自業自得…秋篠宮・小室圭問題の「いい加減報道」で言論規制が一気に加速したネットメディアの末路

小倉健一
公開)

 かつて「メディア」と言えば新聞やテレビなどを指したが、いまやネットメディアが圧倒的な存在感を示すようになった。情報が瞬時に世界中に駆け巡るネットニュースの影響力は大きく、もはや既存メディアはネット空間を無視できない。多くの既存メディアがヤフーやGoogleとの連携を余儀なくされる一方、特定の民間企業が情報のプラットフォームを独占することにはリスクもあるという――。「デジタル」と「メディア」の関係を紐解く全5回のうちの1回目。

※本稿は、小倉健一『週刊誌がなくなる日 「紙」が消える時代のダマされない情報術』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです

第2回『なぜ反ワクチン陰謀者はプーチンを擁護するのか…政府高官が噴飯した「東京ロックダウン」のフェイクニュース

第3回『週刊誌はあと5年で消滅する…限界に到達した無料メディア、新聞電子版にマスコミから悲鳴が聞こえる

第4回『42歳劇団員のヤフコメ民「私が炎上させる理由」…秋篠宮・小室家を匿名でタコ殴りする暴力ビジネス

第5回『回りまわって「新聞回帰」に困惑するメディア業界…バカ丸出しの新聞記者が知らないベタ記事の価値

怪物メディア「ヤフーニュース」の誕生

 現代に生きる私たちは、無意識のうちに大量の情報を浴びている。そんなデジタル時代に人々の生活をも変えたのが、ニュースサイトの存在だ。中でも既存メディアを震撼させたのが1996年7月に誕生した、Zホールディングス傘下のヤフーが運営するニュースサイト「Yahoo!ニュース(以下、ヤフーニュース)」である。

 日本のインターネット利用者の8割超が日常的に利用し、月間約150億PV(原文ママ)という日本最大の無料ニュースサイトに成長した同サイトは、デジタル時代の「申し子」ともいえるほど現代の情報環境に適合した存在といえる。

 今や誰もが知る怪物サイトには約670新聞社やテレビ局、雑誌社などが記事を提供し、ヤフーニュース側は閲覧数を基に、読者の評価などを配信料の算定に反映させる仕組みをとっている。

 「ヤフー内における1PVあたりの単価は媒体で異なり、一説には全国紙最大手クラスが0.21円、それに次ぐ有力紙が0.1円、地方紙や週刊誌系は実に0.025円まで落ちる」(『ZAITEN』2022年5月号)と言われている。

 すべての記事を無料で読むことが可能で、原則として「有料会員」にならなければ読めない新聞社などのサイトと差別化を図っている。読売新聞の編集幹部は「自社サイトを訪問して記事を読んでもらうことが望ましいが、ヤフーニュースに記事を提供しなければ、そもそも読まれる記事量が少なくなる。難しい問題への妙案は見つからない」と頭を抱える。

ネットメディアからは「逃げられない」

 かつて「ペンは剣よりも強し」と言われ、政治家や大企業などの腐敗を厳しく追及してきたマスメディアだが、その代表格は新聞からヤフーニュースに移りつつある。

 2006年9月の第1次安倍晋三内閣発足以降、政界は「ネット空間」の影響力を無視することができなくなった。紙媒体である『週刊文春』の取材力も多くの著名人を震撼させているが、この威力を格段に上げているのもSNSの存在だ。

 同12月に佐田玄一郎行政改革担当相が辞任するきっかけとなった政治資金問題は新聞のスクープ記事が発端だが、ネット上には関連する情報があふれ、記事の「威力」が何倍にも増して政治家を直撃するようになったからだ。第1次安倍内閣の辞任ドミノは続き、退陣するまでの1年間に5人が辞任(自殺を含む)している。

 以前であれば、不祥事を報じた週刊誌を秘書らが買い占めたため、永田町や霞が関のどこへ行っても買うことができなかった。しかし、デジタル時代に矛先を向けてくるのは、自前ではほとんど記事を制作していないニュースサイトだ。「ネット空間」を買い占めることは不可能であり、不祥事が発覚すれば姿を隠す政治家が目立つようになった。

 ネット記事として掲載されたものは瞬く間に拡散され、どれだけ時間が経とうともネット空間に存在し続ける。新聞や雑誌であれば紙幅の都合があるが、ネット記事にはそれもない。検索すれば、あっという間にヒットする。過去の記事であってもネット空間に残っている限り、いつでもツイッターなどをきっかけに再炎上することになる。 

