さわかみ投信創業者の澤上「植田日銀で早まった令和バブル大崩壊…日経平均は論理抜きで下がるところまで下がる」
植田和男新総裁の誕生は、各方面で評価が高い。とはいえ、いわゆる「金融緩和の出口」へ向けて、数多くの難問を抱えていることも事実だ。みんかぶプレミアム特集「新日銀総裁 植田和男研究」第7回では、わが国長期投資の第一人者であり、カリスマでもある澤上篤人さんに、今後の日銀の課題を語ってもらった。
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「八方ふさがり」の日銀…総裁を引き受けた植田氏は「勇気がある」
日銀総裁に、経済学者出身の植田和男さんが就任する。植田さんはこの状況で「よく引き受けたものだ」というのが正直な感想だ。かねてより伝えている通り、今の日銀は八方ふさがりで打つ手がほとんど残っていない。ある意味「もの凄い勇気があるな」と思う。
まず日銀が現在のような状況になってしまったのは、黒田東彦・現総裁が政府、つまり(当時の)安倍晋三首相に忖度(そんたく)し続けてきた結果だと思っている。植田さんが初の学者出身だということで注目されているが、一方、黒田さんは旧大蔵省の官僚、つまり行政官の出身だ。政治家の指示通りに動くのは当たり前で、10年間、アベノミクスという政策を遂行することだけが仕事だった。10年もの間、官僚に中銀総裁をやらせた日本がおかしいのではないかと思うが、この間、本来の中央銀行の役割である「通貨の番人」を放棄してしまっていた。
とは言え、この10年間は、FRB(米連邦準備理事会)にしろECB(欧州中央銀行)にしろ「金利を下げろ」「株価を上げろ」という政治の圧力を受け続けてきたことに変わりない。だが、アメリカでは2021年夏ごろからインフレが進行し始めてようやくFRBが本来の役割を果たせるようになってきた。政治圧力が「株価を上げろ」から「インフレを抑えろ」に一転したためだ。物価の安定へ向けて、ようやく本来の中銀の役割と政府の思惑が一致するようになってきた。