしまった場合には「十分な支援が受けられない」ということがどうしても起きてしまいます。

しかし家屋が「準半壊に至らない」と認定され、住宅再建のための給付金が受けられないことになっても、貸し付けや低利融資を利用したり、損害保険の保険金を受け取ったりすることはできますし、熱海市の「応急的住まいの申し込み受付(公営住宅の随時募集)」では「半壊未満で災害対策基本法第63条に基づく警戒区域内に居住されていた方」も対象者とされています。

とにかく利用できるものは全て利用して、住居と生活の再建を目指しましょう。

また台風や豪雨などで住居に被害が発生しても「都道府県や市町村単位の被害が少なかった」という場合は、地方自治体に被災者生活再建支援法や災害救助法が適用されず、支援金がもらえない場合が考えられます。

ただし都道府県には、県独自の被災者生活再建支援制度があり、例えば静岡県では、被害者生活再建支援法の適用外となった災害でも、中規模半壊以上と認定された場合、国と同等の援助を行っています。

最後に、今回は住居の被害のみを考慮していますが、土石流のような大規模災害で被災した場合、家具、家電、衣類など、あらゆるものを新たに購入する必要が生じますし、ケガをした際の医療費、休業・休職による収入減などのリスクも対策を考えておかないといけません。

次回は土石流災害で住居に被害を受けた場合、どれくらいの資金が必要になるのか、実際に計算してみます。

(第2回に続く)

古田 靖昭

保険ライター。保険やファイナンシャルプランに関わる内容を中心に執筆を行っている。2級ファイナンシャルプランニング技能士を取得し、生命保険の営業を経て現在に至る。保険の使い方や制度に関する知識は日々アップデートしている。

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