ヤフー、Googleが情報を独占するリスク

 2021~2022年にかけて、オンラインサイトが苦しめられた。その要因は掲載基準を厳格化したヤフーニュース、そして検索順位ルールを頻繁に変えるGoogleにもあるとメディア関係者は指摘する。

 民主主義の根幹をなす「言論の自由」が事実上、民間の巨大プラットフォームを運営する会社によって管理される社会が到来しているようだ。

 これまで民主主義国家と呼ばれる国では、「表現の自由」「出版の自由」「言論の自由」が最大限尊重されてきた。国家や行政機関がこれらを規制することは「圧力」「弾圧」であり、ダメなことであるというのは小学生でも知っていることのはずである。

 しかしながら、プラットフォーマーによる規制については、行政が実施しようとするものと比べ、あまり批判が出ていないようにも映る。

 ヤフーニュースでは2021年の冬ごろから、記事を提供している協力媒体への締め付けが厳しくなったという。「秋篠宮家と小室家に関する一連の報道を契機に、ヤフーニュース側から突然、『契約に違反している』という〝クレーム〟が頻繁に入るようになった。『関連記事のリンクが本記事と関連していない』というような指摘から、『見出しと本文が違う』『あえて入れる必要のない企業名が見出しに入っている』『個人の体験談だけをもとにした記事は削除せよ』といった指示が細かく入るようになった」(経済メディア記者)というのだ。

 その指示の内容は「見出し」やリンクの問題が中心であり、「秋篠宮家騒動」と直接の関連はしていない。「小室圭さんの中傷記事にひどいものが多かったことで、記事を転載したヤフーニュースに対する風当たりが強まってきたこともあり、この際ついでに他の部分も〝浄化〟してしまおう」ぐらいの「八つ当たりだ」と怒りを感じる記者もいる。

 「小室圭さんと眞子さんの結婚の後で、ヤフーニュースの担当者が『もし、小室さん関連の記事を出すなら、ファクトオンリーでやってほしい』と編集方針にまで口を出すようになった。さらにはガイドラインが改定され、『圧』は強くなってきました」という。

 これまで過激な見出しなどは、よほどのことがない限り、記事を提供する協力媒体の責任とされ、ヤフーニュース内ではスルーされていた。しかし、これは徹底的な取り締まりが始まったことを意味している。

 このようにヤフーニュースが協力媒体へのプレッシャーを強める中、有力メディアの中にはヤフーニュースへの記事提供に距離を置き、米アルファベット社が提供するGoogle検索、Googleニュースへの接近を見せている企業もある。だが、Googleなら安泰、というわけではない。

 アルファベット社はGoogleアドセンスと呼ばれる広告サービスを提供している。自サイトにこのGoogleアドセンスを導入すれば、金額は時期によって違うものの、平時で「1PV約0.25円」の収入を受けることができる。

 ヤフーニュースからは配信を断られたり、配信できても格安の対価しかもらえない無料ニュースサイトにとっては、本当にありがたい存在といえる。広告営業を実施していない無料サイトにとって、Googleアドセンスは収入のほとんどを占めているのが現状だ。

 そんなGoogleアドセンスだが、2022年2月24日からのロシアによるウクライナ侵攻を受けて、利用者に以下のような「お達し」を出した。

 「ウクライナでの戦争を受け、Googleは、戦争を利用するコンテンツ、戦争の存在を否定するコンテンツ、または戦争を容認するコンテンツを含む広告の収益化を一時停止します。(中略)この一時停止措置の対象には、不幸な事象が起きた責任は被害者自身にあると示唆する主張、および被害者に対する同様の非難(例=ウクライナが大量虐殺を行っている、または意図的に同国民に攻撃を行っているとする主張)が含まれますが、これらに限定されません」

 この通達を読むと、Google「読者にとってのよりよいメディア環境を整えている」ように思えるものの、「被害者に対する同様の非難(例=ウクライナが大量虐殺を行っている、または意図的に同国民に攻撃を行っているとする主張)が含まれます」と具体的な例を出しているところに、やや言論統制的なものを感じなくもない。

 現時点で確定しているように見えることであっても、後になって否定されることも多いのは歴史を見ても明らかだ。Googleという一つの民間サイトが世界中のニュースサイトの収益源となっている今、世界中の「言論環境の管理」をすることのリスクはこれから増すことはあっても減ることはない。

 なんとなく西側陣営にいて、なんとなく自由な言論を標榜しているように映るGoogleだが、その危険性は認識しておかなければならない点だろう。

小倉健一『週刊誌がなくなる日 「紙」が消える時代のダマされない情報術』(ワニブックスPLUS新書)

小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact/

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