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FP(ファイナンシャルプランナー)がニュースを斬る

第3回 熱海土石流災害[その3]大雨災害発生、生活再建のための資金・保険を準備せよ!

古田 靖昭
公開)
熱海土石流災害【その3】
写真はイメージです

本連載は、ニュースで報道される事故・災害などをファイナンシャルプランナーが調査して、その被害額、行政支援、資産を守るための方法などをお知らせしています。

今回は「熱海土石流災害」の3回目として、災害時のさまざまな出費を賄うための手元資金、損害保険、被災者への貸付金の3点についてお話ししたいと思います。

目次

被災時の急な出費に対処する手元資金

日本は自然災害が多い国なので、毎年どこかの地域で台風や大雨による被害が出ています。特に近年は大雨災害が連続して発生していて、いつどこで誰が被災者になるか分からないような状況です。

万が一被災した場合を考えると、行政は即時に対応できるものではありませんし、あらゆる被害を救済しているわけでもありません。

また前回お話ししたとおり、行政は元の生活に戻る費用を100%負担してくれることもありません。

つまり現在のように豪雨災害が頻発している状況下では、われわれはいつでもこれらの災害に対応できるように準備し、いざ被災した場合に元の生活に戻るまでの資金をあらかじめ用意しておく必要があるのです。

緊急時予備資金

ライフプランにおいて計画的に準備する資金には、住宅資金、子供の教育資金、老後の生活資金などがあり、これらの資金については毎月の給与から積み立てたり、保険を活用したりして準備されていると思います。

緊急時予備資金は、これらの資金とは別に臨時の出費を賄うための資金です。

熱海土石流のような災害では、不測の事態によって収入が減ったり、住居の再築・修理などで臨時の出費が必要になったりしますが、緊急時予備資金はこのような場合に役立ちます

緊急時予備資金の金額は、一般的には月の生活費の6カ月分と言われています。もちろんどのくらい必要なのかは世帯によって異なるため、日々の生活の中でどれくらい用意すべきか考えておきましょう。

洪水や土砂崩れのような自然災害に対処するには損害保険に加入するのが一般的ですが、被災してから保険金が支払われるまでタイムラグがありますし、契約内容によっては保険金が支払われないこともあるため、保険とは別に緊急時予備資金を準備しておくと、より安心できます。

損害全体を分厚く補償する住宅総合保険

災害時の出費に対する備えについて、私は「他の目的で積み立てておいたお金を取り崩す」方法よりも「自然災害を補償してくれる損害保険に加入する」ことをお勧めしています。

既に損害保険に加入している人は、その保険がどのような災害に対応しているのかを確認し、自然災害が補償されていない場合は補償されている保険に加入し直しておきましょう

これらの準備が十分できたら、さらに保険証券の保管場所や保険会社の連絡先などを日頃から把握しておくようにすると、今回のような災害に遭っても、あわてずに対処することができます。

土砂災害の被害を補償する損害保険は「住宅総合保険」です。

主な補償内容

この保険は、火災をはじめ台風や大雨によって起こる水災による損害も補償しており、主な補償は次のとおりです。

火災火事や失火、放火等の損害
破裂・爆発ガス漏れ等の破損や爆発の損害
落雷落雷による損害
風災・雹(ひょう)災・雪災台風や竜巻、雹や雪による損害
建物外部からの物体の飛来・落下・衝突など物体の飛来・落下や自動車等の衝突による損害
水濡れ給排水設備の事故や漏水等の損害
騒擾・集団行動に伴う暴行などデモ等の暴力行為や破壊行為、労働争議による損害
水災台風や暴風雨によって起きた洪水等の損害
盗難盗難や盗難の際の損傷等による損害
(一部契約時の申告が必要)
持ち出し家財の損害旅行等で一時的に持ち出した家財が出先での火災や盗難等に巻き込まれた場合の損害
(一部契約時の申告が必要)

新価と時価、2つの保険金額

保険金額の算出方法には新価と時価がありますが、被災時の住居再建を賄うためには契約時に新価を選ぶことが必要です。なぜそうなのか分かりやすく説明しましょう。

新価とは、損害を受けた建物や家財を再度調達するために必要な金額の算出方法です。

例えば新築で購入した時の価格は2500万円だったが、物価上昇によって「いま同じ家を新築したら3000万円かかる」という場合、この3000万円が新価における保険金額となります。

一方、時価現時点での建物や家財の価値を算出する方法であり、購入時の価格から経年劣化によって価値が減少した分を差し引いた金額が保険金額です。

例えば経年劣化による価値減少分が1000万円の場合、1500万円が時価における保険金額となります。

もし住居が被災し再建することになった場合、被災者は3000万円で建物を再度調達することになりますが、新価の保険金3000万円なら新築費用の全額を賄うことができるのに、時価の保険金1500万円では新築費用の半分しか賄うことができません。

被災時の住居再建を考えたら、保険契約では新価を選ばないといけないということが、この例からよく分かります。

古くから長期契約をしている住宅総合保険は、時価で契約していることがあるため、今加入している保険がどちらのタイプかは確認しておいた方がよいです。

被災した際に必要な諸費用を補う保険金「臨時費用保険金」

損害額以外の諸費用を補うための保険金として、費用保険金があります。

費用保険金にはいくつか種類がありますが、そのうちの一つである臨時費用保険金は、損害保険金以外に生活再建のために必要な額を補償するもので、損害保険金の30%の上限設定がされています。

今回の熱海土石流災害では、住宅再建までの仮住まいの費用は、この臨時費用保険金で賄うことができます。

保険金請求の際の注意点

保険金を請求する際は、先に述べた罹災証明書が必要になります。

また保険金として保険金額の全部が支払われた(保険商品によっては保険金額の80%を超えた)場合、保険契約が終了となります。

このように住宅総合保険に加入しておくと、地震を除くほとんどの災害の被害について補償が受けられます。もし皆さんの自宅が「土砂災害ハザードマップの土砂災害警戒区域に入っている」「水害ハザードマップの浸水想定区域に入っている」というような場合は、ぜひ住宅総合保険に加入して、被災した時に備えておいてください。

ほぼ無審査で借りられる災害援護資金

災害援護資金とは、災害救助法が適用される災害時に行政から貸し付けを受けられる制度です。

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この記事の著者
古田 靖昭

保険ライター。保険やファイナンシャルプランに関わる内容を中心に執筆を行っている。2級ファイナンシャルプランニング技能士を取得し、生命保険の営業を経て現在に至る。保険の使い方や制度に関する知識は日々アップデートしている。

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