歩く仮想通貨ゲームSTEPNで10キロ痩せた男のド根性…TKO木本と一緒に始めたが価値が下落し未だ大赤字
お笑いコンビTKOの木本武宏氏に7億円の投資トラブルがあったことは記憶に新しい。そのなかで注目されたのが、「歩くだけで稼げる」仮想通貨ゲームSTEPN(ステップン)だ。STEPNユーザーは最初にスニーカーを初期投資として購入し、スニーカーを保有した状態でアプリを起動しつつ走ると、GSTと呼ばれる仮想通貨が稼げる仕組み。GSTは円に換金することもできる。
木本氏がSTEPNに投資していた額は、最低でも300万円はあっただろうと見積もられている。一番高いときには1000円ほどまで値上がりしていたGSTの価格だが、9月9日現在では4.83円まで目減りしてしまった。およそ200分の1以下まで値下がりしてしまった格好だ。
Twitterでは多くのインフルエンサーがそんなSTEPNを使った投資を扇動し、当人たちはアフィリエイトや靴の販売で大きく儲けた一方で、彼らの甘い言葉に乗って大損してしまった人も多数出た。
今回インタビューしたシステムエンジニアの黒柴さん25歳(男性・仮名)もその一人だ。しかし黒柴さんの場合、損したことをそこまで深刻には捉えていない。STEPNを始めた目的が別にあったためだ。
「10分走って3000円稼げてラッキー」と思っていた
「高卒でシステムエンジニアの職について7年になります。年収は400万円程度です。4月に娘が1人生まれて妻と2人で育休を取得している最中です。昨年の健康診断の結果が悪く、4月に娘が生まれたことを機に、娘のためにも健康管理をして痩せようと決意しました。自分はすぐ太ってしまう体質で、10〜20キロの体重の増減を繰り返してきたんです。今回も『10キロほどダイエットをしよう』と思ったのですが、そのときにちょうどTwitterでSTEPNのことを知ったんです。『ダイエットをしながら稼げるなら最高じゃん』ということでSTEPNを始めることにしました」
TKO木本氏が投資勧誘のために『STEPNやってみた』というYouTubeチャンネルを作り、「TKO木本 STEPNやってみた!!【歩くだけで稼げる靴!?】」という動画を投稿したのは4月29日。奇しくもちょうどその日は、STEPNで使われる仮想通貨GST が「1GST = 1023円」の史上最高値を記録した日でもあった。黒柴さんがSTEPNを始めたのも、ほぼ同時期だったという。
「初期費用として私が購入したスニーカーはJoggerです。4万円で購入しました。STEPNにはスニーカーの種類がいくつかあって、それぞれのスニーカーごとに稼げる速度や金額が違います。ほかにもWalkerやRUNNERなどがあります。Joggerは速度的にも無理なく走れるので、初心者向けだと言われています。当時の私の場合は1回走って10GSTほど稼げる計算だったのですが、最初に走り始めたときは1GST 数百円だったので、1回走って3000円程度稼げていました。私が喜んで『10分走って3000円ゲットしたよ』と妻に言うと、妻も『いいねいいね』なんて言って一緒に喜んでくれていました。10分走って3000円ゲットできるなら、かなり効率のいい稼ぎ方ですからね」
黒柴さんの場合スニーカーを1足しか購入していなかったため、1回10分のランニングで3000円だが、30足は購入していたとみられるTKO木本氏の場合、単純計算で1回10分のランニングで9万円稼げる状況があったわけだ。木本氏が動画投稿した4月29日には、1回10分のランニングで30万円の計算になる。「STEPNは稼げる」と同氏が熱を上げてしまったのも無理はないのかもしれない。
しかし、値下がりすることへの恐れはなかったのだろうか。
「最初は怖がって反対の姿勢を見せていました。私は以前、ビットコインを購入したこともあるのですが、そのときは1万円で購入したビットコインが最終的に700円になってしまい、大損してしまいました。そのときのことがあったので私も最初は警戒していました。ただ私の場合、4万円しか投資しないと決めていたので最悪損してしまうとしても、そこまで気になる額ではありませんでしたし、何よりダイエット目的だったから迷いはありませんでした」
TwitterのSTEPNアカウントを見てみると、投資目的というよりも、「ダイエット目的のための出費」と捉えている人が多いようだ。
「4万円のジム代を払って10キロ痩せたと思えば安い」
実際に、STEPNはダイエットのためのモチベーションになるのだろうか。
「私は『ダイエットしよう』と決めると短期集中で一気に痩せるタイプです。何度も10キロほどのダイエットに成功してきました。とはいえ、やはり毎回しんどいのは事実です。今回の場合、『STEPNを起動しながら走れば稼げる』ということがダイエットのモチベーションとしてうまく機能していた気がします。以前は24時間通える月額7000円のジムに4カ月通って10キロ痩せました。つまり、2万8000円ですね。STEPNの場合は4万円の初期投資で、その初期投資を回収できる可能性もあるので、断然こっちのほうがいいですね」
一時は1000円以上の高値を記録したGSTだが、9月9日時点の価格は「1GST = 4.83円」まで下落してしまった。結局黒柴さんは、いくら稼げたことになるのだろうか。大損したことになるのではないか。
「妻と一緒にやっているのですが、今は350GSTほど保有しています。1GST4.83円で計算すると、1690円程度ですね。客観的に見ると大損したことになりますが、4万円しか使っていないので問題ありません。コツコツやっていって、いつか値上がりして逆転してくれればいいかなと思っています」
Walken(ウォーケン)、Sweatcoin(スウェットコイン)、トリマなどのアプリも駆使して「移動」を最大限まで換金している
「じつはSTEPN以外にも、走りながら稼ぐアプリをやっているんです」という黒柴さん。Walken(ウォーケン)とSweatcoin(スウェットコイン)というアプリも利用しているのだ。Walkenは、走って手に入れるGEMと呼ばれる仮想通貨と、キャラクターをバトルさせることで手に入れるWLKNトークンを駆使して稼ぐ。一方のSweatcoinは、STEPN同様、走るだけで稼げる。
「WalkenとSweatcoinで稼いだ仮想通貨の金額はまだ微々たるものですが、今から将来の値上がりが待ち遠しいです。妻はSTEPNをWalkerと呼ばれるスニーカーでやりながら、同じく歩いてポイントを貯められるトリマも利用しています。トリマでの移動の場合、犬の散歩や車での移動でもポイントを貯められるようです。歩いて貯めたスタンプをコカコーラ製品と交換できるCoke ONウォークも利用しています。歩くだけでドリンクと交換できるなんて、かなりいいですよね」
黒柴さんの場合、結局損していることに変わりはない。「歩くだけ」「走るだけ」で稼げるSTEPNは確かに画期的なアプリではあるが、それに費やす時間や労力、元本割れのリスクなども考えると、考えものだろう。木本氏のように、大損してしまう恐れは大きい。
STEPNを始めるとしても、あくまでリスクがあることを頭に入れ、黒柴さんのように少額から出資することをおすすめしたい。